現在,Epic Gamesストアでオープンα版の提供が行われており,基本プレイ料金は無料。なお,ゲームプレイにはPARAVOXアカウントの登録が必要となる。
“何の予告もなくいきなり現れた”本作だが,執筆時点(2024年5月15日)でプレイヤー数は5万人を突破しているとのこと(※リンク)。さらに,FENNELやREJECT,SCARZ,VARREL,ZETA DIVISIONといったプロチームが参戦する賞金総額1億円の公式大会「PARAVOX GOLD RUSH TOURNAMENT」を開催するなど,話題性に富んだタイトルである。
賞金総額1億円の「PARAVOX」大会が7月31日に東京で開催。予選のオープントーナメントは誰でも参加できる
81RAVENSは2024年4月28日,オープンα版を提供中のPC向け新作TPS「PARAVOX」で,賞金総額1億円の大会「PARAVOX GOLD RUSH TOURNAMENT」を7月31日に東京・品川ステラボールで開催すると発表した。招待プロチームが参戦するほか,一般参加枠の予選となるオープントーナメントも開催される。
[2024/04/30 16:28]- キーワード:
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とはいえ,「パラボックス? なんだかよく知らない……」という読者も多いだろう(筆者もその1人だった)。なにせ本当に突然,現れたのだから。
そんな折,4Gamer編集部から「『PARAVOX』を遊んでみて,感想を教えてください」と連絡をもらったので,ひとまずプレイしてみることにした。本稿をご覧いただき,作品の方向性をキャッチしていただけたら幸いだ。
メチャクチャ速いTPS,それが「PARAVOX」
冒頭で触れたとおり,「ハイスピードコンペティブTPS」を謳っている本作だが,実際にプレイしてみると,確かに「ハイスピード」な戦闘スタイルが特徴であることが分かる。
まずはゲームの流れを通じて,全体的な雰囲気を紹介しよう。
本作はオープンα期間中ということもあり,機能にはかなりの制限がかかっている。現状,プレイできるのはランクマッチをはじめ,キャラクターのコスチューム変更,カスタムゲーム,射撃練習といった具合だ。
いわゆる「ヒーローシューター」のように,各キャラクターに固有のスキルが設定されているわけではなく,プレイヤーが使える基本スキルは共通だ。キャラクターのコスチュームをカスタマイズしたり,性別を切り替えたりできるが,性能には影響しない。
さて,本格的な対人マッチングの前に,射撃練習場で操作を確認してみよう。ここでは基本操作のテストだけでなく,本作の特徴的な武器のテストも思う存分に行える。
基本的な操作は「マウスでエイム/射撃」「[W/A/S/D]で移動」「[Space]で2段ジャンプ」「[Shift]でダッシュ(ブリンク)」「[Ctrl]でハイジャンプ」「[Q/E]で武器固有のスキル」といったもので,いたってシンプルだ。
ブリンク,大ジャンプにはクールタイムが設けられており,とくに大ジャンプは戦闘からの急速な離脱,高所を取るときなどに活躍してくれる。
一方,ブリンクは2チャージ式になっており,クールダウンも早いため,単純な移動だけでなく,戦闘の最中にガンガン挟み込んでいく形になる。対人マッチでは,地べたをノロノロと歩き回っていると一瞬でキルされてしまうので,「ジャンプ→ブリンク→ジャンプ→ブリンク」のような回避行動は鉄板ムーブと言える。とにかく動き回って,被弾を減らさなくてはならない。
そして,「キャラクターの性能差はない」と記したが,使用する武器によっては戦法や交戦距離が大きく変わるのも本作の特徴だ。シューターでは“定番”のアサルトライフル,スナイパーライフル,ショットガンといったものから,弓や刀といった変わりものまで多種多様に揃っている。
そのうえで重要になるのが,各武器には2種類のスキルが設定されていることだ。それぞれの武器に合った戦術を拡張するようなスキルが設定されており,これを有効に活用していくことが戦闘のカギとなる。
筆者がひと通り使ってみて,「初心者でも扱いやすそう」と思ったものをピックアップして紹介しよう。
●NOVA
本作は全体的に機動力が優れているため,アサルトライフルは従来のシューターほどの有効なダメージソースになりにくいが,「NOVA」は扱いやすく,着実に相手を削れる。
なお,弾速こそ設定されているものの「距離減衰なし。ヘッドショットあり」という仕様なので,エイムに長けたプレイヤーならば一気に最強格の武器になるだろう。
スキルも非常に強力で,離れた味方のもとにテレポートするスキルと,オブジェクト越しに敵の輪郭を浮かび上がらせるウォールハックスキルを有している。チームに1人いてくれると安定感が増す印象だ。
●BEATDOT
遠距離では豆鉄砲だが,有効射程内でヒットさせれば強力という“いつもの”ショットガン。「BEATDOT」は有効射程内でフルヒットできれば,2発でキルが可能だ。
さらにスキルもなかなか優秀。短射程ではあるが命中時に敵をスタンさせるCCスキルと,一定時間クローク状態(透明)になれるスキルを持つ。
味方が削った相手を仕留めに行ったり,「射撃→スタン→射撃」のコンボで強引にキルを稼いだりと,安定したキル能力がある。従来のシューターでは「ショットガン=有効射程に近づくのが難しい」わけだが,機動力のある本作では難なく距離を詰められるため,ゲームデザインと噛み合っている印象を受けた。
