トランプ氏の「口止め料」裁判が本格的に始まった=ロイター

【ニューヨーク=弓真名、吉田圭織】トランプ前米大統領が自身の不倫の口止め料を不正処理したとして罪に問われている刑事裁判は22日、検察と弁護団双方が冒頭陳述に及んだ。検察が「計画的かつ長期にわたる陰謀だ」と主張した一方、弁護側は改めて無罪を主張した。公判が2週目に入り、トランプ氏はSNSで裁判に対する批判を繰り返すなど、選挙活動に時間を割くことができないいらだちを募らせている。

トランプ氏は2016年の大統領選を巡って、自身の不倫に関して支払った口止め料を弁護士費用として事業記録に計上し不利な情報を隠したとしてニューヨーク州マンハッタン地区検察に23年に起訴された。34件の事業記録改ざん罪に問われている。

地検は冒頭陳述で「16年大統領選に影響をもたらさないための計画的かつ長期にわたる陰謀だ」と主張した。トランプ氏が口止め料の支払いを隠すため、小切手を切らずに弁護士に立て替えさせたことなどを指摘し「有罪であることに合理的な疑いはないと確信している」と述べた。

一方、トランプ氏の弁護団は「トランプ氏はいかなる犯罪にも関わらなかった。無実だ」と述べた。弁護士への支払いについても「見返りではない」として、口止め料を立て替えたことへの報酬ではない強調した。検察の主張を真っ向から否定した。

公判では、初めて証人への尋問も実施された。この日は検察側の証人として、米タブロイド誌「ナショナル・エンクワイアラー」の元発行人のデビッド・ペッカー氏が出廷した。同氏はトランプ氏の不倫について記事化する権利を女優側から買い取り、選挙戦に影響がないよう握りつぶしたとされる。同氏への尋問は23日も続くもようだ。

裁判の行方を左右するのが、先週選出された12人の陪審員だ。陪審員は有罪・無罪を評決する権限を持つ。米メディアによると、経営学修士号を持つマンハッタン中心部在住の投資銀行家やレバノン出身の元資産運用家、英語教師らが含まれる。

陪審員選定手続きでは、候補者の思想などに質問が繰り返された。検察、弁護側ともに著しく不利にならないような人選とするためだ。

結果として、学歴や職業が多様な陪審員の顔ぶれとなった。ニュース情報に接する手段も、米ニューヨーク・タイムズや同CNBCなどのメディアを視聴する人や、X(旧ツイッター)などのSNS(交流サイト)に頼る人など様々だ。

トランプ氏は週4日開かれる公判に毎回出席を求められており、今後6週間程度はニューヨークに「釘付け」になる。11月の大統領選挙が約半年後に迫るなかで各地への遊説などが制限されるほか、選挙資金から捻出している巨額の弁護費用も陣営の財政を圧迫している。

米紙ワシントン・ポストが実施したSNS分析によると、最近トランプ前大統領は平均で1日にXで18回、自身が立ち上げた「トゥルース・ソーシャル」では29回投稿しており、大統領任期中や前回の大統領選時を大きく上回る。

大統領選出馬を発表した22年11月〜24年3月中旬までに、トランプ前大統領は怒りや強調を表す大文字だけの文章を760回、自分の裁判に関わっている裁判官や弁護士らへの攻撃を570回、それぞれ投稿したという。

22日にもトゥルース・ソーシャルで「バイデン(大統領)が起こしている裁判であることは間違いない!全て選挙妨害だ」などと、裁判を批判する内容を少なくとも20回超投稿した。いらだちをあらわにしている。

トランプ氏はほかにも3件の刑事裁判を抱えており、一連の裁判のなかで今回の「口止め料」裁判が先行して公判を迎えている。トランプ陣営は選挙戦への影響を小さくするため、裁判の公判開始を遅らせる戦術をとっている。

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