スマートフォン版のEpic Games Storeは,App StoreやGoogle PlayといったOS標準のストアを介さないアプリケーションの導入を可能にする,いわゆる“サイドローディング”のストアアプリだ。EUでは2023年5月に施行された「デジタル市場法」(DMA)により,このサイドローディングが義務化されており,本アプリのローンチもまた,この流れに乗ったものと言える。
同様の動きは日本にもあって,2024年6月12日に「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」が成立。2025年内にも施行される見込みとなっている。これによりサイドローディングが義務化されれば,国内でもiOS版のEpic Games Storeが利用可能になるはずだ。
関連記事
iOS版「フォートナイト」,日本でも2025年後半に配信再開。スマホ向けソフトウェアの競争を促進する法案の可決,成立を受けて
「フォートナイト」の公式Xアカウントは2024年6月12日,同作とEpic GamesストアのiOS向けアプリが2025年後半に登場することを告知した。「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」が,参議院本会議において可決,成立したことを受けた動きのようだ。
[2024/06/13 12:56]- キーワード:
- iPhone/iPad:フォートナイト
- iPhone
- TPS
- シューティング
- Epic Games
- 協力プレイ
- 対戦プレイ
- 無料
- :フォートナイト
- :フォートナイト
- :フォートナイト
- :フォートナイト
- :フォートナイト
- :フォートナイト
- :フォートナイト
- iPad
- ニュース
- 編集部:荒井陽介
今回の発表に先立ち,Epic Gamesによる日本のメディアに向けた合同オンライン説明会が実施された。サイドローディングによる本アプリの配信に至る経緯や,現状の問題点,および今後の展開についても語られたので,詳しい状況が気になる人はチェックしてほしい。
ついに成ったiOS版「フォートナイト」の復活。煩雑なインストール手順の強制は“違法”との見方も
オンライン説明会には,Epic GameのCEOであるTim Sweeney氏,ゼネラルマネージャーのSteve Allison氏が参加し,それぞれが今回の経緯の説明を行った。
■登壇者
Epic Games CEO:Tim Sweeney氏
Epic Games VP,General Manager:Steve Allison氏
Co-Founder,Altstore:Riley Testut氏
Co-Founder,Altstore:Shane Gill氏
CEO and Co-Founder,Aptoide:Paulo Trezentos氏
Sweeney氏は,今回の動きはEUにおけるデジタル市場法によって成立したものであり,それによってiOS版のリリースにタイムラグが生じていると説明。以後は日本を含む各地域に向けたサービスを展開していく予定と語った。
先述のとおり,日本ではサイドローディングを義務化する法律がすでに成立しているため,うまくいけば2025年内にはリリースできると考えているようである。
リリース後には,まず「フォートナイト」「Fall Guys」「Rocket League Sideswipe」といったEpic Gamesのファーストパーティ製のタイトルで下地を作った後,2024年度末に向けてサードパーティタイトルを順次受け入れていく方針が語られた。
また,デジタル市場法の成立に合わせて動き出すのはEpic Game Storeだけではない。サイドローディングによるサービスを行う他社のプラットフォームとも連携し,アプリケーションの入手経路を広げる取り組みを行っていくという。その提携先となるのが,サードパーティ製のiOSアプリストア「AltStore PAL」と「Aptoide」だ。
AltStore PALは,iPhoneに特殊な改造(いわゆる脱獄)を施さないまま,App Storeを介さずサードパーティ製アプリをインストールできる「Altstore」を前身とするアプリストアだ。かつては“テスト用のアプリケーション”という体裁をとることで成立していたが,最新バージョンではサイドローディングによるストアとして公開されている。
