【イスタンブール=渡辺夏奈】イスラエルのガンツ前国防相は9日、戦時内閣から離脱すると発表した。ネタニヤフ首相にパレスチナ自治区ガザの戦後統治に関する計画策定を求め、応じなければ離脱するとしていた。比較的穏健派とされるガンツ氏の離脱により、政権は不安定化する可能性がある。
同日開いた記者会見で発表した。ガンツ氏は「ネタニヤフ氏は我々が真の勝利を達成するのを妨げている」と述べた。イスラム組織ハマスとの衝突をめぐり、ネタニヤフ氏が安全保障よりも自らの政治的な判断を優先させてきたと批判した。
早期の選挙実施も求めた。「(ハマスが奇襲攻撃を仕掛けた2023年10月7日から)1年後の秋に選挙を実施し、課題に立ち向かえる政府を樹立すべきだ」と話した。
イスラエル国内では人質奪還などガザでの対応をめぐり、ネタニヤフ氏の辞任を求める声が高まっている。戦時下で政権の空白が生まれるなどとして、ネタニヤフ氏は選挙の実施を否定している。同国内で実施された世論調査では野党党首のガンツ氏は支持率でネタニヤフ氏を上回っている。
同じ戦時内閣のメンバーであるガラント国防相には「正しいことを行う」よう求めた。ガラント氏も5月中旬、ガザの戦後計画についてネタニヤフ氏に不満を示していた。
ガンツ氏が離脱してもネタニヤフ氏率いる連立政権は国会で過半を確保している。ただ連立を組む極右政党の勢力拡大は避けられない。戦時内閣はネタニヤフ氏、ガラント氏、ガンツ氏の3人で構成する。ガンツ氏の離脱発表をうけ、極右政党「ユダヤの力」党首のベングビール国家治安相は、戦時内閣への参加を要求した。
ネタニヤフ氏は9日、X(旧ツイッター)に「今は戦いをやめる時ではない」と投稿した。
ガンツ氏は5月中旬、6月8日までに計画を策定できなければ戦時内閣から離脱するとしていた。8日にガザに捕らわれた人質4人が解放されたことを受け、発表を延期した。
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