2024年9月12日,Pico Technology(以下,Pico)の日本法人であるPico Technology Japanは,新型VRヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)「PICO 4 Ultra」と,体に装着して使うモーショントラッカー「PICO Motion Tracker」を9月20日に国内発売すると発表し,予約の受付を開始した。PICO 4 Ultraは,2022年10月に登場した既存製品の「Pico 4」と比べて,前面に搭載するRGBカメラや,SoC(System-on-a-chip)などのスペックを大幅に強化したのが見どころだ。
 PICO 4 Ultraは,Amazon.co.jpとヨドバシカメラ,ビックカメラで取り扱われる予定で,税込価格は,順に8万9800円1万1800円となっている。

PICO 4 Ultra

PICO Motion Tracker

 PICO 4 Ultraは,単体で動作するスタンドアロン型のHMDで,対応アプリは,Pico独自の「PICOストア」から入手可能だ。また,PCと接続してSteam VR互換のPC用VR HMDとしても利用できる。

 ディスプレイパネルの解像度は,4320×2160ドット(片目あたり2160×2160ドット),最大リフレッシュレートが90Hzというスペックは,Pico 4と変わらない。ただ,パネルの輝度が25%増えたほか,搭載SoCをQualcommのHMD向けSoC「Snapdragon XR2 Gen 2」に変更することで,レンダリング可能な解像度が従来の1504×1504ドットから1920×1920×ドットに向上したとのこと。

ディスプレイパネルのスペック

Pico 4と比べてレンダリング解像度が1.6倍に向上した

 Snapdragon XR2 Gen 2に採用により,高速無線LAN規格「Wi-Fi 7」(IEEE 802.11be)や,高画質ビデオコーデック「AV1」のハードウェアデコードにも対応する。

Wi-Fi 7などの最新規格に対応する
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 Picoによると,「PICO 4 Ultraは,XR(Mixed Reality)に向けて設計したデバイス」だという。前面パネルには,トラッキング用カメラに加えて,有効画素数3200万画素の撮像センサーを組み合わせた2眼式のRGBカメラを新たに採用しており,周辺の様子をHMD内に表示するビデオシースルー機能がより高精細になったという。

前面パネルに2眼式カメラを搭載したのがポイントだ

Pico 4と同じく,重量を前後に分散することで,HMDを長時間装着していてもつかれにくいという

PICO 4 Ultraのレンズ。58〜72mmで瞳孔間距離を調整できる

 Pico 4でもRGBカメラを用いたビデオシースルー機能に対応していたが,単眼カメラのため奥行きがつかみにくい場面もあった。PICO 4 Ultraでは,この問題を解消している。加えて,シースルー映像のフレームレートも従来の60Hzから72Hzに向上しているそうだ。

 PICO 4 Ultraには,HMDに対象との距離を計測する測距(深度)センサーを内蔵したのもポイントだ。Snapdragon XR2 Gen 2とカメラ,センサーにより,HMD周辺の物体をリアルタイムで仮想空間にマッピングするほか,任意の物体を仮想空間に合わせた内容に置き換えるといった処理を行えるという。

PICO 4 UltraのXR向け機能

 また,2眼式のRGBカメラを利用した空間写真や空間ビデオの撮影も可能だ。撮影できる解像度は,最大4096×1536ドットで,最大フレームレートは60fpsとなる。フロントパネルのトラッキング用カメラを使った手ブレ補正や,フレーム合成によるノイズ除去も行えるとのこと。

空間写真とビデオの撮影や視聴をHMD単体で行える

 Appleの空間動画フォーマット「MV-HEVC」に対応しており,Apple製HMD「Apple Vision Pro」で撮影した空間写真や動画をPICO 4 Ultraで視聴できる。

 PICO 4 Ultraの専用コントローラは,既存製品にあったリングをなくしたシンプルなデザインに変更となった。複数のセンサーを組み合わせることでトラッキング精度が向上したという。

PICO 4 Ultraの専用コントローラ

専用コントローラのスペック

 搭載OSの「PICO OS」では,HMDの周囲360度に複数のアプリウインドウを表示できるようになった。本稿執筆時点では,専用コントローラとハンドジェスチャーによる操作に対応しており,今後キーボードやマウスでの操作もサポートするそうだ。

「パノラマワークスペース」として広い領域を利用できる

特定のウインドウに対して位置や大きさを自由に調整可能だ

 PCやスマートフォンとPICO 4 Ultraを接続する「Pico Connect」もアップデートを行う。Windows PCやMacに加えて,スマートフォンの画面も表示できるのもポイントだ。HMDを装着しているときに,スマートフォンに着信やテキストメッセージが届いたときにも応対できる。

Windows PCやMacのデスクトップ画面を表示できる

スマートフォンの画面も表示可能だ


足首に装着して全身をトラッキングできるPICO Motion Tracker


 モーショントラッカーのPICO Motion Trackerは,主に左右の足首に装着して利用する製品だ。足首に取り付けたPICO Motion Trackerを,PICO 4 Ultraで撮影するだけで,キャリブレーションを行えるという。直径が38mmで,公称本体重量が27gという,小型軽量ながら最大25時間という長時間のバッテリー駆動を実現する。
 トラッキング周波数は200Hzで,HMDとは独自方式のワイヤレス接続にてデータ転送を行う。

PICO Motion Trackerは,27gと軽いのがポイントだ

 一般的なモーショントラッカーは,脚部以外にもセンサーを装着して全身の動きを検出するのだが,PICO Motion Trackerでは,機械学習処理よって,足首のセンサーから全身の姿勢を推測してモーションキャプチャに反映する。Picoによると,400時間以上の学習データにより,高精度のモーションキャプチャが可能だという。足首の2か所に加えて,さらに複数のPICO Motion Trackerも接続できるとのこと。
 なお,PICO Motion Trackerは,PICO 4 Ultraだけでなく,既存のPico 4でも利用可能だ。

PICO Motion Trackerの学習データ

センサーを足首に装着しているのに,膝の曲げ方もしっかりと反映されている

 PICO Motion Trackerは,「VRChat」を含む20以上のゲームタイトルに対応するという。

VRChatに対応

PICO Motion Tracker対応ゲームタイトル

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