あるとき、王は呪いによってニワトリの姿に変えられてしまった。

 「自分は王だ」と叫んでも、信じてくれる人はいなかった。

 途方に暮れる、王。

 そんなとき、ひとりの騎士が王の前に現れた。

 騎士・ドンキホーテは、王を守る盾となると言うのだ。

 ドンキホーテは、王の呪いを解くために王を背負って走りだす。

 王とドンキホーテは、まだ知らなかったのだ。

 これから始まるのは、壮大で過酷な命を賭けた冒険だということを……。

ウソです!!

 なんてマジメなノリは、本作にはない。ウソから始めて恐縮ですが、本記事はGRAVITYの提供でお送りいたします。

 PUMPKIMが開発を手掛け、GRAVITYより発売される『ALTF42』は、2023年3月31日より早期アクセスを開始。そして2024年6月5日、ついに製品版がリリースとなる。対応ハードはPC(Steam)。

 タイトル名がややこしいので解説しておくと、前作『ALTF4』が存在し、その続編なので『ALTF42』(ようは“ALTF4 II”)ということ。

 WindowsのショートカットキーにAlt+F4が存在し、これはアプリケーションを終了するためのもの。つまり“思わずゲームを閉じたくなる”、そんなゲームになっているわけだ。

 本記事では製品版バージョンを遊んでのレビューをお届けしよう。

なんだこのゲーム……?

 筆者は前作を遊んでおらず、予備知識もゼロ。遊び始めると主人公がダッシュやジャンプなどができることはすぐにわかった。が、どんなゲームなのかまではよくわからなかった。

ラグドールを発動すると、空中制御ができなくなるが、落下ダメージを食らわないなど、操作やルールのなんとなくのチュートリアルを受けられる。
しかしこの時点では、どんなゲームなのかわからない……。

 そして物語が始まり、ステージ中を自由に歩き回ることに。中世ファンタジーな世界観かと思いきや、ホットドッグやガムボールマシンが置かれていたりと世界観の把握に戸惑い始める。

 大きな城があったので向かってみると、そこにはミニガンが置かれていた。無理やり突破してもただバナナが置かれているだけ。

 「……なに、このゲーム?」。

 何も知らずに遊び始めた人は、きっと意味不明な状況を飲み込めず、なんなら行き先も伝えられないので、ここでゲームをやめることもあるかもしれない。

一見、王道の中世ファンタジーなのだが、コインが浮かんでいたりとよくわからない。
ふむ。落下するとゲームオーバーのようだ。“死にゲー”かな?
水に落ちると専用のカットインも。
なんだろうこの生物……。
ホットドッグを食べる牛……。
道は封鎖されているというので先へ行くと……。
ミニガンに撃たれる。なぜ?
突破してみると、バナナが置かれていた。それだけ。

 なんとかストーリーを進めていくと、王の呪いを解くには「約9000万ゴールド払え」と言われる。そしてドンキホーテは、王とお金集めの旅に出かけるのだった。

 「旅が始まるとはいえ、何をするゲームなんだ?」と考えながら遊んでいると、突如目の前にジャンボジェット機が飛来。墜落して、橋が崩落する。いやもう、意味がわからない!

わからないなりに物語を進めていく。
なるほど。王のためにお金を集めるゲームか。
飛行機……?
墜落した!? なんなんだ!?

リトライ必至のジャンプアクション!

