インディーゲームスタジオ・えーでるわいすが開発した和風アクションRPG「天穂のサクナヒメ」(PC / PS4 / Switch)。2020年11月にマーベラスより発売された本作は,細部までこだわった稲作のシミュレーションパートが話題を呼び,スマッシュヒットを飛ばした作品だ。
 というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第214回のタイトルは,同作をアニメ化した「天穂のサクナヒメ」。制作はP.A.WORKS,シリーズ構成・脚本は「ラブライブ!」や「響け!ユーフォニアム」の花田十輝氏が担当。監督は「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」や「有頂天家族」を手掛けた吉原正行氏が務めている。


「天穂のサクナヒメ」


 遥か東方の果てにある「ヤナトの国」。古来よりこの地では,神々の住む頂の世と人間の住む麓の世,2つの世があると信じられていた。
 頂の世に住まう上級神のサクナヒメ(CV:大空直美)は,武神タケリビと豊穣神トヨハナを両親に持ちながらも,その恵まれた境遇に甘えてぐうたらな生活を送り,お目付け役であるタマ爺(CV:鳴海崇志)に小言をもらう毎日だった。

 そんなある日,頂の世に人間の田右衛門(たうえもん,CV:矢野龍太),ミルテ(CV:久保田ひかり),きんた(CV:前田聡馬),ゆい(CV:古賀 葵),かいまる(CV:桃河りか)が迷い込み,騒動の末,主神カムヒツキ(CV:小日向みわ)への献上物をすべて台無しにしてしまう。その騒動の責任を居合わせたサクナヒメが取ることになり,人間たち共々,鬼たちが巣喰う孤島「ヒノエ島」での鬼退治を命じられるのだった。


 荒れ狂う海の中,何とか島に到着したサクナヒメたちは,母トヨハナがかつて住んでいた家がある峠を目指す。道中,トヨハナとも縁が深いというアシグモ(CV:各務立基)が現れ,一同を峠に案内した。

 峠は結界に守られ,鬼が入ってこないが,食べるものがほとんどない。サクナヒメは,母の残した農書を頼りに稲作を開始するが,慣れない作業に悪戦苦闘することになる。加えて,食事も不十分で一向に改善しない生活と,途方もない米作りへの道のりに,サクナヒメは嫌気がさして逃げ出しそうになるのだった。



ぐうたらな女神の成長物語


 天穂のサクナヒメは,鬼と闘う爽快なコンボアクションと稲作シミュレーションを融合した和風アクションRPGだ。ぐうたらだった“駄女神”が,さまざまな試練を経て,一人前の豊穣神へと成長する姿を描いている。
 主人公のサクナヒメが鬼と戦うアクションパートと,田起こしから育苗,精米まで再現した稲作のシミュレーションパートがあり,この米の出来次第でサクナヒメのステータスが変化するという仕組みになっている。このあたりの面白さについては,こちら(関連記事)で紹介しているので,気になる人はチェックしてほしい。


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「天穂のサクナヒメ」は稲作ゲーム……そんなふうに考えているあなたに伝えたい,アクションゲームとしての面白さ

 テレビアニメが放映開始となる「天穂のサクナヒメ」は,稲作の凝りようが話題にされがちだが,アクションの爽快さも見逃せないゲームだ。「サクナヒメって米作りゲームでしょ?」と思っている人に,アクションゲームとしての魅力を紹介しよう。

[2024/07/06 10:00]
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  • PS4:天穂のサクナヒメ
  • PS4
  • CERO B:12歳以上対象
  • えーでるわいす
  • プレイ人数:1人
  • マーベラス
  • 企画記事
  • ライター:箭本進一
  • ムービー

 この稲作シミュレーション部分が世間でも話題となり,各メディアが取り上げた結果,発売から2週間後には累計出荷本数が50万本を突破し,世界累計販売本数も150万本を超えるヒット作品となっている(2024年3月9日時点)。その人気を受け,小説やコミック展開,ライブコンサート(関連記事)なども実施され,この7月にアニメ化される運びとなったわけだ。



