――いきなりですが,あなたが「マリオ」と聞いて思い浮かべるビジュアルは以下のどれでしょう?

左上から,「マリオブラザーズ」「スーパーマリオブラザーズ」「スーパーマリオブラザーズ3」「スーパーマリオワールド」「スーパーマリオ64」「スーパーマリオサンシャイン」「New スーパーマリオブラザーズ U」「スーパーマリオ オデッセイ」「スーパーマリオブラザーズ ワンダー」。なんだかWebサイトやサービスの画像認証みたいになりましたが,全部マリオです

 初めて3Dマリオが誕生した「スーパーマリオ64」以降,グッズや映画でもおなじみの“今のマリオ”のビジュアルが定まった感があるが,マリオとの出会いとなったゲームや一番好きなゲームなどによって,人それぞれで異なるマリオの姿を思い浮かべることだろう。

画像はスーパーマリオ オデッセイ

 赤い帽子にオーバーオール,大きな鼻とヒゲは基本変わらないが,たとえばスーパーマリオとスーパーマリオ3のように,同じゲーム機で出たゲームを比べてもその姿はちょっと違う。
 ゲーム機の表現能力や,個々の作品の雰囲気によって異なるマリオのビジュアルは,40年以上続くシリーズの歴史を感じさせるもののひとつだ。

左上から「ドンキーコング」「レッキングクルー」「スーパーマリオUSA」「スーパーマリオランド2 6つの金貨」。もちろんこれ以外にも,マリオのビジュアルはまだまだたくさんある

 そんなマリオのゲームのなかに,マリオのビジュアルがほぼ変わらず続いているゲームシリーズがある。紙のようにペラペラなマリオが活躍する「ペーパーマリオ」だ。

画像はペーパーマリオシリーズ1作目の「マリオストーリー」。ゲーム機の進化による解像度や表現の向上はあれど,キャラクターデザインはマリオストーリーから24年近く変わらない(以下,マリオストーリーの画像はNintendo Switch Online NINTENDO64での配信版を撮影したもの)

 そのペーパーマリオのシリーズ第2作「ペーパーマリオRPG」のSwitch版が,任天堂から2024年5月23日に発売された。
 ペーパーマリオRPGは,2004年7月にニンテンドーゲームキューブ用ソフトとして登場し,20年経った今も人気の高いシリーズ作品のひとつ。それがSwitchという現行ハードで,より遊びやすく,そして美しく豊かになったビジュアルや表現となった“今のゲーム”として楽しめるのだ。

 そんな本作の発売を機に,ペーパーマリオとはどのようなゲームで,なにがファンを魅了し続けるのかを,“今Switchで遊べるシリーズタイトル”を中心にシリーズの歩みを振り返りつつ紹介したい。

画像はSwitch版ペーパーマリオRPG
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[2024/05/23 11:00]
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どうしてペラペラなマリオが生まれたのか? 1作目「マリオストーリー」でシリーズのはじまりを振り返る


 さて,そもそもなんで紙のようにペラペラなマリオが生まれたのか
 これについては2012年12月リリースのシリーズ4作目「ペーパーマリオ スーパーシール」が発売された時期に掲載された任天堂公式サイトの企画「社長が訊く『ペーパーマリオ スーパーシール』」(リンク)で詳しく語られているので,そちらを参照しつつ説明したい。

画像はSwitch版ペーパーマリオRPG

 ペラペラのマリオを主人公としたペーパーマリオシリーズは,2000年8月にNINTENDO64向けに発売された「マリオストーリー」で始まる。
 本作はもともと,1996年3月に発売されたスーパーファミコン用ソフト「スーパーマリオRPG」に続く“スーパーマリオのRPG第2弾”として発表されたゲームだった。

画像はマリオストーリー

 すでに1990年代後半には,ゲーム雑誌やムック本などで「スーパーマリオRPG 2」という仮タイトル名で紹介されていたマリオストーリーだが,実際に発売されたのは2000年8月。最初の発表から発売までだいぶ時期が空いており,タイトル名も変わっている。そしてなにより,前作(?)に該当するスーパーマリオRPGと見た目が大きく異なる。

