NHN ゲーム技術センター ディレクター リュウ・ヒテ氏
 韓国を拠点とする総合インターネット企業,NHNグループ。4Gamerの読者にとっては,「LINE:ディズニー ツムツム」(iOS / Android)の開発など,ゲーム事業を手がけるNHN PlayArtの印象が強いかもしれないが,グループ全体では決済サービス業やITソリューション事業といった,さまざまな事業を展開している。
 その中で,ゲーム開発に関するテクノロジーを研究・開発しているのが,NHN ゲーム技術センターだ。今回,同センターのディレクターを務めるリュウ・ヒテ氏に,NHNのゲームプラットフォーム「Gamebase」について話を聞いた。

 Gamebaseとは,PCやiOS,Androidなど,さまざまなプラットフォームに対応したゲーム開発・運用プラットフォームだ。Gamebaseを導入したゲーム開発では,PC向け,iOS向け,Android向け……といったように,プラットフォームごとにゲームコンテンツの提供に付随する各種機能の開発をすることなく,Gamebase用に開発するだけでマルチプラットフォーム展開が可能となる。


 というのも,Gamebaseには,ゲームのライブサービスに必要な機能がすべて備わっているのだ。ログイン / 認証,決済,クライアント管理などの主要機能はもちろんのこと,ゲーム運営ツール,KPIなどの指標分析ツール,多言語対応のプッシュ通知機能,各ストアに対応したクーポン機能などが実装されており,ほかのサービスを併用することなくワンストップでライブサービスを展開できる。


 グローバルサービスにも対応しており,アメリカ,ヨーロッパ,東南アジアなど全世界に設置したサーバーによって,高速なネットワーク環境を実現している。


 なお,上記の機能をプラットフォームごとに直接開発した場合,通常であれば3〜4か月の期間が必要となるとのこと。しかしGamebaseを導入することで,これを短縮でき,ゲーム開発における生産性を大幅に強化できるそうだ。


 日本では,NHN PlayArtの「#コンパス 戦闘摂理解析システム」(iOS / Android)の開発および運営に,Gamebaseが導入されている。NHN PlayArtで実際に同作の技術サポートを行う 川床 稔氏によると,Gamebaseだけでゲームの開発・運用に関するすべてが完結するため,非常に便利であるとのこと。試しに一度,Gamebaseなしの運用を試してみたところ,思いのほか大変だったことを明かし,「ゲームのライブサービスは開発して終わりではなく,そのあとに運用が続く。Gamebaseはそこをカバーしてくれるので,本当にありがたい」と話していた。



韓国では2〜3年前の時点で

100タイトル以上で導入されているGamebase


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 さっそくですが,Gamebaseは現在,どのくらいのゲームタイトルに導入されているのでしょうか。

リュウ・ヒテ氏(以下,リュウ氏):
 2018年からNHNグループ外への提供を開始したのですが,韓国では2〜3年前の時点で,「LINE ポコパン」をはじめ100タイトル以上のゲームに導入されています。そのほとんどはNHNグループ以外で,台湾のパブリッシャやアメリカのデベロッパへの導入実績もあります。

4Gamer:
 NHNグループ内ではいつ頃からGamebaseを利用しているのでしょう?

リュウ氏:
 前身となるシステムは2011年に開発し,使用を開始しました。それを都度改良しつつ機能を追加していった結果,現在Gamebaseの形になりました。

4Gamer:
 Gamebaseのすべての機能が,各プラットフォームで使えるのでしょうか。

リュウ氏:
 基本的には,そのとおりです。ただ,例えばApp StoreやGoogle Playにはサブスクリプション決済がありますが,ほかのストアにはそれがないこともありますので,例外は存在します。

4Gamer:
 Gamebaseを通じて,プラットフォームごとの個別対応はできますか?

リュウ氏:
 もちろん可能です。例えばクーポン機能であれば,iOSとAndroidに対応したゲームの場合,Google Playを介してAndroid端末のみにクーポンを配布するといったことができます。
 ほかの機能でも,「こっちのプラットフォームでは必要だけれども,あっちのプラットフォームには必要ない」といったことに対応できるような設計をしています。

4Gamer:
 では,Gamebaseでカバーできないプラットフォームはあるのでしょうか。

リュウ氏:
 GamebaseはApp StoreやGoogle Play,Steam,Epic Games Storeといった主要なプラットフォームやストアなら,ほぼカバーしています。ただ各国独自のストアに関しては,カバーし切れていないところもあります。
 なお,中国国内のストアはサポートしていませんが,これは技術的な問題というわけではなく,中国国内の政策の関係です。

4Gamer:
 では,そのほかにGamebaseに特徴的な機能があれば教えてください。

リュウ氏:
 例えば,決済プロセスを悪用して不正に利益を得ようとするユーザーに対して,自動的にアクセスを遮断したり,決済できないようにしたりできる機能を搭載しています。また,そうした不正ユーザーに対する制裁を任意に解除できる機能もあります。

4Gamer:
 そのあたりも,ニーズに応じた柔軟な運用ができるということですね。
 それでは,Gamebaseに関心のある人達に向けてメッセージをお願いします。

リュウ氏:
 日本のゲーム市場は韓国よりも大きいですから,Gamebaseのようなゲーム開発・運用プラットフォームの需要は高いと考えています。しかし日本では,ゲーム開発・運用プラットフォームの有用性がまだまだ浸透しておらず,各社が個別に独自開発しているケースもまだまだ多いと聞いています。実は韓国でも,提供を開始した2018年当時は「なぜこんなものが必要なのか?」と疑問視されることが多かったんです。しかし今では,私達から必要性を説明することはなくなりました。むしろ,「こんな機能を実現できないか」「もっとコストを下げる方法はないか」といったリクエストをいただくことが増えています。

 また,韓国で開発されたものということで,日本の環境での動作に不安を抱く方もいらっしゃるかもしれませんが,Gamebaseは長い年月をかけて改良を重ね,安全性を確立してきました。たとえトラブルが起きても,サポートできる膨大なノウハウやリソースがあります。日本での稼働実績と安全性の証左としまして,今年で8周年を迎える「#コンパス 戦闘摂理解析システム」という大きな成功例があります。日本の皆様,これを機にぜひGamebaseの導入をご検討いただけると幸いです。

4Gamer:
 ありがとうございました。

リュウ氏と川床氏

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