 そしてここから、ようやくゲームの本番が始まる。足場の細いフィールドを見てピンと来た。これは、難度の高いジャンプアクションだ(“精密プラットフォーム”というジャンル名で呼ばれることも)。

 プレイヤーは主人公を操作してステージのゴールを目指す。道中には足場の悪い場所やトラップが多々あり、落下したりダメージを受けすぎるとゲームオーバー。ステージの最初に戻されてしまう。

あぁ、そういうゲームか! 足場を伝ってリトライするタイプのゲームだ!
落下したり体力を失えば……。
またスタート地点。死亡回数もカウントされる。

 高難度のジャンプアクションを何度も何度もリトライしながら、攻略法や道筋を覚えたり考えていき、困難を乗り越えていこう。

 初見殺しな地形も多く、なかなか前に進まない。きっと最初はイライラするだろうし、ステージの序盤でもうこのゲームを“Alt+F4”したくなってくるかもしれない。

 しかし遊んでいくうちに、やはり操作に慣れたりコツを掴み始めると、これが案外楽しい。何10分も掛けて攻略していたステージの難所が、やり直しているうちにどんどん一発クリアーできるようになるのだ。この腕前の上達を自分で感じられることこそが、本作最大の魅力だと感じた。

 ジャンプ中の移動操作で空中制御がかなり効き、ダッシュやオブジェクトの利用で慣性が乗るので、長距離ジャンプなども可能だ。本作は崖つかみはなく、すべて足もとに足場がないと乗れないスパルタ仕様。精密操作で足場を飛び越えていこう。

 ダッシュやジャンプ以外にもアクションはあり、それが狙いをつけたうえでのてニワトリの投擲。敵が出るのでそれを倒すために使ったり、オブジェクトの破壊などに利用する。ニワトリを投げること自体はそんなに重要ではないので、ちょっとしたアクセントになっている。

 ちなみに、驚くような演出も用意されている。筆者は慣れないうちに何度も何度もスタート地点に戻され、イライラが募って「なんだよこの演奏家たち!」と、演奏している人に理不尽な八つ当たりをしてしまった。すると、なんとBGMが変わったのだ。「そんな仕様もあるのかよ!?」と、ちょっとした気遣いに気遣いにイライラも吹っ飛んでしまった(で、またすぐにイライラし始める)。BGMはどれもかなり秀逸で、何度も何度もリトライする気分を和らげてくれる。

音楽隊に八つ当たりすると、BGM変更ができる。すまん八つ当たりして。

思いのほか見えてくる“やさしさ”

 何度もリトライする高難度なゲームだが、じつを言うと初心者にかなりやさしい。この手のゲームは“失敗するとスタート地点に戻される”ことが多々ある。しかも、非常に長~~~いひとつのステージの最後の方でミスって、スタート地点に戻されるというパターンも多い。

 しかし、本作はステージ制であり短いスパンで区切りが付けられているため、ミスをくり返しても楽しく遊べる。筆者はファーストステージで50回死んだが1時間前後で終わることができた。失敗したらまた1時間掛けてリトライポイントに戻る、みたいな途方もないゲームではないのでそれなりにカジュアルだ。

 また、コインを集めるとお助けアイテムを買うことができ、アイテムを使用して正規ルートをスッ飛ばすことも可能。消費アイテム(一部はステージに残り続ける)なので頻繁には使えないが、「ここ苦手なんだよな」みたいなポイントで使うと攻略しやすいだろう。

 たとえば、二段ジャンプが可能になる“ブーツ”や、滑空移動ができるようになる“パラシュート”など、うまく使えば大幅ショートカットが可能だ。

 体力回復アイテムもあるのだが、命が軽い本作では正直言ってハズレアイテムに近い。が、持っておけば予想外に場面で体力が減ったときにいつか役立つこともあるかも。

 そして、アイテムショップの品揃えはランダムなので厳密に選ぶことができない。アイテムは買うたびにリロールされるシステムなので、何度も買い直すはめになり、目当てのアイテム以外も必然的に手に入ってしまうだろう。

コインはアイテム購入に使う。
アイテムを消費してガチャもできるが、当たらないこともある。理不尽。

 とくに有用アイテムが“セーブ”だ。アイテムのひとつとしてセーブの看板を立てるというもので、ゲームオーバーになったときの復活ポイントを自分で設定できる。

 アイテムとはまた異なるのだが、隠し要素して風船が飛ぶときがあり、それをニワトリを投げて破壊すると、セーブの看板が落ちてくる。その後、看板に触れると、そのポイントをセーブできる。前者は自由なセーブ機能で、後者はゲーム側が用意したチェックポイントといった感じ。

