民主党のチャック・シューマー上院院内総務=AP

【ワシントン=芦塚智子】米連邦議会上院は23日、不法入国者対策のための国境警備強化法案を否決した。同法案は2月に超党派でいったん合意したが、野党共和党の議員の大半が反対し否決されていた。

国境対策は11月の大統領選の大きな争点の一つ。同法案は当初から可決の可能性は低いとみられていたが、与党民主党の指導部が採決を強行した。民主は、共和が国境対策に非協力的だと有権者に印象づける狙いがある。

バイデン大統領は声明で「議会の共和党は国境を安全にし、米国の壊れた移民制度を修復することに関心がない。関心があれば、史上最も強力な国境対策に賛成したはずだ」と指摘。「彼らは米国の安全保障より党派政治を優先した」と批判した。

同法案は、不法越境者が一定の上限を超えた場合は大統領に国境の通過を制限する権限を与える内容。国境警備隊の人員を増やし、不法越境者の難民申請の条件を厳しくする。

共和党の大統領候補指名が確定したトランプ前大統領は法案への反対を表明している。

2月の採決は賛成49、反対50だったが、今回は賛成43、反対50だった。同法案の作成に関わった共和党のランクフォード議員は「(法案が)政治的策略の小道具に使われている」として反対に回った。

2月に賛成した民主党のブッカー議員は、法案が難民申請希望者らを保護していないなどとして反対に転じた。他にも民主党議員数人が反対または棄権した。大統領選をにらんで国境対策で中道路線に傾くバイデン氏の姿勢を巡る民主党内の不協和音が浮き彫りになった。

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