 当時もそう感じていた人も少なくないと思うが,こう振り返ってみるとあらためて「紆余曲折があったんだろうな」ということがうかがえる。

画像はマリオストーリー

 実際,開発を担当したインテリジェントシステムズは,ビジュアルをどういった路線でいくかで相当な試行錯誤を繰り返していたという。
 ときはマリオ初の3Dアクションで,その後のスーパーマリオの表現に大きな影響を与えた「スーパーマリオ64」が発売された時期。今後そのスーパーマリオ64と一緒に並べられるものとなるわけで,それとは違うビジュアルをどう打ち出すかで,かなり難航していたそうだ。

画像はスーパーマリオ64

 転機となったのは,当時インテリジェントシステムズの新入社員だった碧山直彦氏が,自分の趣味で何気なく作成したというイメージラフだった。
 立体的で奥行きのあるステージだが,そこに立っているキャラクターや背景はペラペラ。それは,これまでの2Dマリオとも,スーパーマリオ64で生まれた3Dマリオとも違ったものだった。

 実際のイメージラフは「社長が訊く『ペーパーマリオ スーパーシール』」の第2回(リンク)で公開されているが,これを見ると絵本のようなビジュアルは最初からできあがっていたことを感じる。

画像は現時点でのシリーズ最新作である「ペーパーマリオ オリガミキング」。碧山氏のイメージラフと見比べてみると,雰囲気が変わっていないことが分かってけっこう面白い

 そこから,スーパーマリオRPGの開発で大きな役割を果たし,以降のシリーズでもディレクションやシナリオなどに深く関わる工藤太郎氏がオブザーバーとして参加。こうしてマリオストーリーは,マリオらしさを守りつつスーパーマリオRPGのような独特のノリとストーリーを持つという,その後の自由な作風へと発展する兆しも感じられるゲームとなったわけだ。

画像はマリオストーリー
画像はスーパーマリオRPG。スーパーマリオRPGがどう独特かは,こちらの特集記事をぜひご一読を。そして2023年11月にリリースされたSwitch版をプレイしてみてください
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[2023/11/11 12:00]
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 こうしてマリオストーリーは,スーパーマリオRPGの続編ではなく,ペーパーマリオと呼ばれるゲームシリーズへとつながる,新しいマリオのゲームの形を生んだ作品となった。
 その後これにペーパークラフトや飛び出す絵本のような仕組みや遊びが加わり,また変化を繰り返しながら現在も続くシリーズへと展開していくわけだ。

「……ペーパーマリオの1作目だけど,どこにもペーパーマリオって入ってなくない?」という方,ご名答。これはマリオストーリーの海外向けタイトル名がPaper Mario(ペーパーマリオ)で,2作目から日本でもペーパーマリオという名前になったという経緯がある(画像はマリオストーリー)

 そんなシリーズの原点であるマリオストーリーは,任天堂のオンラインサービス「Nintendo Switch Online + 追加パック」に加入することでSwitchでもプレイ可能だ。
 実際にどのようなゲームなのか気になった人は,サービス内容を確認したうえで追加パックの加入もしくはアップグレードを検討するといいだろう。

画像はマリオストーリー



ペーパーマリオRPGは“RPGとしての集大成”。タイトルによってはジャンルすら変わるペーパーマリオ


Switch版ペーパーマリオRPGのパッケージ
 こうしてマリオストーリーで生まれ,その後さまざまな任天堂のゲーム機向けに展開してきたペーパーマリオだが,先ほどチラっと伝えたとおり“変化を繰り返しながら”現在も続いているシリーズでもある。

 変化というのも,ゲームのシステム面が強化されたり見直されたりといったことだけではない。ゲームのジャンルごとガラッと変わるような変化があったことで,作品それぞれに別々のファンがいるような,またそれも人それぞれで印象や評価が異なるという,なかなか珍しいゲームシリーズとなっている。

 では,Switch版が発売されたシリーズ第2作「ペーパーマリオRPG」はどのようなゲームかというと,RPGとしてのペーパーマリオの集大成と呼べる一作だ。

画像はSwitch版ペーパーマリオRPG

 スーパーマリオRPGから数えると,マリオのRPGとしては3作目となるペーパーマリオRPGは,よどみ無く展開するストーリー,のんびりコツコツ遊べる工夫やアイデアといった当時のRPGファンが求める「RPGらしいRPG」と言える要素が詰め込まれた作品だった。