 どちらも復活すると1度セーブした効果は消えるので、1回限りではあるがチェックポイントというか、ゲームオーバーになったときの保険に使用できる。すべてがすべて、スタート地点に戻るわけじゃないので、ここは少しだけやさしい(それでもあらゆる仕様が、ちょっとイジワルだけど)。

セーブアイテムで、セーブの看板を呼び出す。セーブはやさしいっちゃやさしいのだが……。
アイテム版のセーブ看板は、呼び出したときにズドンと勢いよく落ちて来る。回避しないと、状況によっては押された勢いで死んでしまうのだ。ちょっとやさしくない!
盾のアイテムは強力で、投げて刺した場所が足場になる。何枚も重ねれば大幅ショートカットも狙えるが、コスパは悪い。

 また、アイテムは空中を飛来する謎の生物にニワトリをブツけたり、ダンボール箱に触れることで手に入ることもある。慣れないうちはアイテム探しをする余裕なんてないと思うが、次第にそれが楽しくなってしまい、アイテムを取るために難関ルートを選んだりする自分に驚いた。

自分の成長が、目に見える楽しさ

 プレイしていくとだんだん感じるのは、本作はそこそこ“道筋が自由”に作られていること。ステージの各スポットは一見「この足場が正規ルートですよ」みたいな見た目をしているが、じつはダッシュジャンプでショートカットできたり、細かな操作をせずとも攻略できる方法、じつはジャンプしなくても乗れる場所など、非常に幅広い攻略法が用意されている。

 おそらく意図して用意している部分で、「あんなマジメに攻略してたのに、こんなことで済むのか!」と発見したときにはとてもうれしくなるだろう。

 それらの具体例をあげると、ある意味ネタバレになるのがもどかしいところ。一例を挙げておくと、スタート地点は木などで作られた落とし穴。それをチマチマとジャンプして攻略してもいいのだが、じつは手前にあるトラップを駆使すると、大ジャンプで大幅ショートカットできる。

もはや見慣れたステージ1のスタート地点。
トラップのはずの板に乗ると……。
押されると同時にジャンプ!
ビョーンっと飛び上がって……。
落とし穴地帯を大胆カット。しっかり進めるように設計されているので、意図的に用意されているものだろう。

 一歩一歩進むのではなく「ここはロングジャンプで渡れるな」など、手や感覚が慣れ始めると次第に攻略のしやすさがグンとアップ。のちのステージにも役立つところで、1~2ステージ目をクリアーすると、あとはサクサク進んでいける印象だった。

 序盤はたしかにAlt+F4でゲームを閉じたくなるのだが、自分の経験値によりゲームを攻略しやすさが確実に上がっていくのは、アクションゲームのある意味原体験であり、とても心地がよく、序盤に感じた印象よりもはるかに爽快感のあるゲームだった。

世界観はずっと謎。
誰なんだ。
クリアーすれば、つぎのステージに移行できる。

 なお、本編のステージだけでなく“攻城戦”というタイムアタックステージもあり、オンラインランキングでクリアー速度を競えるものもある。

2ステージ目からも謎世界観はそのまま。
自転車(馬の鳴き声がする)で爆走するシーンもある。
ちなみに隠しコレクション要素として、コスチューム変更がある。

 ひとりで遊ぶのももちろんいいが、やはりこの手のトライ&エラー前提のゲームは、とくにゲーム配信者にオススメしたい。ちなみに前作はインフルエンサーやストリーマーがきっかけで話題を集め、そして本作につながった経緯もある。価格も920円[税込]とかなりお手ごろなので、気になる人はぜひ購入してみよう。

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