世界銀行の西尾昭彦副総裁(開発金融担当)が23日、朝日新聞のインタビューに応じた。世界の低所得国は食糧危機や気候変動などの「複合危機」に見舞われていると指摘。2030年までに貧困を終わらせるとするSDGs(持続可能な開発目標)の達成は「非常に厳しい状況だ」と述べた。そのうえで、低所得国への資金援助の継続を訴えた。

 西尾氏は世銀グループの機関で最も貧しい国々を支援する国際開発協会(IDA)を統括する。ロシアのウクライナ侵攻後、アフリカのサハラ砂漠より南の地域(サブ・サハラ)やイエメン、ジブチなどでは小麦価格が高騰。ソマリアやエチオピアといったアフリカの国々では、干ばつや洪水に見舞われた。

 西尾氏は「食糧危機、原油高、気候変動、こういったことが折り重なるように途上国を襲っている」と指摘。IDAが資金援助をする75カ国のうち約3分の1で、コロナ前後で国民所得が減っているとし、「持続的に支援をしなければ、生活基盤が失われる厳しい状況にある」と述べた。

 日本はIDA加盟国で米国に次ぐ2番目の出資額を誇る。21年の増資交渉では、前例がなかった増資の1年前倒し議論を主導した。西尾氏は「日本の影響力は大きい。低所得国を助けるためにリーダーシップを発揮してほしい」と期待した。(笠井哲也)

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