ベトナムの最高指導者である共産党書記長のグエン・フー・チョン氏が19日、病気のため首都ハノイの病院で死去したと、国営メディアが報じた。80歳だった。体調不良のため治療に専念すると、党が18日に発表していた。共産党が一党支配するベトナムの最高権力者として、約13年にわたる異例の長期政権を率いた。

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 チョン氏は2011年に書記長に就任、15年には、最高指導者としてベトナム戦争後初めて訪米し、オバマ大統領(当時)と会談した。

 16年に再任され、18~21年には序列2位の国家主席を兼務し、上位二つの役職を独占した。

 党の規約が書記長の任期を連続2期までと定めるなか、21年に特例で3期目に留任した。1976年の南北ベトナム統一以降初めてのことで、異例の長期政権となった。

 在任中は汚職撲滅を掲げ、現職閣僚や党幹部らの逮捕や処分で、党内の統制を強めてきた。「四柱」と呼ばれる権力トップ4に対しても例外ではなく、23年以降は国家主席2人と国会議長を立て続けに解任した。

 チョン氏の指導の下、ベトナムは日本との二国間関係を最上位の「包括的な戦略的パートナーシップ」と位置づけ、貿易や技能実習生の派遣などの交流も深まった。15年にはチョン氏が訪日し、安倍晋三首相(当時)と会談した。

 党は今後、後任の書記長の選任に入る。有力候補には、前公安相でチョン氏とともに汚職捜査を率いてきたトー・ラム国家主席らの名前が挙がっているが、求心力のあったチョン氏の不在によって、権力争いが激化する可能性もある。(バンコク=大部俊哉)

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