ByteRockers'Gamesが開発中の「Solnox: Grimoire of Seasons」(以下,Solnox)が,ドイツのゲームショウ「gamescom 2024」に出展されている。ByteRockers' GamesのマーケティングマネージャーであるMaximillian Graustein氏に本作の詳細を説明してもらったので,その内容をお伝えしよう。


 「Solnox」は,いわゆるデッキ構築型ローグライクゲームだ。プレイヤーは3人のキャラクターを操り,春夏秋冬の4つの季節と「腐敗」と呼ばれる5つ目の疑似季節を戦略的に活用しながら戦う。本作最大の特徴は,季節による戦略性と3人のキャラクターを1つのデッキでコントロールするシステムにある。

 ゲームの進行は「Slay the Spire」風のノード型マップを採用しており,プレイヤーの選択がその後の展開に大きく影響する。約200種類のカードを駆使してデッキを構築し,多彩な敵と対峙していく。


 「Solnox」の核となるのは,季節システムだ。各季節は戦略に直接影響を与え,例えば冬の地形ではカード使用時に防御力が上昇し,「腐敗」の地形ではダメージを受ける。季節は基本的にターン終了時に変化するが,特定のカードを使用することで意図的に変更も可能だ。この季節の変化を読み,有利に立ち回ることがゲームの醍醐味となる。

 このシステムは,プレイヤーに先を読んだプレイを常に要求する。現在の季節,次に来る季節,そして自身の手札を考慮しながらプレイする必要があり,これが高度な戦略性につながっている。1つのカードプレイが,単にその効果だけでなく,次のターンの環境まで変えてしまうため,プレイヤーは常に「意思決定の連鎖」を意識しなければならない。


 プレイヤーが操作するのは,タンクローグ魔法使いという3人のキャラクターだ。これらのキャラクターを1つのデッキでコントロールする点が特徴的な要素になっている。各キャラクターは固有のカードプールを持ち,それぞれのプレイスタイルを反映している。

 デッキは基本カード,季節カード,キャラクター固有カードの3種類で構成され,プレイを重ねるごとに新しいカードがアンロックされていく。自分のプレイスタイルに合わせたデッキカスタマイズも可能で,戦略の幅は大きく広がる。

 このシステムにより,プレイヤーは単にカードの組み合わせだけでなく,キャラクター間のシナジーも考慮してデッキを構築する必要があるという。状況に応じて最適なキャラクターを前面に出し,そのキャラクターの強みを生かしたカードを使用するという選択が,ゲームプレイに深みを与えている。


 敵キャラクターも本作の魅力の一つ。4つの敵勢力から全33種類の敵が登場し,中でも注目すべきは「腐敗」を広げる能力を持つ敵だ。これらの敵は戦場に「腐敗」の地形を作り出し,プレイヤーを不利な状況に追い込む。

 しかし,「腐敗」は単なる障害ではない。うまく利用すれば強力な武器にもなる「諸刃の剣」としての側面を持ち,これを戦略的に活用することで,より有利に戦いを進められるのだ。「腐敗」の地形はプレイヤーにダメージを与えるが,同時に敵にも影響を与えるため,これをどう扱うかが戦略の鍵になる。

 このシステムにより,戦場は常に動的に変化するので,プレイヤーは環境に適応しながら戦略を立てる必要があり,これがゲームに高いリプレイ性をもたらしているそうだ。


 「Solnox」のゲームデザインで特筆すべきは,複雑なシステムを直感的に理解可能な形で提示している点だろう。季節システム,マルチキャラクターシステム,「腐敗」システムは,それぞれが深い戦略性を持つが,視覚的にも理解しやすい形で実装されている。

 プレイヤーは基本的なルールを理解すれば直感的にプレイできるが,ゲームを進めるにつれて戦略の深さに気付き,より高度なプレイを目指すようになるだろう。この学習曲線の設計は,新規プレイヤーの参入障壁を下げつつ,熟練プレイヤーの長期的な興味も維持する効果がありそうだ。


 カードのバランス調整も注目に値する。約200種類のカードは,基本カード,季節カード,キャラクター固有カードに分類され,これらが相互に作用する。この多様性がゲームの戦略性を高めているが,同時に特定の組み合わせが極端に強くなりすぎないよう,細心の注意を払ってバランス調整がなされているという。

 「Solnox」の開発では,「季節」というコンセプトをゲームプレイに深く組み込むことに注力したそうだ。各季節が戦略に直接影響を与えるシステムは,本作最大の特徴として設計された。この実装には,ゲームエンジンのカスタマイズや独自のシミュレーションツールの開発など,技術的な挑戦も多かったという。


 特に,3人のキャラクターを1つのデッキで制御するシステムの実装は,従来のデッキ構築ゲームのフレームワークでは対応しきれない部分があったそうだ。これに対し,ByteRockers'Gamesは独自のカードゲームエンジンを開発し,複数キャラクターの同時操作を可能にした。

 開発中の課題は「腐敗」システムの調整だったそうだ。当初は単なる厄介な要素として実装されていたが,テストプレイを重ねる中で戦略的に活用できる可能性が見出された。これを受けて「腐敗」は再設計され,ゲームプレイの深さを大きく増す要素となった。この柔軟な開発姿勢が,「Solnox」の独自性を生み出したと言える。

 「Solnox」のストーリーは,3人のキャラクターが世界を蝕む「腐敗」の根源を突き止め,打ち倒す冒険を描く。各ノードでのイベントやバトル後の会話シーンを通じて徐々に物語が明かされていく仕組みだ。

 注目すべきは,このナラティブ構造がゲームプレイと密接に結びついている点だ。プレイヤーの選択がストーリーの展開に影響を与え,キャラクター間の関係性を変化させる。キャラクターにはそれぞれバックストーリーがあり,プレイヤーの選択によって,キャラクター間の関係性が変化したり,異なるエンディングを迎えたりする可能性もある。

 これにより,プレイヤーはゲームを進めるにつれてキャラクターへの愛着を深め,より没入感のある体験を得られるそうだ。また,「腐敗」というテーマを通じて,環境破壊や人間の欲望といった現代社会の問題を間接的に扱っている点も,物語に深みを与えている。


 現在ベータ版の段階にある「Solnox」だが,プレイヤーからのフィードバックを積極的に取り入れながら,バランス調整や新コンテンツの追加が進められている。

 「Solnox」は,四季の力を操るという独創的なコンセプトと,3人のキャラクターを1つのデッキで制御するシステムで,ローグライクゲームに新しい風を吹き込もうとしている。季節の変化が戦略に直結するゲームプレイは,プレイするたびに新しい発見があり,高いリプレイ性が期待できる。

 本作のPC版は2025年にリリースされる予定だ。四季の移ろいと「腐敗」の脅威が織りなす,新たなローグライクの世界が,プレイヤーを待っている。

 Graustein氏は最後に次のように語った。「『Solnox』は,戦略性の高さとストーリーの深さを両立した,新しいタイプのローグライクゲームです。四季の移り変わりと『腐敗』の脅威が織りなす独特の世界観を,ぜひ体験していただきたいと思います。『Solnox』の世界で,あなただけの戦略を見つけ出してください!」

 ちなみに,ByteRockers'Gamesは9月に開催される東京ゲームショウに本作を出展予定だ。日本語版を展示するとのことなので,会場に行く人は実際にプレイしてみるといいだろう。

Maximillian Graustein氏。東京ゲームショウに参加するため,氏も来日予定だ




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