【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(6月14日の動き)

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ウクライナ提唱の和平案実現に向けた「平和サミット」開催へ

ウクライナが提唱する和平案の実現に向けた国際会議「平和サミット」が、15日から16日までの日程でスイス中部のビュルゲンシュトックで始まります。

スイス政府は14日、100の国と国際機関から首脳級などが参加すると発表しました。

NHKが入手した会議の共同声明案によりますと、ウクライナが提唱する10項目の和平案のうち、今回は「原発の安全確保」と「食料安全保障」などの3つの項目に絞って議論されることになっています。

一方、ウクライナが訴え続けている「ロシア軍の撤退」や「領土の回復」といった項目には触れられておらず、ロシアとの関係も重視する一部の参加国に配慮したとみられています。

ウクライナのゼレンスキー大統領は13日、SNSに投稿し、「平和サミット」について「われわれは公正な平和の実現に向けた第一歩を踏み出す」と投稿し、会議の成果に期待を示しました。

ウクライナとしては、欧米側だけでなくグローバル・サウスと呼ばれる新興国も含め多くの国が参加する見通しの会議で共同声明を採択して結束を強調し、軍事侵攻を続けるロシアへの圧力につなげたい考えです。

ロシアは批判「ロシアが参加しない会議に意味はない」

「平和サミット」について、ロシアは「ロシアが参加しない会議に意味はない」と述べて、繰り返し批判してきました。

プーチン大統領は5月17日、訪問先の中国で行った会見で「ロシアは参加に消極的だと非難されるが、招待されていないのだ。彼らはできるだけ多くの人を集め、全員で合意して解決済みだとして、ロシアに最後通告を突きつけるつもりだ」と批判しました。

また14日の外務省の高官らを前にした演説でも「彼らはウクライナ紛争の背後にある根本的な原因などについて議論するつもりはないのだ。ロシアに対する新たな非難に終始するだろう」と述べて突き放しました。

また、ラブロフ外相は6月10日、中国の王毅外相と会談し、「平和サミット」に中国も欠席する方針を示したことに謝意を示す一方、「この会議はロシアの公平な参加などが検討されていない」として改めて批判しました。

ロシアは、ウクライナが進める「平和サミット」は、和平を実現するための機会にはなりえないと強調して意義を否定するとともに、中国などと連携を強め、いずれ始まる交渉に向けてロシアにとって有利となるような環境を作り出していくねらいがあるとみられます。

プーチン大統領が“和平交渉の条件” ウクライナは反発

ロシアのプーチン大統領は14日、首都モスクワにある外務省で高官らを前に演説し、ロシアが2022年に一方的に併合を宣言したウクライナ東部のドネツク州とルハンシク州、それに南部のヘルソン州、ザポリージャ州からウクライナ軍が完全に撤退することにウクライナが同意し、実際に撤退を開始すれば、和平交渉を始める用意があると主張しました。

また、ウクライナがNATO=北大西洋条約機構への加盟を正式に放棄することなども交渉の条件だとしています。

プーチン大統領は「紛争の凍結ではなく、終わらせるためのものだ」と主張したうえで、ウクライナと欧米諸国が拒否するなら、交渉の条件はさらに厳しいものになるだろうとしています。

これらの発言を受けて、ウクライナのゼレンスキー大統領は、訪問先のイタリアのテレビ局に対し「最後通告のメッセージだ。信じてはいけない」と述べ非難しました。

また、ウクライナ外務省は「戦争を始めた彼が終結のための選択肢を提示するとはばかげている」として、到底受け入れられるものではないと断固拒否しました。

そして「タイミングも示唆的だ」として、ウクライナが提唱する和平案をめぐる国際会議がスイスで始まる前日に国際世論を操作しようとしているとして警戒を呼びかけました。

プーチン大統領は、欧米側の動きにあわせる形で自身の提案を突如突きつけ、ウクライナへの支援疲れも指摘される欧米側を揺さぶるねらいとみられます。

米国防長官 “撤退しなければならないのはロシア”

