実に貴重でかつうらやましいイベントの前日,NetEase Gamesのビジネスブースにて両氏に話を聞けることになり,かつて本作のオリジナル版で地獄に堕ちた野郎(ども)となった筆者が突撃。リマスター制作やgamescom 2024の出展の経緯,そしてふたりの今後(?)などについて話を聞いてきた。
4Gamer:
貴重なお時間をありがとうございます。ダムドのオリジナル版当時の開発エピソードは「7月に配信されたGrasshopper Direct 2024を観て!」ということで,今回は地獄の新装開店となるリマスターの話をお聞きしたいと思います。
まずgamescom 2024への出展について,このあたりもGrasshopper Direct 2024で語られていましたが,ここに至るまで須田さんはPaxやMomoConなど海外イベント行脚をされていましたよね。
須田剛一氏:
ああー,そうですね。はい。新型コロナの流行の影響もあってこういったことはできていなかったんですが,昨年のダムドの発表から回りたいなと考えてそれをという感じですね。
4Gamer:
なぜ各地を巡ろうと思ったのかという目的と,その手応えみたいなところをお聞きしたいです。
須田剛一氏:
ファンの皆さんに会いに行くっていうのはもちろんあるんですが,プロモーションとしても「プレイアブル出展はちゃんとやりたいな」というのはありました。
これまでの経験則でそうなんですよ。こういうイベントにしっかり出したタイトルって,やっぱり数字もそれなりの形で出るんですよね。
4Gamer:
gamescomではグリーティングイベントを行うとのことですが,こういった海外のゲームイベントや国内外のインディーゲームイベントって,開発者に紹介してもらいながらゲームを試遊できるのがいいですよね。
ゲームのファンにとっても,実際にゲームを作っている人を身近に感じられて。
須田剛一氏:
ええ,ええ。それこそPaxでも試遊台の近くでグリーティングをしてっていう風にやっていて。gamescomはゲームの表現が厳しく,多くの人が見えるところにダムドを置けないので一緒にゲームをしながらとはいかなかったんですが,であればグリーティングとかサイン会とかそういう形でって参加しました。
gamescomみたいなゲームイベントはNetEaseに「出展するならダムドもねじ込んで!」ってお願いすればいいですが,Paxのようなカルチャー系イベントはまったく入口が違ったりするのでブースを出すにも実は大変なんですよ。でも現地のファンはもちろん,現地のメディアやインフルエンサーの皆さんにちゃんと遊んでもらってゲームを知ってもらうということは一個一個丁寧にやりたいなという思いがあります。
4Gamer:
満を持してという感じでgamescom 2024にて三上さんとのタッグ揃い踏みというのが実現となりました。このあたりの経緯もGrasshopper Direct 2024で話されていますが,三上さん参戦の前にまずあらためてダムドのリマスターの経緯をお聞きしていいでしょうか。
須田剛一氏:
リマスターについては8年くらい前にも一度話があったんです。「やりたい」って言ってくれるところがあって。
GhMとしてもぜひお願いしたいという話だったんですが,オリジナルの販売元のEAと話をしてみたところ,パブリッシングのルール的なところで難しいってなったんですね。
4Gamer:
一度話は流れてしまったと。そこから8年近く経った今なぜリマスターの話が復活したのでしょう。
須田剛一氏:
以前からGhMのゲームをカタログ化したいって思いがあって,やっぱりダムドはやりたいよねっていう話はGhM内であったんですね。
それでGhMがNetEaseグループ入りしたタイミングでまず「ダムドをやりたい」って打診したんです。そうしたらEA側の拘束はなくなって,オールプラットフォームもOKだったんですよ。それで「よし,やろう」とスタートしました。
4Gamer:
それで「時は来た」と三上さんに連絡してという感じですか?
