学生ローンの負担軽減は米世論を二分する問題となっている=ロイター

【ワシントン=芦塚智子】米中西部ミズーリなど共和党知事の7州は3日、民主党のバイデン政権が4月に発表した学生ローン減免案の施行差し止めを求める訴えを連邦地裁に起こした。民主は11月の大統領選前に施行して若者の支持拡大につなぎたい考えだが、差し止め命令が出れば逆風となる。

訴訟の対象となった学生ローン減免案は、利払いが追いつかずに返済額が膨れ上がった借り手約2500万人を対象に、最高2万ドル(約288万円)を免除する措置が柱だ。

訴状は、減免案を施行するための規則が最終決定していないのに、教育省が負債の免除を今週中にも開始するよう、ひそかに貸し手に指示していた証拠を入手したと主張。一晩で総額730億ドルが免除される可能性があると指摘した。教育省の権限を逸脱しているとして、施行を即時差し止めるよう求めた。

学生ローンの負担削減はバイデン政権の看板公約の一つで、民主の大統領候補であるハリス副大統領も公約に掲げる。共和は批判し、相次いで訴訟を起こしてきた。

ミズーリなど6州の訴えを受けて連邦最高裁は2023年6月、4000万人以上を対象とする学生ローン返済免除措置を認めない判断を下した。これを受け、バイデン政権は23年7月と24年4月に対象を絞った新たな負担軽減策を発表した。

23年7月発表の負担軽減策についてもミズーリなど7州が訴訟を起こし、連邦控訴裁が8月初めに施行を差し止める判断を出した。最高裁が8月28日、差し止めの解除を求めて上訴した政権側の訴えを退けた。

訴訟を主導するミズーリ州のベイリー司法長官(共和)は声明で「バイデン・ハリス政権は、名門大学の負債を勤労米国民に背負わせようとしている」と学生ローンの減免策を批判。「我々は彼らの最初の2つの違法な学生ローン免除計画を阻止した。3つ目も阻止できると確信している」と強調した。

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