ロシア南部ダゲスタン共和国で起きた武装勢力による襲撃の現場(23日、デルベント)=タス共同

ロシア南部ダゲスタン共和国で23日、武装集団がロシア正教会やシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)、警察署を襲撃した。ロシアメディアによると警察官ら少なくとも19人が死亡した。通算5期目に入ったプーチン大統領はテロ掃討作戦に取り組んできたが発生を未然に防げず、政権運営に打撃となりかねない。

ロシア連邦捜査委員会はテロ容疑で捜査を始めた。警官や市民ら25人が負傷した。武装集団はデルベントで正教会の聖職者を殺害し、シナゴーグで火災が発生した。首都のマハチカラでも正教会や警察署が襲撃された。

24日時点では武装勢力からの犯行声明は出ておらず、襲撃の背景は明らかになっていない。治安当局は実行犯のテロリスト6人を殺害したと公表した。

タス通信によると、南部チェチェン共和国のカディロフ首長は襲撃について「テロは卑劣な挑発行為で、宗教対立を引き起こす試みだ」と非難した。

ダゲスタンはイスラム教徒が9割を占める地域で、反ユダヤ的な機運が高まっているもようだ。2023年10月にはパレスチナ自治区ガザへの攻撃を拡大するイスラエルに抗議するデモ隊がマハチカラ空港に押し寄せ、空港が一時閉鎖された。

デモ隊はイスラエルのテルアビブからユダヤ人客らを乗せた航空便が到着すると聞きつけ、空港に押し寄せたという。

ロシアではダゲスタンを含む北カフカス地方などでテロが頻発している。タス通信によると3月にはイングーシ共和国で過激派組織「イスラム国」(IS)の共犯者とみられる人物が拘束されたと伝えた。治安当局はISメンバーとされる6人を殺害した。

プーチン政権は治安当局によるテロ掃討作戦を進め、チェチェン共和国などでもイスラム過激派への弾圧を強めてきた。

ロシアの首都モスクワ郊外で3月に発生した銃乱射テロでは140人以上が犠牲となり、ISが犯行声明を出した。

プーチン氏は同月の国民向けの演説で「(実行犯が)逃亡をはかり、ウクライナに向けて移動していた」とウクライナが関与しているかのように主張した。国民のウクライナへの敵対心を高め、侵略継続への理解を求める狙いがあるとみられる。

22年2月のウクライナ侵略開始以降は、不足する兵員を補充するためロシア国防省が地方出身者を前線に派遣する契約軍人として採用する動きが目立っている。

ダゲスタンを含むロシア南部の北カフカス地方は貧困層を中心に軍への入隊者が増えており、現地の治安悪化につながっている面もあるもようだ。

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