須田剛一氏:
三上さんとはそれまでも定期的にお会いしていて,そんな話は以前からしてはいましたね。
三上真司氏:
いやでも,僕がちゃんと知ったのって作ってからだったよ? それ聞いて「え,なにダムド作ってんの」って(笑)。
4Gamer:
(笑)
須田剛一氏:
そうそう,そうなんです。それで「三上さん,その時がきたらいろいろと応援をお願いします」って,そういうものの一環でプロモーションのサポートというか,それで今回gamescomにも参加してもらって。
三上さんがうちのスタジオ(こちらのインタビューで触れている,2022年春に移転した後楽園の新スタジオ)に来てくれたとき,そのあとご飯に行って,それこそ海外イベント出展の話とかいろいろしたんです。
三上真司氏:
Paxに来てくれまではそのとき言ってなかったと思うけどなあ。たぶん。
須田剛一氏:
いや,それは三上さんが忘れているんですよ! 3回くらい断られて4回目で「だったらしょうがないですね。行きますよ」って言ってくれました。で,行きますよってタイミングでお声がけしたら「えっ,なんですかそれ?」って。どのみち,三上さんはその時期めちゃくちゃ忙しかったんですけどね。
それがリマスターの始まりからここまでのストーリーラインです。
4Gamer:
発売が今年のハロウィンの2024年10月31日なので,それを考えるとgamescom 2024が海外イベント出演の大きな区切りとなりそうですよね。そこで須田さんと三上さんが揃ったというのは大きいなと思います。
おふたりでこうしてダムドリマスターでまたタッグを組んでみて,またふたりで新しいゲームを作ろうみたいな話になったりはしましたか? こういう話は尾ひれがついて変なほうに拡散されたりして,結果ご迷惑になっては……というのもあるのですが。
三上真司氏:
そういう話はインタビューで普通にしてますよ。海外のメディアからは確実に聞かれますし。
須田剛一氏:
そうそう。ガンガンしています。それに対して僕がずっと答えてきたのが,「killer7」はやりたいけど僕的にハードルが高いという話ですね。
4Gamer:
須田さんと三上さん,小林裕幸さんといったクリエイターが集った,それこそ海外のゲームファンならとくに期待しているであろう作品ですね。そのハードルとなるものがご自身のなかにあるんですか。
須田剛一氏:
そうですね。いまのGhMはkiller7当時よりチームで開発するというのが進んでいて,僕だけの意見でなにかを作るのではなく皆で作っているんですね。
でもkiller7は完全に僕が発信したものだけ,自分自身のアイデアで自分自身でディレクションしないとGoが出せないゲームなんです。その作り方をいまやったら,これまで築いたチーム開発の仕組みが崩壊するんじゃないかという恐さがあるという話はずっとしていますね。
4Gamer:
須田さん個人の作品性が強いゲームだからこその。
須田剛一氏:
はい。今のチームでどこまでエゴをとおしていいのかと,そういうジレンマはありますね。あとは「かつてのあの領域にもっていけるか」という僕自身のボルテージも重要で,killer7をやるにはいろいろ覚悟がいるなと思っています。
なので三上さんとまた組ませていただけるのであれば「クラヤミ」というプロジェクトになりますね。これは三上さんが押してくれた企画で,もし実現できるならと。
4Gamer:
そのような企画が。
三上真司氏:
企画自体は十数年前からあって,僕的にはインディーなノリがすごい。ただ当時「こういうゲームをコンシューマでこの規模感で出す」って考えていたことって,今だと開発規模や期間は相当なものになるんですよね。開発には4年前後はかかるような。
4Gamer:
その分開発費も……と。
三上真司氏:
期間が長くなればお金もかかるけど,では尖りまくったゲームがたくさん売れるかっていうのは気になるし,お金を出す側も「そういうのはどうなの?」となるだろうなと。やっぱり株式マーケットなので,ゲームをよく知らない人が偉かったりするわけじゃないですか。だからゴーサインはなかなか出にくいだろうなとか,いろいろな問題はけっこうあります。
須田剛一氏:
ゲームを10本作ったとしたら2〜3本の打率3割のヒットを出しながら,尖りまくったゲームや実験的な作品にもチャレンジするというのが理想的なんですよね。
4Gamer:
GhMは自らをバンドと表現していますよね。それで言うとGhMは「数日籠って一気に録った」「一発録りしました」的な衝動性みたいなところも魅力として持っているバンドというイメージもあるので,三上さんとの尖りまくった新作はぜひ見てみたいです。
お時間となりましたので,読者にメッセージをお願いできますか? おふたりというネクロマンサーに操られるかのごとくこの情報を追いかけていた,かつてオリジナルをプレイして地獄に堕ちた野郎どもとなった我々と,これから地獄行きを検討中の人たちそれぞれにお願いします。
須田剛一氏:
まずかつての方たちには,PC,PS5,Xbox Series X|Sでぜひ4K解像度と60fpsでダムドをプレイしてほしいですね。Switchでしたら画質もfpsも当時の感じなので,オリジナルの雰囲気そのままにそれを気軽に遊べると。
えーとですね。今日インタビューでこういう話ずっとしていて(ちなみに4Gamerは一番最後だった),1人3本ぐらい持つのが本当1番いいんじゃないかなという結論が,さきほど今日のデータから出ました。
4Gamer:
データからですか,なるほど(笑)。4K解像度と60fpsで遊べるPCとコンシューマ,オリジナルの体験に近いSwitchということでしょうか?
