新たに国家主席に選出されたのは、トー・ラム氏です。
ベトナム北部フンイエン省出身の66歳で、1979年に公安省に入り、一貫して公安畑でキャリアを積み2016年に公安相に就任しました。
就任にあたり、トー・ラム氏は国会で演説し「国家主席としての義務を厳格かつ完全に遂行する」と宣誓しました。
ベトナムでは、汚職の撲滅を掲げる最高指導者のグエン・フー・チョン共産党書記長のもと、党幹部や政府高官らの摘発や処分が推し進められています。
去年1月には汚職事件の責任を問われて当時の国家主席が辞任したほか、その後任もことし3月、党の規則に違反したなどとして辞任し、1年余りのうちに序列2位の国家主席が2代続けて辞任するという異例の事態となっていました。
20日には、同じく前任の辞任で空席となっていた党の序列4位の国会議長にチャン・タイン・マン氏(61)が選出されていて、後継の就任を円滑に進めることで、政情の不安定化への懸念を払拭するねらいもあるとみられます。
1年余りで最高指導部メンバー18人のうち6人が辞任
共産党による一党支配体制をとるベトナムでは、この1年余りで最高指導部である政治局のメンバー18人のうち3分の1にあたる6人が辞任する、異例の事態となっています。
6人はいずれも事実上の更迭とみられますが、日本とも関係の深いメンバーも多く含まれています。
このうち、ことし3月に党の規則に違反したなどとして就任から1年余りで辞任したボー・バン・トゥオン前国家主席は、去年11月に東京で岸田総理大臣と会談し、海洋進出を強める中国の動向も念頭に安全保障協力を深めていくことで一致したほか、衆議院本会議場で演説を行っていました。
また、ブオン・ディン・フエ前国会議長は、ことし3月にハノイを訪れた経団連の訪問団と会談し、両国の経済面での協力を深化させていく方針を確認したものの、そのわずか1か月後に辞任しています。
さらにベトナムと日本の友好議員連盟の会長として議員外交を推進してきたチュオン・ティ・マイ氏も今月辞任しています。
相次ぐ辞任の背景には、汚職の撲滅を掲げ党幹部や政府高官らの摘発や処分を強力に推し進める最高指導者のグエン・フー・チョン共産党書記長の存在があります。
ベトナムでは、汚職のまん延が社会問題の1つとなっていて党や政府に対する国民の不満が高まっているだけに一連の処分は、一定の支持を集めているとみられます。
ただ、東南アジアのほかの国々と比べ、比較的安定した政治情勢が、投資先としてのベトナムの魅力を高めてきたことから、異例の事態に日本をはじめ海外から進出している企業の関係者の間では、投資環境への影響を懸念する声もあがっています。
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