画像はSwitch版ペーパーマリオRPG

 敵の種類に合わせてさまざまな技を使い分け,ボタンやスティックの操作で攻撃の威力をアップする。メンバーそれぞれの特徴を見極めてパーティメンバーを入れ替え,レベルアップや装備(武器やバッジ)でキャラクターを強化し,新たな技や能力を習得していく。
 それらのシステムのベースはマリオストーリーでほぼできあがっていたが,ペーパーマリオRPGはさらにその完成度が高められたという印象のゲームだった。

画像はSwitch版ペーパーマリオRPG

 コツをつかめばほぼダメージを受けず戦える「スーパーガード」が加わったことで,プレイヤーのアクションの腕前はより反映されるようになった。一方,レベルの上限が99まで引き上げられたため,アクションが苦手な人もキャラクターをコツコツ育てることで先に進められるようにもなっている。
 このように,アクション性,RPG性の両面で見事な仕上がりだったのだ。

タイミングはなかなか厳しいが,うまく決められるようになると無傷の勝利も夢ではない「スーパーガード」。レベル上限がマリオストーリーの27から99へと大幅アップしたことで,「そういう操作は苦手……」という人もじっくりレベルを上げることで難関を突破できるようになった(画像はSwitch版ペーパーマリオRPG)

 ペラペラなマリオの身体を生かしたアクション。シンプルな構造ながら,ちょっとした謎解きや仕掛けで楽しませてくれるステージ。キャラクター性が強い登場人物(?)たち。あちこちで始まる小ネタ的なイベントに遭遇しながら進めていくメインストーリー。それらも1990年代〜2000年代初頭にかけてたくさんリリースされていた,現在“JRPG”と呼ばれる日本のRPGのスタンダードといえるものだった。

今の若い世代のゲームファンには想像もつかないかもしれないが,あのころ毎年たくさんのRPGがリリースされていたものである(画像はSwitch版ペーパーマリオRPG)

 そんな当時の空気を感じながら今のゲームとして遊べるのがSwitch版であり,あらためてここでしっかりオススメしておきたい。
 グラフィックスが向上している点はもちろんのこと,イベントシーンのキャラクターたちのしぐさや表情,カメラワークとライティングといった見せ方や演出が新しく,そして大幅にパワーアップしている。

画像はSwitch版ペーパーマリオRPG

 遊びやすさも適度に調整されており,昔からのRPGファンだけでなく,こういったスタイルのゲームを遊んだことがない人,そもそもゲームをあまりしないけどマリオのゲームは遊びたい……といった人の入口としてもピッタリだと思う。
 ペーパーマリオの“RPGとして”の現在の集大成であるペーパーマリオRPG。Switchでリリースされたいまこそぜひプレイを!

画像はSwitch版ペーパーマリオRPG

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現在のシリーズ最新作「オリガミキング」は,RPG路線とアドベンチャー路線両方のいいとこどり


 Switchで遊べるペーパーマリオシリーズはもうひとつ。それが2020年7月に発売された現時点でのシリーズ最新作「ペーパーマリオ オリガミキング」だ。ペーパマリオRPGまでのRPG路線と,同作以降のアクションアドベンチャー路線,その両方のいいとこどりをしたようなゲームだ。

画像はペーパーマリオ オリガミキング


 「……えっ? 同作以降のアクションアドベンチャー路線?」とお気づきになられた方。そうです。ペーパーマリオは,RPGとしての集大成となった「ペーパーマリオRPG」でこの路線はひと区切り。以後シリーズはアクションアドベンチャー的な方向へと舵を切っていくのです。

 それってどういうこと? オリガミキングがどんなゲームかを説明する前に,ペーパーマリオRPGからオリガミキングまでの歩みを振り返つつ,ちょっとそのあたりに迫ってみよう。

画像は左がスーパーペーパーマリオで右がペーパーマリオ スーパーシール
画像はペーパーマリオ カラースプラッシュ

 2007年4月にWii向けに発売された第3作「スーパーペーパーマリオ」は,RPGだったこれまでの2作品からガラッと変わり,いわゆる2Dマリオのようなアクションゲームに,ストーリーや冒険,成長といったRPG的要素を加えたようなアクションメインのアドベンチャーゲームになった。
 先ほど少し触れた“ジャンルごと変化した”というのはこのタイミングのことである。

