ポーランドのクラクフで開催されたゲームイベント「Digital Dragons 2024」に,ウクライナのキーウを拠点とするTwigamesが開発を手がけるナラティブRPG「Hollow Home」の最新版が展示されていた。


 本作は,ウクライナの田舎町に暮らす14歳のマクシム(Maksym)が主人公になる。寝坊してしまったが,両親が家にいなかったため学校をサボることにしたという,まだ責任感のない呑気な一日が始まる。

 いつものように着替えをして,荷物をリュックに詰め込んで出かけると,2014年におばあちゃんと2人で同じ団地に引っ越してきた同級生のヴィカと出会う。どうやらヴィカも学校をサボったようだ。2014年というとロシアがクリミア半島に侵攻した年であるが,両親を亡くしているためかヴィカにはどこか影があり,マクシムよりもずっと大人びた態度を取っている。


 こうしたゲームの冒頭はチュートリアルになっており,逃げ出してしまった近所のお爺さんの犬ハクスレーを探して連れ戻すなど,おつかいのようなミッションがしばらく続く。

 ヴィカとゲームセンターで時間を潰したり,ガレージの修理工を手伝ったり,いじめっ子に立ち向かったり,メロドラマ好きなおばさんのために屋根に登ってアンテナを調整したりしながら,ゲームプレイに必要なことを覚えていく。


 犬のハクスレーを含めたNPCごとに,現在の生存状況を示すステータスが表示されている点が,とても不気味な印象を与える。実は,この日がマクシムにとって少年時代最後の日となり,次の日にはサイレンがけたたましく鳴り響き,突如としてロシア軍の侵攻が始まり,人々の生活が一変するのだ。

 Hollow HomeはRPGというカテゴリーだが,コンバット要素はほとんど存在しておらず,「Disco Elysium」「Planescape: Torment」のように会話の選択やモラルチョイスをベースにして,さまざまなストーリーの展開や分岐を楽しめるゲームになっている。

 そのうえで,マクシムには「社会性」「感性」「注意力」「創造性」「思慮深さ」「自信」「器用さ」「運動能力」の8つのカテゴリーがあり,経験値を得ると5段階でレベルを上げられる。その経験により,ゲーム中にアンロックされる特殊な選択肢も選べるようになる。


 また,「アクションポイント(AP)」というゲームシステムが用意されている。これは,その日に体験できるイベントが最大10ポイントに限られており,何かをするとポイントが減り,家に帰り眠り,次の日になるとポイントが回復する。そのため,何を優先し,どのように対処していくかが重要で,ときには愛する人の命にも影響を及ぼすことになる苦渋の決断を迫られることもあるという。

Twigamesで3Dアーティストを務めるアナスタジア・ラトゥシュナ氏。海外渡航ができる女性開発者で英語も話せるため,海外のイベントに参加する機会が多いという
 Hollow Homeは,ポーランドのGalaktusがパブリッシングを担当し,2025年中のリリースを目指して開発が進められている。Twigamesの3Dアーティストでもあるアナスタジア・ラトゥシュナ(Anastasiia Retushna)氏によると,グラフィックスやアニメーションを含め,ゲームプレイ部分が大きく改善されているという。筆者も昨年にプレイしたデモ機と比較して,スムーズにプレイできるようになっていることを感じ取れた。

 現在も進行中のロシアによるウクライナ紛争を,今もリアルに経験している開発者たちが手がけているタイトルということもあり,ゲーム業界内外でも大きく注目されているようだ。Steamストアページの情報では,インタフェースと字幕が日本語に対応するという。気になる人はウィッシュリストに追加して続報を待とう。

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 「gamescom 2023」のビジネスエリアに設置されたウクライナパビリオンに,Twigamesが開発するRPG「Hollow Home」が出展されていた。ロシアによるウクライナ侵攻という現在進行形の出来事を描いており,14歳の少年が,サバイバルを通して大人になることを強いられるという物語が描かれる。

[2023/08/27 15:36]
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  • ライター:奥谷海人



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