須田剛一氏:
そうですね。PCはPCゲームの感覚でキーボードとマウスで操作し,PSやXboxはリビングのテレビで最新のテレビゲームとしての遊びかたを。Switchはテレビでも遊べますし,部屋のどこでも移動のときとかも遊べますと。
4Gamer:
そのときの気分でプレイヤー自身が選択すると。
須田剛一氏:
はい。それは初めてダムドをプレイする人にも言えますけどね。
それでリマスターでダムドに興味を持ったという方たちですが,地獄のスーパー●リ●だと,そのようにイメージしていただくと分かりやすいと思います。
ダムドの主要キャラクターはガルシアとポーラとフレミングという3人なんですが,これが偶然にも,スーパー●リ●と同じ三角関係なんですよ。
4Gamer:
偶然にも(笑)。
須田剛一氏:
ええ,ええ。ガルシアは愛するポーラをフレミングにさらわれて,それを追いかけていくという。アクションゲームの様式美ですね。導入は多くの人がスッと入りやすい世界観と設定なんですよ。
三上真司氏:
いいなあ。そういう説明だと売れるゲームっていう気がする(笑)。
須田剛一氏:
三上さんや開発陣,あといろいろなメディアの方々も「カルトクラシック」っていう呼び方をしていて,本当にそういう言葉が当てはまるんですよ。ちょっと変わったクラシックなアクションゲームって感じで楽しんでもらえると思います。
三上真司氏:
日本語キャストにも注目してほしいよね。
4Gamer:
あっ。あまりちゃんと発表されていなかったと思うんですが,日本語ボイスはオリジナルのままですか?
須田剛一氏:
はい,もちろんです。ポーラ役の栗山千明さんは「晩酌の流儀」でまた光っていらっしゃいますし,フレミング役の吉田鋼太郎さんは本作以降もまたブレイクして当時以上に人気になっていますよね。
4Gamer:
「おっさんずラブ」などの出演で広い世代に人気ですね。あと直近の話題だと,主人公ガルシア役の浅野忠信さんは最近だと石井岳龍監督の「箱男」に出演しています。浅野さんや我修院達也さん,田口トモロヲさんといった「そうそう,これこれ」みたいなキャストもまたカルトクラシックといった感じがありますね。
ではあらためて三上さんからもお願いします。
三上真司氏:
13年前にそれなりに真面目に作ったゲームですが,須田さんの言うとおり今の時代におけるカルトでレトロクラシックなゲームなんですね。ゲーム感覚が強い,独特のホラーゲームを楽しみたいという人には刺さると思います。
かつてプレイしていたという人たちは,どんなゲームかっていうのはもう分かっていると思うので,「またプレイしたいと思ったら,いろいろな選択肢がありますよ」と伝えればいいかなと。
4Gamer:
ありがとうございました。地獄の門がまた開く今年のハロウィンを楽しみにしています。
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