ガザ地区の13歳の少年 食料を求め 恐怖感じながら歩く

ガザ地区で人道状況が悪化する中、ユニセフ=国連児童基金は空から投下される食料などの支援物資を求めて恐怖を感じながら歩く13歳の少年、イスマイルさんの声をSNSに投稿し、一刻も早い停戦の実現を訴えました。

ユニセフのSNSに16日投稿された1分15秒の動画は、ガザ地区北部で撮影されたものだとしていて、イスマイルさんが建物がめちゃめちゃに壊れ、がれきが広がる中を歩く様子が紹介されています。

イスマイルさんは、早起きして空から物資が投下される場所に向かうものの、「爆撃されるのではないかと恐怖を感じながら歩いている」とか、「壊れた建物が倒壊するのではないかと心配になる」などと話しています。

それでも「家族のために缶詰を持ち帰らなければと言い聞かせている」と厳しい状況を話しています。

ただ、13歳のイスマイルさんにとっては、体格の差もあって、こうした物資を手に入れることは容易ではないとしています。

そして、「洋服やおもちゃを投下してほしい。戦争が終わったら、学校に戻りたい」とも話しています。

ガザ地区各地でイスラエル軍が激しい攻撃を続ける中、ユニセフは人々に支援物資を届ける活動が困難に直面しているとしていて、「子どもたちは誰もこうした経験をすべきではない。子どもたちは今すぐの停戦を求めている」として、一刻も早い状況の改善を求めています。

国連機関幹部「まさに女性に対する戦争だ」

世界の女性や少女の権利の向上を支援する国連機関UN Womenの幹部がNHKの取材に応じ、イスラエル軍の攻撃が続くガザ地区では母親6000人が死亡したとみられ多くの子どもが親を亡くしたとして、「まさに女性に対する戦争だ」と訴えました。

日本を訪れたUN Womenカーシー・マディ事務次長は、16日都内でNHKのインタビューに応じました。

この中でガザ地区では半年以上にわたる戦闘で18歳以上の女性1万人以上が死亡し、このうち6000人が母親で、1万9000人の子どもが母親を失ったとみられ、「戦争が子どもや女性に壊滅的な影響を与えている。ガザでは女性も子どもも安全ではない。まさに女性に対する戦争だ」と訴えました。

またイスラエル軍が地上作戦を始めた南部ラファの状況について、70%の女性がうつ感や不安感を感じ、妊婦の多くが貧血に苦しんでいて、産後の母親の多くも母乳が出ず授乳できなくなっている、と指摘しました。

マディ事務次長は「非常に深刻な状況で、母体や子どもの健康に悪影響が広がっている。医療サービスへのアクセスなども難しく、母親たちが適切な医療を受けられていない」と強い危機感を示しました。

そのうえでイスラエル軍がラファの検問所を掌握し、支援物資の搬入が滞っていることにも懸念を示し、人道支援を絶やさないために即時停戦の必要性を訴えました。

イスラエル ラファに追加部隊を派遣へ 各国は対応を急ぐ

イスラエル軍は16日にかけてもガザ地区で軍事作戦を続けています。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、北部のジャバリアで住宅が砲撃され妊婦を含む4人が亡くなったと伝え、ガザ地区の保健当局は、犠牲者は3万5272人に上ったとしています。

一方、イスラエル軍は同じジャバリアでイスラエル兵5人が味方の戦車の砲撃によって死亡したと発表し、戦闘の激しさをうかがわせています。

こうした中、16日、南部ラファの部隊を視察したガラント国防相は、現地での作戦について「激しさを増すことになる」などと述べ、追加の部隊を派遣しハマスを疲弊させる方針を明らかにしました。

ただラファには多くの住民が身を寄せているうえイスラエル軍の攻撃開始後、エジプトとの間の検問所が閉鎖され、支援物資が搬入できない状況が続いています。

各国も対応を急いでいて、アメリカ中央軍は16日、ガザ地区の海岸に浮き桟橋を設置したと発表しました。

またイギリス政府は、テント設営用のキットなど100トン近い物資が地中海のキプロスを出航し、設置された浮き桟橋に向かっていると発表しました。

支援物資の搬入は数日以内に始まる見通しだということですが、激しい戦闘が続く中、人道状況の改善につながるかは不透明です。

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