東欧のブルガリアで9日、議会(一院制、定数240)総選挙の投開票があった。政治的な混乱が続く同国での総選挙は過去3年間で6度目。市民らの政治への失望は色濃く、投票率は1989年の民主化以来、最低を更新する見込み。与党が安定的な政権運営を確立できるかは微妙とされ、再び総選挙が行われる可能性が早くも取りざたされている。

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 開票率77.87%の時点で、ボリソフ元首相が率いる中道右派与党「欧州発展のためのブルガリア市民」(GERB)が得票率24.08%で第1党となる見込み。トルコ系少数民族を支持母体とする政党「権利と自由のための運動」が15.85%、中道政党「私たちは変化を続ける」(PP)を中心とする連合が14.99%と続いている。

 ブルガリアでは3期約10年にわたるボリソフ政権が汚職疑惑などを受けて2021年に退陣に追い込まれた。その後は選挙を行っては第1党が過半数に届かず、安定した政権を樹立できない状況が続いている。直近にあった23年4月の総選挙後には政敵だったGERBとPPの連合が、9カ月ごとに「輪番制」で首相を出す奇策を導入して政権を樹立したが、今年に入って決裂していた。

 世論調査会社ギャラップによると投票率は推計32.1%で、記録的な低水準となっている。首都ソフィアの投票所を訪れた会社員のリナ・ベリュワさん(40)は「今の状況にうんざりしている。知人から棄権するのは愚かだと言われて投票に来たが、再び選挙が繰り返されるならもう投票しないだろう」と語った。

 欧州連合(EU)加盟国のブルガリアは念願だったシェンゲン協定(欧州の加盟国間の自由な往来を認める協定)への部分的な加盟を3月に果たした。目下の最大の政治的課題は共通通貨ユーロの導入だが、混乱が続けば、実現が遅れる可能性がある。(ソフィア=根本晃)

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