中国経済は苦境から抜け出せずにいる(15日、北京)=AP

中国経済の不振を裏づける材料がまた一つ増えた。国内外で懸念が強まっているのに、習近平政権は状況をきちんと説明しようとしていない。これでは先行きへの不安が募るばかりだ。

中国の国家統計局が発表した2024年4〜6月の国内総生産(GDP)は、実質で前年同期比4.7%増だった。成長率は市場の事前予想を下回り、1〜3月の5.3%から大きく減速した。

深刻な不動産不況から抜け出せず、それに起因する国内の需要不足が続いている。

1〜6月の不動産開発投資はおよそ1割減った。住宅価格の下落が止まらず、マンションの建設がストップしたり、新規着工が大幅に減ったりしている。

中国政府は売れ残った住宅を地方政府が買い取る不動産対策を5月に打ち出したものの、目ぼしい効果は上がっていない。地方政府も土地使用権の売却益が細り、財政が一段と厳しくなっている。

若者の失業率は高いままだ。消費がふるわず、物価は上がりにくい。名目のGDP成長率が実質を下回る「名実逆転」は23年4〜6月以降、5四半期連続となった。

中国経済は本格的なデフレに突入する瀬戸際にある。需要を喚起する施策が必要な局面だ。にもかかわらず、習政権は新エネルギー産業の振興を軸に、供給面のてこ入ればかりに力を入れているようにみえる。

結果として、電気自動車(EV)などの生産が国内の需要を大きく上回り、安価な製品が世界の市場にあふれ出ている。欧州連合(EU)が中国製EVに追加関税を課すなど、貿易摩擦が激しさを増している現状は憂慮すべきだ。

中国は経済をどう立て直そうとしているのか。習政権には国内外に説明する責任がある。それなのに従来はGDPの発表に合わせて開いていた記者会見を、今回は中止としたのは理解に苦しむ。

中国共産党は第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)を15〜18日の日程で開いている。党の重要会議への影響を気にして、記者会見の開催をやめたのだとすれば本末転倒だ。

党大会があった22年10月にはGDPの発表を突然延期した。経済指標の公表や説明が政治日程に左右されるようでは、統計の中身にも疑念を抱かざるを得ない。習政権は自らに不信の目が向けられていることを自覚すべきだ。

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