オンラインゲームの運営会社はよく「ユーザーの声を取り入れる」と言う。耳障りのいい言葉だが、そもそもお客さんの声を無視する会社はやばいと思う。
※この記事はネクソン『HIT : The World』の提供でお送りします。
それはさておき、ユーザーの素直な意見はたしかに貴重だろう。たとえばMMORPG。広大な世界、深いストーリー、魅力的なキャラ、ストレスを感じさせないシステム……ここにユーザーの声が加わるとこうなる。
最強のMMORPGに!
そこで、数々のMMORPGを遊んできたコアプレイヤーを招いて座談会を実施。テーマは“MMORPGに必要なもの”。思う存分、MMORPGに物申してもらおう!
という現場のMCをお願いできないでしょうか。ゲーム好きでふだんはFPSなどの対戦ゲームを中心にプレイし、職業もそういった大会の実況やイベントMCということで、MMORPGに肩入れし過ぎることなくフラットな対応ができるOooDaさん。
OooDa説明的な紹介ありがとうございます。塾講師みたいなポーズを強要された疑問が解けました。ところで。
何でしょうか。
これは2本撮りの2本目ですね?
はい。
※1本目の記事はこちら
気を取り直して、以下の御三方が考える理想のMMORPG像を見ていきたい。
なお、聞き役として、ゲームメーカーの社員として10年以上オンラインゲーム運営に携わった反王ケンラウヘルさんにも参加してもらっている。
kentaro
多数のMMORPGをプレイ。大会に参加するギルドの戦力分析をするなど、盛り上げ要員として貢献。VTuberとしても活動している。文中ではkentaro。
かわいこたん
妙に深い発言をして担当編集者を震え上がらせる。文中ではかわいこたん。
NYooooooooooooo(課金王)
おもに『メイプルストーリー』をプレイ。“課金王”の名に恥じぬ課金額を誇る。文中ではNYoo。
OooDa
FPSや対戦ゲームの実況、イベントMCなどを生業としている。文中ではOooDa。
いきなり課金について本気で考える
かわいこたんお題を聞いて、真剣に考えてきたことがあります。
……ん?
かわいこたん“基本プレイ無料・アイテム課金タイプのMMORPG”という前提で話しますね。メーカーからすると課金してもらうことは大切です。でも、課金する人は限られる。それに、競う相手や敵がいなければ課金をする必要も感じなくなっていく。こういう心理は当然ですので、ユーザー同士でどういった関係を構築できるかが重要なわけです。コミュニティーの動向を見ますと……
OooDa待って待って! えっ? こんなガチな感じでいきます!?
導入はコントのようだったが、我々は本気である。
OooDaてっきり「ストーリーが重要」とか「PK要素は絶対いる」とか、システム周りの要望を楽しく発表し合う場になると思っていました。
おもしろいゲームシステムは開発会社が考えてくれるはず。その信頼をふまえたうえで、ユーザーにとって重要な点を話し合おう。今回はそういう会合だ。OooDaさんはあたふたしていたが、構わず続ける。
かわいこたんどこまで話しまたっけ。えーっと、ある程度の課金をして強い人の周りに、ほかのユーザーは集まります。そのコミュニティでMMORPGを楽しむには課金をしたほうが(強くなりやすいから)いいんだけど、ついていけなくて離れる流れもあるのかなと思います。少なくとも僕が見てきた範囲では、そういう構図はありました。
かわいこたん盛り上がりを語るうえでも重要なものとして、課金については運営さん側も試行錯誤されていますよね。課金アイテムは壊れませんとか、課金し過ぎないように天井を設けますとか。個人的に、課金に大切なのは“時間のとらえ方”だと思うんです。
OooDa時間? どういうことですか?
