イグ・ノーベル賞の受賞者として紹介され、授賞式会場に入る武部貴則さん(右端)ら日本の研究チーム(12日、米マサチューセッツ工科大)=共同

【ケンブリッジ=共同】人を笑わせ、そして考えさせる研究に贈るイグ・ノーベル賞の今年の受賞者が米マサチューセッツ工科大で12日発表され、東京医科歯科大の武部貴則教授(37)のチームが生理学賞に選ばれた。哺乳類がお尻からも呼吸できることを発見。肺機能が低下した患者に腸経由で酸素を補い、症状を緩和することを目指した臨床試験が始まっている。

日本人の受賞は18年連続。武部さんは取材に対し「呼吸に苦しむ患者さんの役に立つ日が早く来るよう、心を新たにまい進したい」と語った。

研究は、ドジョウが泥の中など低酸素環境では腸でも呼吸できるようになることから着想した。呼吸不全のブタやマウスに対し、多量の酸素を溶かし込んだ液体をお尻から投与すると血中の酸素が増えることを発見。2021年に発表した。

お尻からの呼吸で肺の機能を完全に肩代わりするのは難しい。だが出生時に呼吸が十分にできない赤ちゃんへの一時的な酸素供給手段になる可能性があり、今年6月には人での安全性を調べる試験が始まっている。

イグ・ノーベル賞は米国の科学ユーモア雑誌が主催。1991年に始まり、34回目の今年はハトによるミサイル誘導(平和賞)や、偽薬でも副作用のような刺激があるとやや大きな効果が表れるとの研究(医学賞)など個性派が並んだ。

20〜23年の授賞式は新型コロナウイルス流行のためオンラインだったが、今年は5年ぶりに観客を入れて実地開催。受賞者にも渡航費が出ないため、武部さんのほか、チームの芳川豊史名古屋大教授(52)、築地在宅診療所の岡部亮院長(45)らが自腹で駆けつけた。

【関連記事】

  • ・電気流した箸で味変化 日本人にイグ・ノーベル賞
  • ・イグ・ノーベル賞、日本人16年連続 つまんで回す研究
  • ・「歩きスマホ」研究にイグ・ノーベル賞 日本人15年連続

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。