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[プレイレポ]「サガ エメラルド ビヨンド」綱紀編,ディーヴァ編,アメイヤ編の序盤を紹介。バトルはTL上の駆け引きと連携を組む楽しさが両立
スクウェア・エニックスから2024年4月25日の発売が予定されている「サガ エメラルド ビヨンド」の先行プレイレポートを掲載する。本作のバトルは,「スカーレット グレイス」で生まれたタイムラインを使った駆け引きに,連携を組み立てる面白さを融合させた新しいシステムになっている。
[2024/04/03 20:00]- キーワード:
- PC:サガ エメラルド ビヨンド
- PC
- RPG
- CERO B:12歳以上対象
- スクウェア・エニックス
- ファンタジー
- プレイ人数:1人
- PS5:サガ エメラルド ビヨンド
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- Nintendo Switch:サガ エメラルド ビヨンド
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- PS4:サガ エメラルド ビヨンド
- PS4
- iPhone/:サガ エメラルド ビヨンド
- Android:サガ エメラルド ビヨンド
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- プレイレポート
- ライター:高橋祐介
なお,本稿の執筆中,本作のセーブデータの上限数は100個(オートセーブを含む)であることが判明してしまった。なかなか他に類を見ない多さだが,主人公による展開の違いや各ワールドにおける選択,システムに関する疑問などを探っているうちに,筆者は100個に達してしまい,やむなくセーブデータを整理することになった。
それでも「エメラルド ビヨンド」を遊び尽した感覚はあまりなく,その事実には驚くほかない。
ちなみにセーブデータはキャラクターやトータルクリア回数ごとに分類されているため,整理自体はスムーズに行えたことを付け加えておく。
1回,2回のエンディングを迎えたくらいでは
戦いの「手札」は揃わない
いきなりエンディング以降の話から入るのは不思議な感じだが,本作はクリア後の引き継ぎ要素に関するオプションがとても充実している。というのも,選んだ主人公によっては5〜6時間ほどでエンディングを迎え,その場合はラストバトルの相手もこちらの戦力に見合ったものになる。
とくに“早解き”を意識したわけではなく,しっかりとストーリーを辿り,強敵は試行錯誤の末に突破するという普通の遊び方でそうなったので,各要素を引き継ぎながら何周も遊ぶことを想定したゲームデザインだと思われる。
もちろん,周回を重ねず,繰り返し戦えるスポットでキャラクターを成長させてもいい。そこはプレイヤーの自由だ。
また,詳しいところは実際に遊んで確かめてほしいが,ストーリーも繰り返しクリアすることを前提にした構成である。
そして2周目以降だが,いわゆる「強くてニューゲーム」というわけでもない。バトルランク(敵の強さ)はすぐに上昇し,中盤以降はこちらに見合った強さの敵が出現する。
バトルランクを引き継ぎ,初めて選ぶ主人公をプレイした場合には,序盤から全滅に追い込まれることも珍しくなかった。これは勝って当たり前のバトルが物足りない人にとって,最高の「おもてなし」だろう。
そんな緊張感あるバトルのカギは,前回のプレイレポートでも紹介している2つの要素だ。敵と味方の行動順を示す全12コマのタイムライン(以下,TL)上で,味方の行動順と技(および術)の連携範囲をつなげる「連携」と,技の前後2コマを空け,かつ連携させないことで成立する「独壇場」である。
これらはプレイヤーが意図的に作り出すものであり,従来のシリーズ作品における連携のように「偶然,成立する」ことは少ない。
技にはターン開始時に決まる行動順で出せる技,より早く出せる技,遅く出せる技があり,パーティ全体で技をやりくりして行動順を調整し,連携や独壇場を生み出していく。
連携は技の威力が上がるだけでなく,命中率が100%になることも大きなメリットだ。単発で出した技はそこそこの確率で回避されてしまうため,確実にダメージを与えるためには最低でも2人による連携を作りたいところ。
そして,BP(技や術を使うのに必要なパーティ共有のポイント)が余ってもあえて使い切らず,防御を固めておくほうが有利な場合もある。