画像はスーパーペーパーマリオ

 今でも語り草となっている,「愛」と「終末」をテーマにした物語と敵となるノワール伯爵のシリアスな雰囲気。アクション面の特徴だった,ボタンひとつでステージの向きを2Dから3Dへと切り替える「次元ワザ」など,幅広い層に普及したWiiでリリースされたこともあり,本作を最高傑作として挙げる熱心なファンも多い。

画像はスーパーペーパーマリオ

画像はペーパーマリオ スーパーシール
 シリーズ第4作として2012年12月にリリースされたニンテンドー3DS用ソフト「ペーパーマリオ スーパーシール」は,アクションアドベンチャー色がさらに強まった作品だった。
 バトルや謎解きに「シール」を使う本作は,ステージのあちこちに貼られたシールを集め,それをできるだけ無駄使いしないよう探索を進めていくのが独特の緊張感があり,今までのシリーズ作品とはまた違った楽しさがあった。

 シール帳のような役割を担う3DSの下画面でキラキラしたシールを並べて悦に入ることができた点は,「シール大好き」な子ども(大人も)の心をくすぐるものがあった。シールを“キュポン”とはがす気持ちよさがクセになったというプレイヤーも多いはず。

画像はペーパーマリオ スーパーシール

 物語の世界やストーリーは,スーパーマリオの派生作品としての原点に立ち返りが図られたのか,ほかのスーパーマリオ作品とは一線を画したペーパーマリオ独自の“色”は抑えられていた。この点はシリーズファンの間では賛否両論となり,いろいろな意味で話題となった作品でもあった。

画像はペーパーマリオ スーパーシール

 筆者個人としてはなかなか印象深い作品だった。見た目は一緒(失礼)だけど丁寧な性格の描き分けで個性が感じられたキノピオたち。砂漠ステージのスフィンクスがヨッシーの顔。雪山ステージであちこちに配されたアイスブロスやペンタロー。登場キャラクターの描き方や表現が魅力で,制約の中で研ぎ澄まされた「俳句」のようなキレや味わいがあった。
 ただ,個性的なゲームを期待していたペーパーマリオファンが戸惑ったという気持ちも当然分かる。長年シリーズを続けていくことって,本当に難しいですね……。

画像はペーパーマリオ スーパーシール

 2016年10月にWii Uで発売されたシリーズ第4作「ペーパーマリオ カラースプラッシュ」は,シールに代わって「カード」を駆使するゲームに。色がところどころ抜けて白くなってしまったイロドリアイランドを冒険し,世界に彩りを取り戻していくという物語が展開する本作は,ゲーム面も制作側がアドベンチャー路線に大きな手応えを感じ,より洗練させてきたことがうかがえる作りだった。

画像はペーパーマリオ カラースプラッシュ

 スーパーシールで煩雑だった部分,あっさり気味だったボリューム面などが見直され,謎解きやイベントのキレ味もますます冴え渡るものに。物語やシチュエーションも,「船長キノピオともに味わう海洋冒険ロマン」「暴走機関車での優雅(?)な旅」「化石発掘現場で思わぬ事件が勃発」「レストランでのお料理チャレンジ」などなど,マリオ本編にも匹敵……いや,アドベンチャーだからこそ描けるそれ以上のユーモアやウイットに富んだものとなっていた。

 リリース時期がNintendo Switchの発売日の正式発表近くというのもあって,比較的プレイした人が少ないゲームではあるが,個人的に思い入れのある作品だ。

筆者のお気に入りが,ホラーな事件が起こるホテル「オーシャンブルー」での一幕。ディレクションとシナリオを担当する工藤太郎氏がかつて関わったゲーム「UFO -A day in the life-」を思い出させるセルフパロディ的なネタで,同作のファンとしてたまらないものがあった(画像はペーパーマリオ カラースプラッシュ)

 ……と,簡単に説明するつもりがついつい思いがあふれて長くなってしまったが,やっと戻ってきましたオリガミキング。あらためてだが,本作はペーパーマリオRPGまでのRPG要素とペーパマリオRPG以降のアクションアドベンチャー路線,その両方のいいとこどりであり,これまでの紹介したシリーズの歩みをアタマの片隅に置きながらプレイしてほしい一作だ。

画像はペーパーマリオ オリガミキング

 突如現れたオリガミの王・オリー王により,折り紙のように折られてしまったペーパーマリオ世界の住人たち。さらにオリー王に仕えるブンボ―軍団により(その姿はフォトリアルな文房具そのもの。ハサミやホッチキスなど,紙のようにペラペラな住人たちには見た目からして恐怖の存在だ)この世界そのものが破壊されつつある。
 マリオはオリー王の妹であるオリビアとともに世界を救うべく,集めたカミッペラで世界のほころび「スカスカ穴」を修復する旅に出る。実に王道なRPGな導入だ。

