東南アジアは個人消費が堅調に推移する(10日、マニラのショッピングモール)

【マニラ=藤田祐樹】アジア開発銀行(ADB)は11日、2024年のアジア新興国・地域の国内総生産(GDP)の前年比伸び率が4.9%になると発表した。23年の5.0%とほぼ同水準を見込む。東南アジアやインドは個人消費が堅調に推移する一方、中国の景気は不動産市況の低迷を受けて減速すると予測した。

アジア新興国は中国やインドを含むアジア大洋州の46カ国・地域を指す。23年の成長率は地域全体で5.0%と推計した。新型コロナウイルス禍からの経済活動の回復を反映し、22年の4.3%から上昇した。

24年以降は中国とそれ以外の国・地域で明暗が分かれる。中国を含むアジア新興国全体は24年、25年ともに4.9%成長と横ばいとなる見通しだ。中国を除くと24年は5.0%、25年は5.3%に上向く。

東南アジアは好調な個人消費と観光需要の回復の恩恵を受け、24年は4.6%、25年は4.7%となる。インドは海外からの投資や輸出の拡大を受けて7%台の成長率を維持する。

中国は新型コロナ禍の行動制限の緩和を受けて23年の成長率は5.2%に回復したものの、24年は4.8%、25年は4.5%に伸び悩む。ADBは不動産市況の低迷が長引き、民間投資が頭打ちになると指摘した。

地域全体の懸念材料としてインフレの再燃をあげた。アジア新興国・地域全体の物価上昇率は24年が前年比3.2%、25年は3.0%に落ち着くとの見通しを示した。各国の中央銀行による金融引き締めの効果と、食料や原油価格の高騰が一服すると説明した。

地政学リスクの高まりにも警戒感を示した。中東情勢の悪化は欧州とアジアを結ぶ海上輸送の運賃に影響している。24年に入ってから原油価格は再び騰勢を強めており、インフレ率が高止まりする懸念がある。

エルニーニョ現象による高温や干ばつが穀物を中心に食料の供給に響く恐れもある。低所得者層が多い途上国は食料価格の上昇が個人消費の動向に直結するため、地域全体の成長の足かせになる可能性がある。

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