その中で扱われているアプリは,App Storeの審査でリジェクト(拒否)されてしまったものが中心とのこと。例として挙げられたのは,iPad上でWindowsを動作させる仮想デスクトップアプリ,P2P形式のファイル配布システムであるTorrentを利用できるアプリなどで,確かにApp Storeでは確実にリジェクトされるだろうものばかりである。
AltStoreが生まれる切っ掛けとなった「Delta」もまた,App Storeによってリジェクトされたアプリであり,さらにその後に行われた“緩和”によって,対応を右往左往させられた経緯を持つ。そのため標準ストアによる煩雑で不透明な審査プロセスへの不信感から,AltStoreはリジェクトされたアプリの受け入れ先としての性格を強くしているのだとか。現時点では手数料を取らない形で運営されており,その点も小規模デベロッパに向けたアピールポイントになっているようだ。
Epic Gamesでは,自社が配信するスマートフォン向けEpic Games Storeとは別に,Altstore PALやAptoideに向けてもアプリケーションを提供する予定とのこと。ストアとしては競合関係にあるEpic Games StoreとAltstore PALではあるが,すでに支配的な地位にある標準ストアに対抗するため連帯していく必要性があるとSweeney氏は述べている。
またAptoideについても,日本国内向けにローカライズしたバージョンをリリースする計画も進行しており,より利用しやすい環境の構築を進めているとのことだった。
一方,サイドローディングが可能になったからといって「環境がApp Storeと同等になった」とは言い難い。iOS/Androidのいずれも,サイドローディングのアプリケーションをインストールするには複雑な手順を要求され,それが普及を妨げる障害になっているとのこと。
AppleやGoogleといったプラットフォーマー側からすれば,審査を経ていないアプリケーションの導入にはリスクがあることを通知しているだけなのかもしれない。しかし実際にEpic Game Storeをインストールしようとすると,Androidにおいては12ステップ,iOSでは15ステップもの操作が必要とされ,その間にはいくつもの警告画面――利用者の恐怖を煽るという意味でScare Screenと呼ばれる――が表示される。Epic Gamesとしては,これを“意図的な妨害行為”と考えているようである。
スマートフォン版のEpic Games Storeは,2024年末までに1億人の新規ユーザー獲得を目標としているとのことだが,Riley Testut氏は「目標達成に到達するにあたっての最大のハードルはインストールの煩雑さだ」と語った。Testut氏は,インストールにかかる「いくつかのステップは意味が分かる」としながらも,利用者の心を挫くような執拗な確認作業を強いて,導入までのハードルで差を作るのは違法であるとの認識を示している。
この問題の解決は,アメリカで展開されているEpic GamesによるGoogleに対する訴訟の結果,およびEUが現在行っている調査の結果によって,その可否が問われることになる。Testut氏は「我々は特別扱いを求めているのではなく,同じフィールドで競争することを求めているに過ぎません」とも語っていた。
また,クラウドゲームサービスによってプラットフォームの垣根を越える試みについては,「正直言ってまったく成功していない」との発言もあった。フォートナイトは現在,「GeForce NOW」や「Amazon Luna」「Xbox Cloud Gaming」といったサービスで利用可能だが,これらを介して遊んでいる人は,全プレイタイムの1%に過ぎないという。そういった事情もあり,スマートフォン上に直接インストールできるネイティブアプリの形式にこだわっているようである。
なおマルチプラットフォームによるクロスプレイを実現する都合上,スマートフォン版Epic Games Storeで遊べるようになるタイトルのゲーム内容は,既存のものと同様になる。当然ながらアカウントは同期できるので,すでにほかのプラットフォームで遊んでいる人は継続してプレイ可能とのことだった。
またサードパーティ製のタイトルが充実した暁には,PC向けのEpic Games Storeと同様のさまざまな施策を行っていくそうなので,そちらにも期待しておこう。
以上で今回の発表は終了となった。リリースまでこぎつけたのは大きな一歩ではあるものの,まだ解決できていない問題は少なくない。スマホアプリの入手経路が増え,市場が開放されるのは良いことではあるものの,真の意味でプレイヤーに“自由”がもたらされるのは,まだ少し時間がかかりそうである。