画像はペーパーマリオ オリガミキング

 そんな王道RPG的な展開を見せるオリガミキングの冒険だが,森,洞窟,紅葉の山とススキ野原,遺跡,劇場,日本風のお城であるOEDOランド,そして世界を司るカミさまたちの神殿とさまざまなシチュエーションが用意されている。
 こちらも王道感をたっぷり漂わせつつ,ペーパーマリオならではの独特な雰囲気の場所も用意されており,これまでのいいとこどりといった感がある。物語の始まりはけっこうホラーだが,舞台が変わればムードも一変する。このあたりもペーパーマリオシリーズの多くに共通する魅力だ。

伸び〜る腕を使ったアクション,過去作の“RPG的”な解決手段を持たせつつパズル要素を加えたバトルなど,シリーズの歩みを知るとシステム面も「なんか今までのいろいろが入ってるなあ」となるはず(画像はペーパーマリオ オリガミキング)

 ストーリー進行もムービーたっぷりなストーリー主導型のRPGといったところだろう。
 そしてこの旅では,さまざまなキャラクターたちとの出会いと別れが待っている。彼ら一人ひとりが背負っているものが描かれた物語がまた素晴らしい。

画像はペーパーマリオ オリガミキング

 どう素晴らしいか,その例を挙げたいと思う。ただこれはネタバレかつ先入観を与えるものになるので,それを気にしない人や,すでにクリアしている人などに読んでほしい。

【ネタバレ注意】オリガミキングの物語の注目ポイント
 最初は記憶喪失だったボムへい(兵)の「ボム平」が,ついに記憶を取り戻す場面。「仲間たちとの過去」「ボムへいとして生まれた意味」を思い出し,そして「行動」に至るその物語は,多くの人の心を揺さぶったはず。入口ではクスリとくる展開で始まって,でも最後にはホロリとくる,シリーズ全体でも屈指のドラマである。
 また,実はオリー王とオリビアも何者かによって折られた「作品」であり,それがオリガミキングという“作品自体”とも重ね合わせて見ることができるキャラクターとなっている。こちらのドラマも実に味わい深いものだった。

 ……以上でネタバレはおしまいです。
 ゲームの基本の部分については発売時期に掲載したプレイレポートで紹介しているので,「ネタバレは避けたいけどゲームのことを詳しく知りたい」という人はこちらをどうぞ。

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 任天堂が2020年7月17日に発売を予定しているSwitch用ソフト「ペーパーマリオ オリガミキング」のプレイレポートをお届けしよう。紙のように薄い“ペラペラ”のマリオが活躍する「ペーパーマリオ」シリーズ最新作は,アクションの新機能,パズル要素のあるバトル,そして奥深い物語が魅力的な作品となっていた。

[2020/07/16 00:00]
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 最後にあらためてSwitchで遊べるペーパーマリオ作品をまとめると,シリーズ第1作の「マリオストーリー」と第2作の「ペーパーマリオRPG」,最新作の「ペーパーマリオ オリガミキング」の3つ。「マリオストーリー」は任天堂のオンラインサービス「Nintendo Switch Online + 追加パック」への加入でプレイできるオリジナル(NINTENDO64)版,「ペーパーマリオRPG」は新たに制作されたSwitch版となる。


 作品ごとに変化し,ゲーム性もガラッと変わったことで,“どれが合うかはプレイするあなた次第”なところがあるペーパーマリオシリーズだが,そんな歩みを経て現在の完成形となったオリガミキングとSwitch版ペーパーマリオRPGは,多くの人の心に“届く”作品であると言い切れるゲームだ。この2作をプレイし,なにか“届くもの”を感じた人は,その始まりとなるマリオストーリーに手を伸ばしてみるといいだろう。

画像はSwitch版ペーパーマリオRPG

 そして,ペーパーマリオに魅了された人は,きっとこう期待せずにいられなくなるだろう。
 「今期中にアナウンスされるというSwitchの後継機種では,どんな物語と遊びをもったペーパーマリオが出てくるのだろう」と――。

画像はSwitch版ペーパーマリオRPG

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