かわいこたん課金で何かを得ていく過程に、もうちょっと時間をかけるべきなんじゃないかなって。たとえばガチャを回します。出てくるものを時間をかけて消化して強くなっていくわけですね。
かわいこたん最初の頃はひとつひとつの工程に時間がかかるけど、しばらくすると無課金・微課金の人もその要素に触れられるようになるので、(協力したりして)処理スピードは上がっていきます。そういう過程があれば、重課金の人も無課金の人もいっしょに長く遊べる。
かわいこたんそれなのに、課金しました、いいアイテムがもらえました、10分で終わりました。なんてことになったら無課金の人は辞めちゃうよなあと。いっしょに遊べないし追いつけないから。すぐに全部手に入っちゃうのがNGという意味では、天井が低いだけではよくないのかもしれない。課金をして優位を得られるのは当然なんですけど、そこに加えて、楽しんで消化していく仕組みがほしい。それはやっぱり無課金・微課金の人と遊べる工程を増やすことだと思います。
いきなりトップスピードである。
反王ケンラウヘルさんは「課金する人はすごすぎて青天井だと感じていました」と、オンラインゲームを運営していたGM時代を振り返る。課金で買えるものがどれも無限に買えすぎで、本来楽しむべきところも、全部ぶっ飛ばしてしまっているように見受けられたという。
「たとえば、その目的のアイテムは1週間に何個までと制限して、そこに理由があればいい。制限があるから楽しめますよという理由。それが長期的な視野としてはいちばんいいと思っています」と、反王ケンラウヘルさん。
かわいこたんそうですね。もちろん時間とか手間がかかりすぎると課金する方もたいへんなんですけど。最近は10万、100万単位の課金が15分で終わるようなタイトルも多いんですよ。それでいいとも思うんですが、長めの時間をかけられる方がいいと感じています。
短期的な高額利益を取るのか、ライフタイムバリューで見た長期的な利益を取るのか。運営会社の手腕が問われる。
OooDa話が深すぎて呼吸できないです。
いかに事前の盛り上がりを伝えるか
NYoo私が本気で遊びたくなる要素と言うと、これですね。
NYooユーザーとメーカー、どちらの盛り上がりも大事。初動の盛り上がりはとくに気になります。定期的にイベントや新規ユーザーを取り込む施策を打ち出してくれると、積極的に遊びたくなります。先が見えると安心できますからね。ああ、しっかりやっていくんだなって。
kentaroたしかに。それをどうやって持続させるのか、どうやってユーザーに続けてもらうのか。その辺を(開発・運営側が)どう考えているのか気になります。MMORPGはユーザー層が固定化していると思うんですよ。
kentaro僕の場合、『二ノ国:Cross Worlds』(以下、『ニノクロ』)や『Code:ドラゴンブラッド』(以下、『ドラブラ』)はいままでとは違う色があったので、僕は長く続きました。初めてMMORPGをやる層が多かったからかも。新しい人とのつながりはMMORPGの醍醐味なので、いままでやったことがない人にもやりたいと思わせる要素が大事。それがあるならずっと遊びたいですよね。
かわいこたん僕もいろいろなMMORPGをやってきましたけど、たしかに毛色が違うものはユーザー層もまた違うんですよね。違うジャンルから入ってきたユーザーもすごく増えている気が。この世界にどっぷり浸かってもらう工夫というか、MMORPG側から寄っていく姿勢が必要だと思います。
NYooMMORPG側から寄っていく。それはたしかに大事ですね。
かわいこたんSNSでもそういった層の目に留まる機会を増やして初動を盛り上げてほしいです。多少はしつこくてもいいので。コンテンツがある程度揃っていれば、最初の3ヵ月くらいはなんだかんだで盛り上がりも持つんですよ。