そのうえで,フォートナイトをはじめとする人気タイトルが,スマートフォンに戻ってくるのは素直に喜ばしい。これから状況がどう変わっていくか,まだまだ注視する必要はあるだろうが,この機会にサイドローディングによるアプリケーションのインストールに挑戦してみてもいいかもしれない。
<以下,メーカー発表文の内容をそのまま掲載しています>
Epic Games Storeのモバイル版が登場
『フォートナイト』、『Fall Guys』、『Rocket League Sideswipe』がiPhone版とAndroid版のEpic Games Storeで入手可能になるほか、さらにAltStoreにも登場
本日より、Epic Games StoreがiPhone版は欧州連合で、Android版は全世界でダウンロード可能となります。 Epic Games Storeは『フォートナイト』、『Rocket League Sideswipe』、新登場のモバイル版『Fall Guys』とともにリリースされます。将来的には、すべてのデベロッパーがEpic Games Storeを通じて、ゲームやアプリをリリースできるよう取り組んでいます。 さらに、本日配信を開始するAltStoreを皮切りに、今後当社のゲームは独立系モバイルストアでも提供されます。
■iPhone版Epic Games Storeが欧州連合で、Android版Epic Games Storeは全世界で入手可能に
Epic Games Storeをモバイルデバイスにインストールする手順は、こちら(iOSユーザー)とこちら(Androidユーザー)をご覧ください。ファーストパーティゲームの詳細については、『フォートナイト』、『Fall Guys』、『Rocket League Sideswipe』のブログをご覧ください。「フォートナイト バトルロイヤル」のチャプター5 シーズン4: アブソリュート・ドゥームは本日配信ですのでお忘れなく。こちらはモバイルと他の全プラットフォームでお楽しみいただけます。
デジタル市場法の恩恵により、iOS版Epic Games Storeは欧州連合でリリースされますが、ヨーロッパ以外のiOSユーザーに関しては、AppleによってiOS版の『フォートナイト』とEpic Games Storeへのアクセスがブロックされています。
現時点でiOSとAndroidにEpic Games Storeをインストールする場合、AppleとGoogleが、多数の手順、ややこしいデバイス設定、警告画面などで、意図的に複雑で分かりづらいインストール体験を作り出しているため、長いプロセスになっています。 Epicは、AppleやGoogleがデベロッパーと消費者に課す反競争的条件に対して法廷で粘り強く異議を唱え、誰にとってもより優れたストア体験を生み出すことを目標に、世界中の規制当局と協力してこれらの制限を撤廃するよう取り組んでいます。
■『フォートナイト』、『Rocket League Sideswipe』、『Fall Guys』がサードパーティのアプリストアに登場
私たちは、デベロッパーに有利な条件を提供するあらゆるマーケットプレイスでゲームを配信できるように、サードパーティのモバイルアプリストアと提携しています。本日より、欧州連合のiOSユーザー向けにAltStoreでゲームの提供が開始されます。また、AptoideのiOSストア(欧州連合のみ)とAndroid向けのONE storeでも、ゲームが追加される予定です。今後も、世界中のより多くのストアに拡大していくことが期待されます。
「潮目は変わりつつあり、モバイルエコシステムはついに競争に開放されつつあります。 Epic Games Storeをリリースし、欧州連合のiOSユーザーに当社のゲームを提供することを可能にした欧州委員会に感謝しています。 これにより、現在は欧州のiOSユーザーと全世界のAndroidユーザーが、PCやMacといったオープンプラットフォームと同じように、当社のストアとゲームにアクセスできます。 戦いはまだ終わっていませんが、これはデベロッパーと消費者にとって大きな前進であり、競合製品と選択肢の拡大による恩恵を受けることができます」とEpic GamesのCEO兼創立者であるティム・スウィーニーは述べています。
Androidまたは欧州連合内のiOSデバイスからさっそくこちらのウェブサイトにアクセスし、Epic Games Storeをダウンロードして、『Fall Guys』、『Rocket League Sideswipe』、『フォートナイト』のプレイを始めましょう。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。