アウディの独南西部ネッカーズルムにある組み立て工場の生産ライン

【フランクフルト=林英樹】自動車大手ドイツのフォルクスワーゲン(VW)はグループ傘下の高級車ブランド・アウディのベルギー・ブリュッセルにある組み立て工場を閉鎖する可能性があると公表した。世界的な電気自動車(EV)需要の低迷を踏まえ、事業計画の変更に動く。VWグループの工場閉鎖は1988年以来となる。

ブリュッセル工場では2018年に発売されたアウディの多目的スポーツ車(SUV)EVモデル「Q8 e-tron」を生産する。23年の生産台数は約5万台だった。同工場には約3000人の従業員が働いている。

閉鎖を検討するアウディのブリュッセル工場(10年5月、ベルギー・ブリュッセル)=AP

VWは9日、ブリュッセル工場について「社会的パートナーと協力し、解決策を策定していく」との声明を公表した。解決策として「工場閉鎖の可能性がある」と言及した。アウディは10日、日本経済新聞の取材に「(工場閉鎖は)最終決定がまだ出ていない。公正で透明な対話を進めていく」とコメントした。

ブリュッセル工場関連など追加費用として24年12月期通期の営業利益に最大26億ユーロ(約4500億円)のマイナスの影響が出るとした。通期の乗用車部門の営業利益率を7〜7.5%の従来予想から、6.5〜7%に引き下げた。

VWグループの工場閉鎖は1988年の米ペンシルベニア州のウェストモアランド工場以来となる。

背景にあるのはEV需要の低迷だ。ドイツ自動車工業会(VDA)は3日、24年に独国内で生産するEV台数予測を、従来の115万台から100万台に下方修正した。24年1〜6月の独国内のEV販売は6カ月連続で前年同月を下回った。

さらにVWはグループ傘下のMANエナジー・ソリューションズのガスタービン工場についても閉鎖を検討している。安全保障上のリスクから独政府が同事業の中国企業への売却を認めなかった。

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