中国が「自国の海域への侵入者」を拘束できるとする新規定を発令したことについて、フィリピンのマルコス大統領は29日、「フィリピン国民を拘束すると脅す規定で、これまでとは異なる。地域の緊張を悪化させるものだ」と非難した。中国が民間人への圧力のレベルをさらにエスカレートさせた、との認識だ。

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 フィリピンは南シナ海で中国と領有権を争っている。中国政府は5月17日、「自国の海域に不法侵入した外国人」を海警局が拘束できるとする規定を発表。6月15日に施行するとした。香港紙サウスチャイナ・モーニングポストによると、海警局は裁判なしで最長60日間、拘束できるという。

 南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島近海では、中国船がフィリピン船に放水や衝突などの妨害行為を続けている。マルコス政権は米国と安全保障協力を強めるなど、中国に厳しい姿勢を取ってきた。

 フィリピン政府の漁業水産資源局も29日、新規定を認めないと表明した。現地メディアによると、報道官は「法的根拠のない一方的な宣言で、我が国の漁師や当局の活動を止めることはできない」と述べた。

 その上で、海軍や沿岸警備隊と連携して漁業者を守ると強調した。

 中国は南シナ海のほぼ全域の管轄権を主張。オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は2016年、「法的根拠がない」として、中国の主張を否定する判決を出した。しかし、中国は受け入れていない。

 マルコス氏は31日からシンガポールで開かれるアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)で基調講演を行う。会議には米中の国防大臣らも出席し、南シナ海問題が主要な議題の一つになる見通しだ。(バンコク=大部俊哉)

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