データセンターの電力需要の増加を受け、米マイクロソフトの二酸化炭素(CO2)排出量も増加傾向にある=ロイター

【ヒューストン=花房良祐】米マイクロソフトは空気から直接回収する二酸化炭素(CO2)のクレジット(排出枠)を購入する。米石油大手オキシデンタル・ペトロリアムの傘下企業が南部テキサス州に建設するプラントで回収したCO2の枠を6年間にわたり計50万トン調達する。空気から直接回収する技術を使った排出枠取引では過去最大となるという。

マイクロソフトは自社事業の「人工知能(AI)シフト」を進めている。注力する生成AIは運用に膨大な電力を要するため、データセンターなどで多量のCO2を排出する見通しだ。今回の取引は、これを相殺する狙いがある。

オキシデンタル傘下のワンポイントファイブが9日発表した。活用するのは直接空気回収(DAC)と呼ばれる技術だ。ワンポイントファイブはテキサス州で専用プラントを建設中。2025年に稼働予定で年50万トンの回収能力を計画している。

オキシデンタルは米国で4番目に大きい石油会社で、投資家ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハザウェイが約29%出資することでも知られる。

DACのクレジット相場は1トンあたり800〜1200ドルとされる。今回、両社は取引額を公表していないが、数億ドルとなるもようだ。ワンポイントファイブのプラントの稼働コストは1トンあたり400〜630ドルと報じられている。

生成AIで使うデータセンターの電力需要が急増しており、IT大手がCO2排出を抑える手段となる太陽光や風力発電はまだ設備が足りない。マイクロソフトの排出量は5月、4年前に比べて3割超増えている。

一方、マイクロソフトは30年までに排出を実質マイナスにする目標を掲げている。同社は今回の取引を巡って「DACはマイクロソフトの排出削減に重要な役割を果たす」とコメントした。

DACに着目するのはマイクロソフトだけではない。アマゾンも23年、ワンポイントファイブから25万トンのクレジットを10年にわたり購入すると発表した。

DACはまだ大規模な実用化の例がほとんどないが、国際エネルギー機関(IEA)も「排出ゼロ」の達成に向け重要な役割を果たすとみている。順調に設備が稼働していけば長期的には存在感が高まっていく見通しだ。アイスランドで5月に稼働した世界最大のプラントは年末までに年3万6000トンのCO2回収能力を計画している。

バイデン米政権もDACの商用化を後押ししている。21年成立のインフラ投資法では35億ドルをDACの建設補助に充てた。22年成立のインフレ抑制法でも、回収量1トンあたり最大180ドルを支援する枠組みを整えている。

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