「ゲームをうたう」は,詩人がゲームからインスピレーションを受けて詩を作る企画です。詩人の言語によって,あなたの知っているゲームはより新鮮に,あなたの知らないゲームはより好奇心を誘う姿へと,新たに再構築されるでしょう。

 第2回は「The Cosmic Wheel Sisterhood」(PC/Switch)。魔女の集団から追放され,とある惑星に流刑となった魔女・フォルトゥーナを主人公にした,タロットがモチーフのアドベンチャーゲームです。歌人の眞鍋せいらさんが,本作からインスパイアされた新作短歌20首を書き下ろします。

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渾天すらも   眞鍋せいら

二世紀の孤独に狂わなかったのはたった偶然 今顕れよ

果たされるはずの契約それは禁忌それは軛をあらわす絆

想像もできないような過去のこと一体過去などあればだけれど

魂は円盤となり廻天す一千億の砂粒となり

心臓を魂の箱として刺せ刃を持たないこの小刀で

永劫のような闘い制すればきらきらきらと落ちてくる恋

人間のままの生だけ想う時あの日の海の流星群が

昇醒 浜辺の風は涼しくて何かへと冴え返る煌めき

花を撒くさようならって言うためになぜ死んだのって毒づきながら

ファシストの腕を逃れて東へと向かった父の名付けた我ら

もう一度とびきりの死を描いてね あんたを送ったあたしのために

別れたら会えない人の姿さえ呪われた日没になる影

征け道を 智慧と力を友として先には危険背後には謎

あたらしい自らを得る一杯のお茶に少しの記憶を混ぜて

倦んだ日のパーティーの灯を吹き消せば望み通りの魔法がかかる

あれが見える?あれが鯨座アルファ星あなたの故郷を飲み込んだ星

天球儀回せよ回せ予言するdis/asterの前兆のこと

読むのではなく書け宿命〈さだめ〉美しいガラスペンすら呑み込みながら

その意思で幾星霜を渡るとき我らはすべてさびしき魔女だ

弱き指で操〈く〉っては暴く絵札にて渾天すらも相対とせよ




■眞鍋せいら
1996年生まれ。短歌や批評を書いている。文芸サークル「夏のカノープス」同人。結社無所属。


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