初めての開催となる「UK駅伝」でスタートを切る選手ら(24日、英オックスフォード)

【オックスフォード=為広剛】英国で初めてとなる駅伝大会「FT日経 UK駅伝」が24日、同国オックスフォードで開かれた。現地に拠点を持つ日英両国の企業や大学生ら18チーム計180人の選手たちがたすきをつなぎ、健脚を競った。

大学の街として有名なオックスフォードは、22日から英国を訪問している天皇、皇后両陛下が留学されていた。28日には両陛下の訪問も予定されている。日本発の伝統ある駅伝競技の開催と合わせ、日英交流への期待が高まっている。

午前8時、オックスフォード中心部でスタートの合図の旗が振り降ろされると日英を中心とした選手たちが一斉に走り出した。ゴール地点はロンドン郊外ウィンザーで、ロンドン中心部まで流れるテムズ川に沿って続く遊歩道「テムズ・パス」を中心に10区間、123キロメートル。沿道は声援を送るチームメイトや地元の観客が並んだ。

実業団や大学生チームなどの本格的な「レース」カテゴリーとそれ以外の「ランナー」カテゴリーに分かれ、レースカテゴリーは各チームは男性5人、女性5人の混成チームで構成される。

今大会は日本の東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)をモデルにしており、英国での駅伝文化の普及を目指す。英国大会はフィナンシャル・タイムズと日本経済新聞社が後援している。

主催団体「UK駅伝」の設立者、アンナ・ディングリー氏は「たすきをつないでいく姿は、チームワークや協力し合う姿勢、困難に立ち向かう努力など日本文化を象徴するものだ。英国でも根付いてほしい」と話す。

英バーミンガムから選手として参加した看護師のスー・パワーさん(54)は「記念すべき第一回大会に参加できて光栄だ。駅伝についてこれまで知らなかったが、日本とのつながりを持てる素晴らしいスポーツで今後も参加したい」と話した。

大会の収益の一部は石川県能登半島など日本の被災地や、英国の障害者スポーツ支援などへの寄付に充てられる。

駅伝は日本独自の長距離リレー競技だ。これまで海外では「ロードリレー」の名称で開かれてきたこともあったが、近年では英国のみならず大陸欧州でも「EKIDEN(エキデン)」の名前で開催される動きが広がっている。

特に日本の文化やスポーツが特に盛んなフランスでは、EKIDENが市民権を得つつある。同国ではフランス陸上競技連盟が正式に運営しており、2013年にパリで初めて開かれた。現在ではリヨン、グルノーブル、ストラスブールなどフランス各地で開催されており、直近では23年11月にマルセイユでも開かれた。

欧州で最大規模のベルギー・ブリュッセル駅伝のほか、オランダ・ロッテルダムやスペイン・バレンシア、ポーランド・ビャウィストクなど欧州の他の地域でも開催されている。フルマラソンと同じ42.195キロメートルを6人の走者でつなぐ方式が欧州では人気になっている。

大会を後援する英フィナンシャル・タイムズ(FT)のジョン・リディング最高経営責任者(CEO)は駅伝の開催にあたり「駅伝はチームワークを体現する素晴らしいスポーツだ。日々の生活でテクノロジーへの依存度が高まる今日では、人と人が体験を共有することはより価値があるものになっている」と話した。

リディングCEOはまた「天皇、皇后両陛下の訪英に合わせて伝統のある駅伝を英国で開くことは、日英両国の絆の象徴にもなる。社会的・文化的なつながりはビジネス上のつながりと同様にとても重要だ。小さなどんぐりが大きな樫の木に育つようにこの駅伝大会も将来大きく成長していってほしい」とした。

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