連携や独壇場を成立させることが勝利に直結するだけに,味方や敵の行動順に介入できる「バンプ技」「リザーブ技」の重要性は,前作「サガ スカーレット グレイス」よりも高いと言える。敵をTLの後方に動かすバンプ技で連携範囲からどかし,連携を成立させるのは基本中の基本となるテクニックだ。
リザーブ技には複数の種類があり,相手の行動の直後に割り込むチェイス技,相手の行動の直前に割り込むインタラプト技,相手の行動を受けて反撃するカウンター技などがある。敵の連携の途中にチェイス技やカウンター技で割り込めば連携を寸断し,敵の独壇場が成立しそうな場合でもインタラプト技を合わせることで阻止できる。
ちなみに,リザーブ技は敵側も使用することがあり,TL上では「???」と表示される。銃などの飛び道具(正確にはリザーブ解除の属性を持つ技)で解除することが基本的な対策だが,銃(正確には突属性)に反応するインタラプト技もあるため,慎重さが求められる。
もっと突き詰めていくと,どの敵がどのリザーブ技を使うのかを把握する必要がある。
こうした複数のファクターを考慮しつつ,毎ターンの使う技や行動順を組み立てていく。
これが本作のバトルである。TLとBPが絡むバトルの駆け引きを前作から引き継ぎ,連携と独壇場を加えたことで,さらに先が読めないスリリングな戦いが生まれたわけだ。
効果的な連携を組み立てると追加連携「オーバードライブ」が発生し,敵にさらなるダメージを与えられるため,4連,5連といった大きな連携を狙いたくなる。だが,敵の行動順にも注意を払わないと,敵側の連携や独壇場が成立して思わぬ反撃を受けてしまう。
また,せっかく発生させたオーバードライブが必ずしも有利に働くとは限らない。意図しないバンプ技や,敵を倒したことで生まれた空白のコマにより,敵側の連携や独壇場も成立しがちだ。常に2手,3手先を読むようにしないと,思わぬ敗北を喫することになるだろう。
そして,まさかの敗北から戦訓を得て,「技欄にセットしておくバンプ技を最小限にする」「オーバードライブが不要なときは,あえて連携を小分けにする」といった対策を生み出すことも,本作のバトルの醍醐味である。
「バトルの手札」となる技や術,陣形(戦闘時のフォーメーション)を揃えるためには,それなりのプレイ時間が必要だ。遊び方によって入手できるタイミングや順番もまちまちのため,プレイヤーはそれぞれ独自のセオリーで戦うことになるだろう(とくに発売から間もないうちは)。
たとえば,先頭に立つキャラクターに攻撃が集中し,初期BPも高い陣形「デザートランス」は,敵の攻撃を防ぎながら強力な反撃を行うカウンター技と相性がいい。
ただ,プレイヤーが選択した主人公によって,陣形と技が揃うタイミングはバラつきが生じるため(むしろ,揃うほうがレアケースかもしれない),「カウンター技よりインタラプト技がダメージ源として確実」「開幕からリザーブ技を使うより,2連携を狙ったほうがいい」といった,多様な“持論”が生まれることだろう。
実際,どんな戦い方も状況次第で正解になることも,通用しないこともある。ひとつの戦い方に固執せず,手持ちの技や陣形の使い方を考えたり,実際に試したりして,対応できる状況を増やしていくことがバトルを楽しむためのコツだ。
ほかにも,「片手剣や片手銃は連携をオーバードライブに発展させやすい」「両手剣や両手銃は独壇場で強い」「ステータス異常を発生させる技や術は連携の阻止に便利」など,細かいコツは多数存在する。
メニュー画面にある「せんせいの試練」は,バトルの中でさまざまなテクニックを試し,報酬を得られるコンテンツだ。報酬は武器や防具を強化するための素材がメインなので,しっかりと取り組めば早い段階から強力な装備を作りやすい。バトルの深みにハマりたい人は,ぜひチャレンジしてみよう。
試練の中にはあまり実用的でないものもあり,また試練を達成しやすいバトルに何度も再挑戦するといったことにもなりがちだが,そのあたりはせんせいのすることであるから,どうか大目に見ていただきたい。
また,強化素材や装備を取引する「トレード」の要素もあり,これを繰り返し行うと流通のランクが上がり,より質のいい品を入手できるようになる。放置していると装備の強化が頭打ちになるので(実際,装備をほぼ更新できない周回もあった),トレードは意識しておきたい要素だ。