アメリカのオースティン国防長官は14日、訪問先のベルギーでNATO=北大西洋条約機構の国防相会議に出席したあと記者会見しました。

この中でオースティン長官は、ロシアのプーチン大統領がウクライナとの和平交渉の条件として、ロシアがおととし一方的に併合を宣言したウクライナ東部と南部のあわせて4つの州からのウクライナ軍の撤退などを示したことについて、「ウクライナの領土を違法に占領しているのはプーチン氏だ。ウクライナに指示する立場にはない」と強く批判しました。

その上で「われわれはプーチン氏に対しウクライナ領から去るよう求める」と述べ、撤退しなければならないのはロシアだとして、速やかな撤退を求めました。

またオースティン長官は、7月にアメリカの首都ワシントンで開催するNATO首脳会議について、「ウクライナの最終的な加盟に向けて着実に進むことになる」と述べ、ウクライナの加盟に向け、前進させたい考えを示しました。

NATO ウクライナへの軍事支援めぐり関与強める

NATO=北大西洋条約機構は14日までベルギーの本部で国防相会議を開き、7月にアメリカのワシントンで開かれる首脳会議に向けて、今後のウクライナ支援などをめぐって詰めの協議を行いました。

ストルテンベルグ事務総長は会議のあと記者会見し、ウクライナへの支援について「NATOが安全保障上の支援や訓練の調整を主導していくための計画で合意した」と述べました。

具体的には、NATOが兵器の供与や修理の計画立案や、加盟各国の国内で行われるウクライナ軍の兵士の訓練の調整などを行うということで、7月の首脳会議で正式に合意する見通しだとしています。

ウクライナへの軍事支援をめぐっては、NATOはこれまでロシアとの緊張の高まりを避けるため、加盟各国が行うという立場をとってきましたが、ウクライナへの支援を確実に続けるため、関与を強めるかたちです。

一方で、ストルテンベルグ事務総長は「この取り組みはウクライナの自衛の権利に対する支援を強化するもので、NATOが紛争の当事者になるわけではない」と強調しました。

このほか、ストルテンベルグ事務総長は、ウクライナへの支援継続の裏付けとして、年間最低400億ユーロ、6兆7000億円相当の資金支援についても各国に提案していますが、この点については、まだ合意は得られていないとしています。

キーウ近郊のバンクシー作品 保存に向け修復作業始まる

鋭い社会風刺画で知られる正体不明のアーティスト、バンクシーがおととし、ウクライナの首都キーウ近郊で描いた作品の傷みが進んだことから、保存に向けて修復する作業がキーウ市内の専門機関で始まりました。

修復作業が始まったのは、おととし11月、バンクシーが首都キーウとその近郊の町で制作したと明らかにした、7つの作品のうちの1つです。

バスタブで体を洗う男性の姿が、ロシア軍の攻撃で破壊された集合住宅の壁に黒や白のスプレーで描かれていました。

制作から1年半以上がたち、傷みが進んだことから、6月12日、保存に向けて描かれた壁紙ごと剥がされ、キーウ市内にある美術品の修復を専門とする国の機関に移されました。

専門機関では早速修復作業が始まり、14日に取材で訪れると、作業室に集まった職員たちが洗浄液を含ませた綿を使って表面に付着したちりを慎重に落としたり、作品を裏返してかびを丁寧に拭い取ったりしていました。

今後、作品の詳しい調査・分析のほか、穴の補修作業などが予定され、完了まで1年以上かかる見通しだということです。

修復後は地元自治体に返還する予定だということで、ウクライナ国立研究・修復センターのストレリニコワ所長は「傷みが激しく、修復は非常に難しいが、バンクシー作品は戦争を反映したもので、保存が必要です。美術品の修復に使う物資が全体的に不足していて、外国からの支援も欠かせません」と話していました。

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