NYoo盛り上がりに関しては、まだまだ日本でもやれることはあるんだろうなと思います。韓国の『メイプルストーリー』がうらやましいですもん。ドーム球場を貸し切って客入れイベントをやったりしていて。
言葉を選ばずに言うと、多くのタイトルを遊んできたユーザーは爆死するタイトルは何となくわかるもの。そのゲームにのめり込む以前に、始めるか始めないかのスタート地点に立ってもらうことが重要である。
NYooリリース前からの空気に大きく左右されますよね。
反王ケンラウヘルさんは「ほとんどのゲーム会社はそれをわかっていない! こういう事前の盛り上げは本当に大事なんですって!」と吠えていた。
ユーザーを不安にさせない
kentaro難しいのはわかってるんですけど、大事なのはこれかなと思います。
kentaro初動の大事さにも関連する話。最近の新作でよく見かけるのが、リリースされたけどコンテンツが出てくるのが遅いというパターン。「レベルを上げたら遊べるコンテンツを1ヵ月後にリリースします」だけじゃなくて、最初からロードマップを明示してほしい。まずはこのコンテンツを遊んでもらって、1週間後にはこれが解放されますといった流れを。
開発に時間がかかるという事情はわかる。ただ、それをユーザーを不安にさせる理由にしてはいけないということだ。新コンテンツを作っている間に何も用意できないのは仕方ないが、それを放置する運営チームもゼロではないという。
「伝えないと、伝わらないんですよ」とは反王ケンラウヘルさんの弁。コンテンツとコンテンツの間を丁寧に埋めないといけない。
kentaro僕らにとっても「つぎはこれが来るのか」と準備の目安になりますし、キャラ育成の飽きも軽減されるかと。こういったロードマップも初動が大事だと思います。
開発に工数のかからないコンテンツを用意するのがベター。もちろんうまくいった事例は過去にもある。
ダンジョン攻略がおもしろいゲームの場合、敵のパラメーターで難易度を調整。ぎりぎりクリアーできるかできないかくらいの強さに設定できれば、ユーザー同士でああだこうだと話し合いながら攻略していく楽しさが生まれる。前述の“無課金層も含めたコミュニティー”が成熟していれば、かなり効果を発揮しそうだ。
OooDa僕、この座談会にいらなくないっすか? 大丈夫ですか?
大丈夫です。
キャラを強くするだけではいけない
かわいこたん性能面の要素も大事なので。
OooDaこれまた深そうな意見が。
かわいこたん僕はサッカーも好きなんですけど、その調整方法がおもしろいなと思って。サッカーゲームは選手の能力を数値化しているわけですよね。18歳のときはまだまだだけど、20歳になったらうまくなって数値が上がる。でも30歳とか35歳になるとスタミナが減る、ただテクニックは上がる。そういう調整が入るんです。
OooDaへぇー! おもしろい。人間としての成長が再現されていると。
かわいこたんたいていのMMORPGのキャラって上がりっぱなしですよね。もしくは上げたことを目立たせるために、ほかのキャラをナーフする。そうじゃなくて、ひとつのキャラのなかでもっと上げたり下げたりしていいと思うんですよ。サッカーでたとえると、オフェンスを4上げたらディフェンスを3下げる。フォワードだったら、ヘディングを強くしたらキックは少し下げるとか。
OooDa空中戦の意識が強くなってるから、シュートは弱くなるはずみたいな。なるほどなー。
かわいこたん“上げたら下げる”が大事だと思います。テストで上げ下げして意見を募集して、みたいな調整を短いスパンでやってみてほしい。いじりすぎるとクレームもあるでしょうけど、いじらないでいるよりは断然楽しくなると思います。そう調整されるなら自分はこうしようとか、ユーザー側もいろいろと試し始める。試行錯誤っておもしろいんですよ。
OooDa対戦格ゲーやシューターではけっこうある形態だとは思うんですが、MMORPGにその考えがあったらおもしろいかも。いいですねこれ!
