メキシコで2日にあった大統領選挙で、与党「国家再生運動」(モレナ)のクラウディア・シェインバウム前メキシコ市長(61)が当選を確実にした。男性優位主義が根強いと言われる同国初の女性大統領誕生だ。女性指導者は世界的にも増えている。どんな特徴があるのだろうか。

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 上智大学の三浦まり教授(政治学)は、メキシコ初の女性首脳誕生にも「驚きはない」と言う。

 メキシコは2014年、国会議員の候補者を男女同数にすることを政党に義務づける制度「パリテ」を導入。国会議員はすでに約半数が女性だ。パリテは、司法も関与して厳格な履行を進めている。三浦教授は「女性大統領は瞬間的な人気ではなく、長い年月をかけて築いた女性参画の蓄積の上に誕生した」と指摘する。

 20世紀後半以降、世界各国で女性指導者が誕生してきた。1979年、英国でサッチャー氏が首相に就任。最近では2005年から16年間ドイツの首相を務めたメルケル氏や、17~23年にニュージーランド首相となったアーダーン氏らが記憶に残る。22年にはイタリアでメローニ氏が初の女性首相に就いた。

 アジアにも女性指導者は少なくない。古くはインドのインディラ・ガンジー首相がおり、フィリピンのコラソン・アキノ大統領、インドネシアのメガワティ大統領などが続いた。

 しかし、ガンジー首相はインド初代首相ネールの娘、アキノ大統領はマルコス大統領(当時)と対峙(たいじ)して暗殺されたベニグノ・アキノ氏の妻、メガワティ大統領は独立指導者で初代大統領スカルノの娘、といった特別な背景がある。

 最近でも、11年にタイ初の女性首相となったインラック氏はタクシン元首相の妹であり、13年に韓国大統領となった朴槿恵氏は朴正熙元大統領の娘だった。

 権力者の親族であるなどその人物しか持ち得ない理由で就任しても、女性参画にはつながらず、むしろそれが「ガラスの天井」になって一般的な生い立ちの女性がトップリーダーになりにくくなることもある――。三浦教授はそう指摘する。「世襲は女性のみならず男性の政治参画の機会を奪う。メキシコのように、十分な議論の蓄積を経て女性指導者が生まれることが望ましい」と言う。(鈴木峻)

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