Core Ultra Processors(Series 2)
 2024年9月3日,Intelは,開発コードネーム「Lunar Lake」と呼ばれる薄型ノートPC向けCPUを「Core Ultra Processors(Series 2)」(以下,Core Ultra 200V)として正式発表した。

 今回発表となったCore Ultra 200Vの製品バリエーションは9種類で,製品のグレードにかかわらず,CPUコアは,高性能コア「P-core」を4基,省電力コア「E-core」を4基という構成となっている。各製品の主な違いは,CPUの動作クロックに加えて,パッケージ上に実装するメインメモリの容量,統合型グラフィックス(以下,統合GPU)のコア数と動作クロックにあるようだ。
 最上位モデルの「Core Ultra 9 288V」では,CPUの最大動作クロックが5.1GHzで,統合GPUは8コアの「Intel Arc 140V」を搭載している。

Core Ultra 200Vの製品ラインナップ

 Lunar Lakeは,Intelが2024年6月に詳細情報を公開したCPUで(関連記事)だ。CPUコアとGPU,AI処理に使用する推論アクセラレータ「Neural network Processing Unit」(NPU)などからなる「Compute tile」と,I/O周りを処理する「Platform Controller tile」で構成される製品となる。
 既存の「Core Ultra(Series 1)」(開発コードネーム:Meteor Lake)は,CPUとGPU,NPUがそれぞれ別のダイ(Tile)になっていたので,Lunar Lakeはシンプルになっているわけだ。
 CPUコアや統合GPUをはじめとする内部構造を,Core Ultraから大きく変更することで,性能向上と電力効率の改善を実現したのが見どころだ。まず,CPUコアは,P-coreとE-coreのどちらもマイクロアーキテクチャを刷新しており,P-coreの「Lion Cove」は,Core Ultraに対してIPC(Instructions Per Clock,クロックあたりの命令実行数)が平均14%向上した。

CPUコアの性能が向上

 Intelによると,競合となるAMDの「Ryzen AI 300」や,Qualcommの「Snapdragon X Elite」と比べても高い性能を発揮するそうだ。

シングルスレッドでの性能比較

 また,Core Ultra 200Vは,Intel製CPUで長年採用していた「Hyper-Threading」を採用していないことも大きな話題となった。Hyper-Threadingは,IPCの向上を実現する一方で,消費電力が増えるというデメリットもあった。電力効率を重視するCore Ultra 200Vでは,Hyper-Threadingを採用しないほうが良いという判断になったのだろう。

 E-coreのSkymontでも改善が行われており,Core Ultra比で,シングルスレッドの浮動小数点演算性能が38%,マルチスレッドでの整数演算性能が68%向上した。

 Core Ultraから引き続き搭載するNPUは,演算器の増加などにより,大幅な性能向上を実現した。NPU単体の演算性能は,下位モデルでも40 TOPSとなっており,Microsoftが提唱する薄型ノートPCのブランド「Copilot+ PC」の要件をクリアしている。Intelは,AI処理の性能でもSnapdragon X Eliteを上回るとアピールする。

Core Ultraをベースとした,Core Ultra 200VとSnapdragon X Eliteの性能比較

 Core Ultra 200Vでは,統合GPUの世代更新も大きな見どころの1つだ。マイクロアーキテクチャに最新世代の「Xe2」を採用しており,Core Ultraの統合GPUと比べて,性能が平均1.3倍に向上したという。

Xe2の概要

 Intelが公開したデータでは,ゲーム用途においてCore Ultra 200Vは,Ryzen AI 300と比べて平均16%,Snapdragon X Eliteと比べて平均68%高い性能となっている。Snapdragon X Eliteでは「DNR」(おそらくDo not Run)というタイトルも多く,x86系CPUの優位性を示したい考えもうかがえる。

ゲームにおけるCore Ultra 200VとRyzen AI 300の性能比較。Minecraftなど一部のゲームで,Ryzen AI 300が上回るものの,おおむねCore Ultra 200Vのほうが高い性能を示している

Core Ultra 200VとSnapdragon X Eliteの性能比較。動作しなかったゲームを除いて,Core Ultra 200Vのほうが平均68%高い結果となったそうだ

 また,Intelの超解像技術「XeSS」にも,Xe2向けのアップデートが行われており,XeSSの有効時でゲームのフレームレートが最大60%向上するそうだ。XeSSに対応したゲームタイトルは,本稿執筆時点で120を超えるとのこと。

XeSS対応ゲームタイトル

XeSS有効時と無効時の性能比較

 薄型ノートPCに特化した設計となっているCore Ultra 200Vが,ゲーマー向けノートPCに採用されるケースはあまりないだろう。ただ,MSIの「Claw 8 AI+」のような携帯型ゲームPCでの採用例が増えるかもしれない。

 Core Ultra 200Vを搭載したノートPCは,AcerやASUSTek Computer,Dell Technologies,Lenovo,HPなどの各メーカーから登場し9月24日から販売を開始する予定だ。Intelの資料ではサードウェーブやマウスコンピューター,ユニットコムといったメーカーも確認できるので,国内でもさまざまなCore Ultra 200V製品が登場するだろう。薄型ノートPCの購入を検討している人は,こうした製品の情報もチェックしておこう。

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