キャラの個性がおもしろくないと、みんな最強キャラ一択になってしまう。それは大人数が集まるゲームジャンルとしてどうなの? というメッセージのようだった。深さに震える。
GvGやPvPを自由に遊びたい
NYoo強さバランスの話が出たところで。
NYoo強さを可視化できると、目標になっていいと思います。最近は取り入れているゲームも多いですよね。『ニノクロ』とか『リネージュ2 レボリューション』とか。あとはその強さを試すためのPvPとGvG。この辺があれば僕としては文句なしです。
kentaroおー、いいですね。その流れで。
kentaroMMORPGのGvGイベントって開催時間が決められている場合がほとんどですよね。でもリアルの都合で参加できないことってザラにあると思うんですよ。自由度がすごく低い。GvGだったら“今週はここ対ここ”みたいにカッチリ決まってたりして。それも楽しいんですけど、『TERA ORIGIN』や『ドラブラ』だと、マッチングボタンを押すと親善対戦が組まれるようなシステムがあったんですよ。これがすごくよかった。
NYooそういうシステムは便利ですね。腕試しもできるし気軽に遊べそう。
kentaroGvGだと人数がいるけど、参加したい人がお互いにある程度集まったらチームが組めるとか、そういうシステムもいいですよね。足りない分はBOTで補ったりして。対戦の自由度が一気に広がるので、こういうシステムはぜひ取り入れてほしいです。
ゴールデンタイムや週末に集中して大規模コンテンツを遊ぶのもいいが、任意のタイミングで自由に楽しめるコンテンツも大事ということか。親善試合を気軽に組めればギルド内も活気づくほか、サーバー内で大会を開くことも可能。
かわいこたんこの辺の話はかなり共感できました。すっごいわかります。となると、これがほしいですね。
かわいこたん僕たちが求めるものは“盤”なんですよ。フィールド。勝手に遊べる環境。開発の方にも運営の方にも、これは理解していただきたいです。最初の半年~1年くらいは運営さんが用意したものでユーザーが「こういうゲームなのか」と理解を深めて、2年目くらいからはユーザーが好きに遊ぶ。本来ならこういう形がいいんだろうなと。
運営がすべてを用意してもてなすより、ユーザーたちが自主的に開催したイベントの方が思い出に残る。うまく回れば運営面のコストパフォーマンスも悪くないはず。自由度を高めるのは難しいだろうが、ぜひ導入を検討してほしいところだ。
最後に、ファミ通.comからひとつ。
OooDa浅いよ! 急に浅い!
一同 めちゃくちゃ大事です……!
OooDaそれは共感するんだ。
『HIT : The World』に伝えなきゃ!
おつかれさまでした。OooDaです。楽しい座談会でしたね。想定より3段階くらい深い意見がバンバン出てきて、最初は気圧されてしまいました。
そう言えば新作MMORPG『HIT : The World』の正式サービスが2024年4月17日から始まるんだった。
『HIT : The World』と言えば美しいグラフィックが特徴的なスマホ&PC用タイトル。ターゲットした敵をオートで攻撃して任意のタイミングでスキルを発動させるオーソドックスでじっくり遊べるスタイルながら、自動狩り系の便利な機能も充実。最大10ギルドが競い合う“攻城戦”やユーザー間投票でサーバーのルールを決める“調律者の祭壇”といった個性的な仕様を備え、課金のバランスに細心の注意を払い、誰もがエンドコンテンツに参加でき、“ユーザーの声を取り入れた開発・運営方針”を打ち出している……ということは!
今回の座談会の内容にぴったりじゃないか!
こうしちゃ
いられねえ!!
はくしんさん! 『HIT : The World』日本運営ディレクターのはくしんさん! こんなにすばらしいアイデアが出たんです! 『HIT : The World』はどうなんですか!!??
そのご意見、いただきます!
ということで、ユーザーが遊びやすい環境を目指す『HIT : The World』で、出た意見を回収してもらうことに(何だか美少女怪盗の決めゼリフみたいですね)。本当は「採用!」と言いたかったそうだが、実装の可否には開発会社の判断が不可欠なので、少し曖昧な返事になってしまったとのこと。
なお、仮に実装するにしても開発にはどうしても時間がかかるもの。そこはご理解いただきたい。最強のMMORPGを生み出すには、メーカーがユーザーに歩み寄るように、ユーザーがメーカーに歩み寄ることも大切である。
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