シンガポールで20年にわたって首相を務めたリー・シェンロン氏(72)が15日に退任し、前副首相兼財務相のローレンス・ウォン氏(51)が第4代首相に就任した。財務相職も引き続き兼任する。経済発展の鈍化や少子高齢化といった課題に取り組み、成長を続ける東南アジア諸国連合(ASEAN)で存在感を維持できるかが問われる。

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 「我々は今、紛争と対立の世界に直面している。開放経済国として打撃を受けるだろう。新たな現実に気を引き締め、適応しなければならない」。ウォン氏は15日の就任式で決意を述べた。

 世界で分断が強まる中、難しさを増す「中立」の原則を一貫して守ると強調。「安定した米中関係を望み、両国の間で問題が生じても、双方に関与し続ける」と語った。

 ウォン氏は貿易産業省や財務省の官僚をへて、2011年に政界入りした。与党・人民行動党(PAP)の中では、リー前首相らに続く「第4世代」の指導層で最若手の1人だ。20年に新型コロナウイルス対策の政府タスクフォース共同委員長に抜擢(ばってき)され、厳格な規制で感染拡大を抑え込んだことで評価を高めた。

 リー前首相は建国の父リー・クアンユー初代首相の息子で、04年から第3代首相として20年にわたって国の成長を牽引(けんいん)し、東南アジアの金融ハブとしての地位を固めた。

 ウォン氏は前政権の路線を継承する見通し。リー氏も上級相として閣内にとどまり、後見役としてウォン氏を支える。(シンガポール=大部俊哉)

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