ある程度,強い敵を倒せるようになり,バトルランクが上昇すると,敵の毒攻撃とターン経過による毒のダメージで一気に瀕死に追い込まれたり,ターン開始時にTLの端に敵の連携ができていて,味方の行動順だけでは崩せなかったりと,少々理不尽な展開も増えてくる。
ただ,リザーブ技が揃えば敵の連携を阻止しやすくなり,たとえ味方が数人やられても,残るメンバーの独壇場で逆転できることも多い。ごくたまに本当にどうしようもない場合もあるが(!),ほとんどの場合は戦いの中で勝ち筋が見つかるので,さまざまな手を試してみることが肝心だ。
また,本作はそうした心構えで遊ぶと,より楽しめるゲームでもある。
色とりどりのタイルを集めるうちに
大きな一枚の絵が見えてくるような物語体験
前述のとおり,本作のストーリーは繰り返しプレイすることが前提の構成だ。17のワールドにはそれぞれ印象的な存在が待っており,それらをつなぐ連接世界にも強大な敵がいるようだ。
そして「彼ら」はおそらく一枚岩ではなく,全容を把握するには複数の主人公で幾度もエンディングを迎える必要があるだろう。あるいは,それでも納得のいく答えは得られないかもしれない。
各ワールドで展開する物語も,そこを訪れた主人公の違い,ワールド内での行動によって,展開が分岐していく。前回とは異なる選択をすると,展開が変わることが多く,簡単には底が見えない。
また,ある周回では真意を隠していた人物が,別の周回では状況の変化によって態度や行動を変えたりもする。同じ登場人物でも発言内容が大きく変わり,最後に待ち受ける出来事が変化しがちだ。
おそらくそれは,主人公たちが運命の流れを可視化したような「翠の波動」を辿っていく物語においても,「あらかじめ定められた運命」なんてない――ということなのだろう。
17の世界をすべて巡るだけでも20〜30時間はかかるボリュームなので,すべての物語を知るには相応の時間と覚悟が必要だ。ワールドによって濃淡はあるものの,想像をはるかに超えた展開も待っている。ぜひ時間をかけて,ゆっくりと周回を楽しんでほしい。
三角形機関で発展する世界「ヴェルミーリオ」,生きとし生けるものすべてがエプイケの加護を受ける世界「カマラ」,混沌の軍勢との戦争を続ける「ブライトホーム」など,固有のギミックやパズル要素を持つ世界も多く,それらの結果が物語の行方に関わるような感覚がある。筆者はファミコン時代のRPGを思い出して懐かしくなったが,逆に新鮮に感じる人もいるはずだ。
またワールドによっては,ヴァッハ神や最終皇帝など,シリーズファンが思わずニヤリとするワードやネタが見つかることもある。大統領選挙真っ只中のワールド「キャピトルシティ」のニュース番組には天気予報のコーナーがあり,天気図の地形が「ロマンシング サ・ガ」の舞台,マルディアスと同じだったりする。よく見ると,番組のセット自体も地球儀のように曲面で描かれたマルディアスそのものだ。
本作の主人公である警官のボーニーはローザリア系,相棒のフォルミナはクジャル系の血筋なのか……なんて連想もしてしまった。
さて本稿の結びとして,前作(正確にはその移植版)「サガ スカーレットグレイス 緋色の野望」のオープニング映像になぞらえながら,本作の感想をまとめてみたい。
オープニング映像は,ビザンツ様式のモザイク画と古代エジプトの壁画をミックスしたようなビジュアル,詩的なテキスト,そして主題歌「砕かれし星」によって,作品の世界観が示されている。
十二星神の導きで邪神ファイアブリンガーと戦った「帝国」の興亡。分裂したかつての帝国領,そこで生きる人々の姿。運命を背負い,自らの意思で歩んでいく4人の主人公。
それらが次々に映し出されたあと,実は一連のビジュアルが巨大なモザイク画の一部であることが判明する。別々の絵がまとまることで,ひとつのストーリー,あるいはヒストリーが立ち上がってくる。
「エメラルド ビヨンド」をプレイした感想も,この映像とどこか似たところがある。それぞれの周回の物語やバトルはモザイク画の一部分でしかないが,遊び続ければいつか全体像が「見える」瞬間が来るだろう──そんなことを考えながら,ゲームを続けてしまうのである。
本作には現代のゲームに求められがちな,はっきりとした導線は存在しない。初心者を呼び込むようなキャッチーさにも欠けるかもしれない。
だが,タイルの一片一片を探(サガ)し集め,モザイク画を組み立てるようなロマンに満ちている。こうした感覚を理解できる人であれば,膨大な探求の旅を大いに楽しめるだろう。
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