2024年8月1日から4日まで開催された北米最大のアナログゲームコンベンション「Gen Con 2024」。これまでに掲載した記事では,多くの人で賑わう物販ブースの模様や,会場のいたるところで開催されていた企画展示イベントの様子を紹介してきたが,Gen Conの魅力はそれだけではない。
 多くのホテルと隣接し,夜通しで開催されるコンベンションであるGen Conでは,昼の時間帯では見ることのできない“夜の顔”もまた存在する。本稿ではそんな夜のGen Conをレポートしてみたい。

夜,20:00過ぎの会場風景。エグジビットホール以外であれば,参加者は自由に歩き回れる
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 2024年8月1日から4日まで開催された北米最大のアナログゲームイベント「Gen Con 2024」の会場レポートをお届けする。いよいよ本番を迎え,さまざまなジャンルの新作に沸く現地の模様を,写真を交えながらお伝えしていこう。

[2024/08/05 11:19]
  • キーワード:
  • ANALOG:ダンジョンズ&ドラゴンズ 第5版
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  • ライター:Im Karton/Omochicard
  • Gen Con 2024


夜通し遊ぶ,タフなアナログゲーマーたち


 アナログゲームを遊ぶための場としてスタートしたGen Conの目的は,なんといってもゲームを遊ぶことにある。それがテーブルトークRPGやミニチュアゲームであればなおのこと,がっつり遊ぼうとすればどうしても時間がかかってしまうもの。であればこその夜通し開催なのだが,そうは言ってもすべてのスペースが24時間開放されているわけではない。

 物販会場であるエグジビットホールは18:00で閉まってしまうし,トークセッションなども昼間に開催されるものがほとんどだ。しかし,それ以外の会場スペースは,自由に出入りができる。ホテルはもちろん,巨大なプレイスペースとして利用されているLucas Oil Stadiumも同様で,そのあちこちでゲームが楽しまれていた。

会場の一つとなったLucas Oil Stadium。8月のインディアナポリスは日が長く,20:00を過ぎても窓の外はかなり明るい

 筆者らが夜の会場を散策したのはイベント3日目の8月3日だったが,エグジビットホールが閉まってから2時間ほどが経過しているにも関わらず,Gen Con会場のIndiana Convention Centerには赤々と明かりが灯り,大勢の人が行き交っていた。
 買い物が主目的の参加者がとっくに帰っている時間で,インディアナポリス中心部のショッピングモールの店もほとんどが閉店しているのに,ここだけは昼と変わらない活況ぶりである。

こちらは「バトルテック」のプレイスペース。昼間と変わらず,ゲームを楽しむ人たちで溢れている

通路に設置されたピンボールを楽しむ参加者たち。イベント会場以外の施設も深夜まで開放されている

 またIndiana Convention Center内の廊下では,椅子を円状に並べて人狼ゲームを遊んでいるグループも。昼は往来を妨げないよう開けたスペースになっていたが,同じ場所でも夜はまた異なる雰囲気に様変わりするようだ。

突如遭遇した「汝は人狼なりや?」の対戦ブース。円形に並んだ椅子に座って遊んでいるグループの数は10を超え,廊下を埋め尽くしていた

 一方,夜間ならではのイベントも催されていた。Indiana Convention Centerの正面ゲート付近では,来場者から寄付された不要なカードゲーム用カードを用いて塔などのオブジェを作る「Cardhalla(カードハラ)」が行われていたが,この日はその最終日となっていた。
 チャリティーを目的としたCardhallaでは,その締めくくりとして観客がお金を投げ,完成したオブジェを破壊することになっている。そのお金が寄付金になるわけだ。この日も歓声と共に1ドル札が飛び交い,大変な賑わいとなっていた。

寄付カードで組み上げられたCardhalla。3日目の夜ともなると,かなりの高さとなっていた

Cardhallaを崩すイベントに集まった参加者たち。2階からも大きな歓声があがっていた


ゲーマーのお腹を満たす夜の軽食スペースや物販ブース


 夜通しゲームに興じていては,お腹が減るのも当然というもの。インディアナポリスの飲食店は夕方には閉まる店も少なくないが,会場には軽食や飲み物の売店があり,かなり遅い時間まで営業が続けられていたようだ。


 一方,イベントには付きもののキッチンカーが集まるblock partyエリアは,昼には行列ができていたものだが,残念ながら夜までは営業していない様子。会場外では隣接するホテル内のバーやファストフード店が比較的遅い時間まで開いており,そこで食事をとる人も多かったようだ。ただし酒類を扱う店はあまりなく,実際にゲームで遊ぶ参加者の中でも,お酒を飲んでいる人は驚くほど少なかった印象だ。

22:00頃の売店の様子。軽食やドリンクが提供されており,場所によっては並ぶ必要があったほどだ

野外のキッチンカーは夜になると閉店していた。大きな行列が出来ていた昼とは正反対の静けさとなっていた

 また物販ブースが集まるエグジビットホールは閉まってしまうものの,ホール外であればゲームの購入も可能だった。例えば軽量級のゲームを多く扱うパブリッシャのallplayは,自社のプレイブースを夜間も開放しており,そこでゲームの販売も行っていた。そのほかTCGの試遊スペースに併設されたカードショップもあって,21:00頃までは関連製品が購入できるようになっていた。

プレイスペースを開放していたallplayのブース。夜でもスタッフが常駐し,ゲームの販売を行っていた


世界に類を見ない巨大アナログゲームイベント


 メイン会場のコンベンションセンターのみならず,付近のホテルやスタジアムまで使って遊びの場を提供するGen Conは,アナログゲームのイベントとしては間違いなく世界最大規模のものと言える。
 規模だけで言うならドイツの「Spiel Essen」も同等だし,以前に取材したフランス・カンヌの「Festival International des Juex」では,深夜帯に開催される催しも用意されていた。しかし,それはあくまで例外であり,ここまで一貫して“遊び”に重心を置いているのは,ほかではなかなか見られない。まさにファンコミュニティから生まれたイベントならではの特色と言えるのではないだろうか。

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[2024/03/01 09:00]
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  • ライター:Im Karton/Omochicard

 ホテルを貸し切ったコンベンションには,ほかにもアメリカ・ダラスの「BGG.CON」や,日本でも静岡は御殿場で開催されている「ボードゲーム大祭 in TOKINOSUMIKA」などがあるが,こういったイベントがもっと増えてくれるとアナログゲーム文化が豊かになる気がする。もちろん越えるべきハードルはいろいろとありそうだが,本邦でも特色を持ったイベントが増えることに期待したい。

著者紹介:Im Karton
海外アナログゲームイベントを訪ねて旅する3人組。読み方は「イム・カートン」。これまでに世界最大のアナログゲームイベントであるドイツ「SPIEL Essen」をはじめ,アメリカ「Gen Con」,フランス「Festival International des Juex」などを訪問。昨年はSPIEL Essenに行きたい旅行者向けのガイド「Essen Spiel Guidebook 2023」を同人誌として刊行。

Omochicard
Im Kartonメンバー。訪問時は旅行の計画や日本へボードゲームを送る宅配便の発送などを担当。海外ボードゲームが大好き。好きなボードゲームは「アーク・ノヴァ 新たなる方舟」や「Kemet: Blood And Sand」。

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