ボーイングの宇宙船が到着した国際宇宙ステーション=AP

航空宇宙大手の米ボーイングと米航空宇宙局(NASA)が打ち上げた新型宇宙船「スターライナー」が米東部時間6日午後13時34分(日本時間7日午前2時34分)、国際宇宙ステーション(ISS)に到着した。米国の宇宙開発に弾みがつきそうだ。

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宇宙飛行士はISSに1週間ほど滞在し、スターライナーの機能テストを実施してデータを収集する。14日以降に再びスターライナーに搭乗して地球へ向かう。NASAによると、米国の有人宇宙船は「スペースシャトル」などに続く6種類目となる。

スターライナーは米東部時間の5日午前10時52分(日本時間5日午後11時52分)に打ち上げられた。およそ15分後にロケットから分離し、その後、宇宙船が予定通り軌道に載った。

NASAによると打ち上げ前にヘリウム漏れが確認され、その後、2度のヘリウム漏れを確認したが、いずれも大きなトラブルはなかったとしている。

ドッキングは当初、6日の米東部時間午後12時15分頃を予定していたが、宇宙船の下部の一部装置に問題が見つかり、1時間程度遅れた。

約1週間後には再び宇宙飛行士を乗せてISSを出発する。大気圏への再突入と安全な着陸を実現できれば、実用化のメドが立つ。

ISSに到着し宇宙飛行士を送り届けたことは、今回の飛行試験で最も難しい課題の一つを乗り越えたことを意味する。ISSへの接続では数十キロメートル離れた場所から宇宙基地を認識し、燃料の噴射で機体の姿勢を微調整する高度な技術が要る。

スターライナーはボーイングが開発を進めてきた宇宙船だ。宇宙飛行士が操縦することなく自動で飛行することができ、緊急時は必要に応じて手動で操縦できる。今回、宇宙飛行士が乗って打ち上げる試験飛行は初めてだった。

19年に実施した無人の試験飛行ではエンジンが正常に動作せず、ISSへのドッキングを中止。22年に実施した2回目の無人の試験飛行では、ISSへのドッキングに成功して地球に帰還したが、機材の一部に問題が見つかり、実用化に向けた最終段階となる有人の試験飛行は当初予定から遅れていた。 

今回の有人試験飛行を経てNASAが承認すれば、スターライナーは運用段階に入り、ISSと地球の間を宇宙飛行士が行き来する輸送手段として使用できることになる。

1998年から建設が始まったISSには、かつては米国の「スペースシャトル」と、ロシアの宇宙船「ソユーズ」で宇宙飛行士を送り届けてきた。

スペースシャトルが2011年に退役するのを機に、NASAは宇宙輸送の商用化を進めてきた。14年にボーイングとスペースXの2社にISSへ物資・宇宙飛行士を送り届ける宇宙船の開発を委託。スペースXは20年に宇宙船「クルードラゴン」の有人飛行に成功した。

米国がスターライナーを加え、自前の2機体制を確立できれば、万が一、片方の宇宙船が使えなくなっても、有人の宇宙開発を続けられる。現在、併用しているロシアのソユーズへの依存度も下げられる。

(ニューヨーク=川上梓、川原聡史)

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