15日、ニューカレドニアの暴動で燃やされた車両=AP

【ロンドン=大西康平】ニッケル価格が急上昇している。代表的な先物指標の価格は9カ月ぶりの高値を付けた。世界3位の生産量となるフランス領ニューカレドニアでの暴動発生による供給不安が広がっている。

ロンドン金属取引所(LME)のニッケルの3カ月先物価格は20日に一時、前週末比2%高の1トン2万1400ドルを超えて上昇し、終値ベースで2023年8月以来の高値を付けた。15日からの4日間の上昇率は1割を超えた。

太平洋にあるニューカレドニアでは、15日に暴動が深刻化した。現地に長期滞在するフランス人に地方参政権を与える憲法改革に独立派が強く反発して死者が出たことで、仏政府が非常事態宣言を発令した。ニッケルの採掘や輸送への懸念が出る。

ニッケルは世界の生産シェアの約7割を上位3カ国・地域が占めており、地政学リスクに左右されやすい資源だ。国際エネルギー機関(IEA)が17日に発表したリポートによると、23年のニューカレドニアの生産量は21万トン(6%)と、首位のインドネシア(52%)とフィリピン(11%)に続く。

外国から干渉されやすい現地の政治状況の不安定さへの警戒感が高まる。暴動を巡っては、ダルマナン仏内相は旧ソ連のアゼルバイジャンが独立派を後押しして混乱をあおっていると主張する。フランスがアルメニアを支援していることが、係争地ナゴルノカラバフを巡って対立するアゼルバイジャンの反感を呼んだとの見方がある。

18〜21年のニューカレドニアの独立を問う住民投票では、中国が独立派を支援しているとの見方も浮上していた。

ニッケルは電気自動車(EV)の電池材料に使われ、脱炭素社会に向けた需要増大が見込まれる。2040年には23年比2倍の623万トンとなる見通しだ。そのうちEV向けは約10倍の286万トンまで伸びる。

英調査会社アーガス・メディアのデイビッド・フェイフ・チーフエコノミストは商品先物市場の中でも「ニッケルは流動性が比較的乏しいため、市場の不安心理が価格急騰につながりやすくなっている」と話す。

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