ロシアの統一地方選が6〜8日に投票された。ウクライナが8月に越境攻撃を開始したロシア西部クルスク州を含む各地で与党「統一ロシア」が勝利した。プーチン政権は「圧勝」を主張したが、国民の間では越境攻撃への不安も広がっている。
21自治体で行われた知事選では、与党などが推す現職と現職代行全員の当選が確実な情勢だ。
クルスク州の知事選は、与党が推すスミルノフ知事代行が65%超の得票率で当選を決めた。同氏は投票終了後に「私たちはクルスク州を再建する」と述べ有権者に謝意を示した。今回の知事選の投票率は57%超で19年の前回選挙(41%超)を上回った。
議会選は13の地域で実施された。首都モスクワのソビャニン市長によると、同市の議会選では小選挙区の8割で与党の候補者が議席を確保した。
統一ロシア党首のメドベージェフ前大統領は8日夜に党事務所で選挙結果について「有権者からの信任を得た」と圧勝を強調した。
選挙管理委員会は電子投票なども活用し有権者に選挙への参加を促してきた。クルスク州では期日前投票も実施され、投票率の上昇につながったとみられる。
クルスク州の7地区では越境攻撃を受けて選挙が延期された。ウクライナ側が制圧したスジャの町議選などが含まれる。
同州では非常事態が宣言され、住民の避難が相次いだ。スミルノフ氏は8月22日、同州からの避難民が13万3千人に達すると明らかにした。避難者は各地に設けられた一時宿泊センターなどに滞在している。
盤石にみえる選挙結果とは裏腹に、ウクライナ侵略に端を発する不安が国民の間に広がっているとの見方もある。
ロシアの調査機関「世論基金」が実施した世論調査では、「不安が広がっている」と答えた人の比率が8月25日時点で46%となり、越境攻撃前の8月4日時点(39%)から7ポイント上昇した。
不安感の高さはモスクワでテロが起きた2024年3月下旬の水準を上回り、プーチン政権が情報統制を進める中でも23年6月以来の高い水準となった。同月はウクライナが領土奪回に向けた反転攻勢を開始したほか、同月下旬には民間軍事会社ワグネルによる武装蜂起も起きた。
足元のプーチン氏の支持率は横ばい圏で推移している。ロシア民間世論調査会社、レバダセンターの調査ではプーチン氏の8月の支持率は85%とほぼ横ばい圏で推移する。
8月21日には首都モスクワなどロシア各地にウクライナによるドローン(無人機)攻撃が相次いだ。製油所にも無人機による攻撃が続き、国内の燃料価格にも影響が出つつある。今後、国民の不安感が一段と上昇すれば大統領支持率にも影響を与えかねない。
プーチン政権はこれまで国民の不満や懸念が根強い動員を避け、志願兵である契約軍人の募集で対応しようとしてきた。だが、ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州の制圧地域の拡大を急いでいるため、クルスク州に侵入したウクライナ兵の掃討に十分な兵力を割り当てられていない。今後、ロシアが兵員の補充をどのように進めるかが焦点になる。
24年はロシアが22年に一方的に併合したウクライナ東・南部4州では選挙は実施されていない。一年前の23年の統一地方選ではロシア国内に加えて、部分的に占領するウクライナのドネツク、ルガンスク、ザポロジエ、ヘルソンの4州で選挙を実施し、与党・統一ロシアの候補者が圧勝したと主張していた。
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