お仕事アニメでお馴染みのP.A.WORKSが制作


 アニメ版となる本作は,「花咲くいろは」や「SHIROBAKO」など,さまざまな職種をテーマにした“お仕事アニメ”で定評のあるP.A.WORKSが制作を担当している。なんでも,同社の代表である堀川憲司氏が兼業農家であることから,相性が良いということですんなり決まったのだとか。

 監督の吉原氏は,1989年のTVアニメ「アイドル伝説えり子」からアニメ業界に携わっているベテランのクリエイターだ。今回のアニメ化に当たって吉原氏は,メインストーリーありきの構成にし,横道に逸れることなく「天穂のサクナヒメ」の物語をアニメとして一番面白い形で視聴者に届けるつもりだという。


 ただ,ゲームとアニメでは“時間”に対しての捉え方が異なるので,微妙に展開を変えているとのこと。初の稲作に失敗して,次の稲作で工夫して……とそのままやると,1年も時間がズレてしまう。そこは構成を工夫しているそうだ。
 第3話「田植唄」で早々と水田が拡張されたり,ナマズ戦が早まったりしているのは,そういった事情があったというわけ。



キャラクターを掘り下げるオリジナルエピソード


 また,ゲーム版にはなかった各キャラクターの掘り下げもアニメ版の見どころと言える。第4話「Myrthe's journey」で,ミルテがかいまるを探しに行くエピソードは,アニメオリジナルのものだ。ここではゲーム中に見れなかった,ミルテの頭巾をとった姿が披露されており,一部の“ミルテファン”を喜ばせている。


 アクションや米作りに目が行きがちだが,原作は友情や家族愛といった,人情味あふれるストーリーも人気が高い。ゲームでは語られていない各キャラクターのエピソードを見られるのは,アニメ版ならではだ。
 なお,この改編部分について,P.A.WORKSは逐一えーでるわいすの許可をとりながら,制作を進行しているとのこと。

 そんなストーリーを盛り上げているのは,いきものがたりのオープニングテーマ「晴々!」と,Little Glee Monsterのエンディングテーマ「ORIGAMI」だ。どちらも本作の持つ雰囲気にマッチした楽曲となっている。この楽曲のノンクレジット映像が公開されているので,まだ聴いていないという人は早速視聴してみよう。




農林水産省や農研機構とコラボ


 もちろん“米作り”部分へのこだわりも忘れていない。稲作の細かい工程や作業のための農具,専門用語なども専門家の意見が取り入れられている。ただし,あまりに難しすぎる用語を使わず,視聴者に分かりやすい言葉に変えているとか。
 例えば,水田に使う「緑肥(りょくひ)」は,アニメではイメージしやすい「肥やし」に変えているそうだ。このあたりは,農林水産省や農研機構とコラボしている本作ならではと言える。


 本作は,全13話での放送が予定されている。現在(8月15日)はその中盤となる第6話まで放送され,ゲームをプレイした人はもちろん,そうでなかった人からの評判も上々だ。
 ここまでの放送で,登場キャラクターそれぞれの立ち位置が明確になってきた。果たして,“チームサクナヒメ”は米を収穫し,鬼たちを一掃できるのか。彼女たちの活躍に期待しよう。



放映データ
2024年7月〜
毎週土曜23:00〜テレビ東京ほか
キャスト
サクナヒメ:大空直美
ココロワヒメ:衣川里佳
タマ爺:鳴海崇志
田右衛門:矢野龍太
ミルテ:久保田ひかり
きんた:前田聡馬
ゆい:古賀 葵
かいまる:桃河りか
カムヒツキ:小日向みわ
アシグモ:各務立基
石丸:亀山雄慈
スタッフ
原作:えーでるわいす
監督:吉原正行
シリーズ構成・脚本:花田十輝
副監督:藤井康雄
キャラクター原案:村山竜大
キャラクターデザイン:藤嶋未央
総作画監督:水野紗世
美術監督:神山瑤子
色彩設計:中野尚美
3D監督:市川元成
撮影監督:並木 智
編集:?橋 歩
音響監督:明田川仁
音楽:藤澤慶昌
OP:「晴々!」いきものがかり
ED:「ORIGAMI」Little Glee Monster
制作統括:堀川憲司
ラインプロデューサー:相馬紹二 伊藤翔太郎
アニメーション制作:P.A.WORKS
(C)えーでるわいす/「天穂のサクナヒメ」製作委員会

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