そのほかにも,スナイパーライフルやグレネードランチャー,刀,弓といった武器があるのだが,全体的にクセが強く,慣れるまでは扱いが難しいと思う(もちろん,好きな武器を極めるのも素敵だ)。
というわけで,初心者におすすめの武器を紹介した次第である。
実際にマッチをプレイしてみる
ここからは実際のマッチを通して,試合の流れを紹介しよう。
現状,プレイできるのはランクマッチとカスタムマッチのみだが,もちろん,後者はほかのプレイヤーを集める必要があるので,「マッチングにキュー入れて……」というおなじみの流れでプレイするのはランクマッチのみだ。
ただ,ランクマッチには「平日は19:00〜25:00 / 金土は19:00〜27:00」というプレイ可能な時間が決まっている。これはオープンα版のみの措置なのか,正式サービス以降も同様なのかは不明だが,現時点でカジュアルマッチの項目も存在している(もちろん選べない)。
将来的には「カジュアルマッチはいつでもプレイでき,決まった時間にランクマッチがオープンする」という仕様になるのかもしれない。
本作のゲームシステムはシンプルで,いわゆる「キャプチャー」ルールに近いものとなっている。3人vs. 3人のチーム戦で,ステージ上に現れるストライクポイントを奪い合い,先にスコアが100ポイントに達したチームが勝利となる。
マッチングが成立すると,まずは武器の選択となる。チームメンバーと同じ武器は選べないため,各自異なる武器を持つことになる。味方の武器構成に応じたピックをするのものいいが,早々に自分が使いたい武器を選択するのもアリだろう。
いよいよ戦闘開始となるが,ここまでに何度が述べているとおり,本作の特徴は「ハイスピードさ」である。自分も相手もとにかく動きがすさまじく速いので,従来の感覚ではエイムが到底追いつかない。
ここで肝心になるのが,スコアを稼ぐためにはポイント内に留まる必要があるため,持ち前の機動力が一気に制限されるという点だ。ポイント内で味方に合わせて乱戦状態を作り出したり,逆にポイントを味方に任せて,外からチクチクしている敵を迎撃したり,戦況次第で味方とスイッチしたりと,さまざまな戦術を考える必要があるだろう。
HPの自動回復などはなく,ダメージを受けたらマップに配置されている回復アイテムを取ったり,ステージ内の回復マシンにインタラクトする必要がある。
なお,スナイパーライフルのスキルには貴重な回復スキルがあり,装備しているプレイヤーは攻撃と回復を同時にこなすという忙しさに見舞われる。
キルされると一定時間後にリスポーンとなるが,マッチの経過時間と共に復帰までの時間が延びていく仕組みだ。後半になればなるほど,1回のデスの重みが増していくので,より慎重な立ち回りによる生存が求められる。
特段ややこしいルールや要素はなく,勝利を得るためには純粋にプレイヤーの技量と知識が問われる。まさに「ハイスピードコンペティブTPS」と謳うだけのことはある,といったところだ。
組みあがった大枠に,どこまでパーツを組み込めるか
最後に,筆者が感じたことをまとめたい。
まずは「コンペティブ」,すなわち本作が競技的であるかという点だが,強く念頭に置いて制作されていること,そして極めて重視しているコンセプトであるということは間違いないだろう。機動性重視のハイスピードアクションということもあり,プレイヤー数のいたずらな増加によって状況がさっぱり分からなくなることは容易に想像でき,3人vs. 3人というルールも納得がいく。
そのうえで,本作は「パーティを組んでプレイすること」の意味合いが非常に大きいと感じられ,シーンの高みを目指すのであれば,コミュニケーションは必要ではなく“必須”だろう。「誰もが楽しめるゲーム」ではなく「競技するゲーム」に全力で振った方向性には,開発陣の確固たる意思がうかがえる。
昨今の日本国内では,「VALORANT」に代表される“競技スタイル”を念頭に置いたタイトルが大きな存在感を放っており,硬派なコンペティブ要素の強いシューターが比較的受け入れられやすい環境があるのではないだろうか。
一方で,プレイフィールが全体的に淡泊なところは気になる点だ。盛り上がれるシーンに欠けるというか,グッと来る瞬間,大雑把に言えば「ゲームをプレイしている実感」があまり得られないのだ。「開発段階のゲームをプレイしている」感覚とでも言うべきだろうか(事実,オープンα版である)。
キャラクターボイス,環境音,BGMがないのは,競技を前提にした意図的な仕様だと思われるが,これもプレイフィールにドライかつ,一種のシュールな印象をもたらしている。全体的に演出が控えめなので没入感がなく,「ただ戦って,勝つか負けるかを繰り返して,ランクに挑み続ける」のみというゲームサイクルは,人を選ぶことになるだろう。
加えて,軽量化を優先しているのだろうが,一見すると「これ,モバイルゲーム?」と思ってしまうグラフィックスも好き嫌いが分かれるところだと思う。
世に出ているタイトルが,いくつもの酒やジュースを混ぜて作られた“カクテル”であるならば,本作は「酒をストレートで飲め」と言わんばかりのストロングスタイル。「キャラの声とかBGMとかは集中の邪魔」「グラフィックスを落として軽量化してくれ」などと思ったことがあるプレイヤーは少なくないだろうが,こうした要素が果たす重要な役割をあらためて認識した次第だ。
総じて,とにかくゲームに競技性を求めていて「俺は最強のメタを使って,最強の仲間と共に,がむしゃらに上のランクを目指したい。それ以外は何もいらない」というプレイヤー層には,良い刺激を与えてくれるタイトルだと思う。あくまでもオープンα版であり,今後に期待したい部分も多いが,ひとまず「こういうゲームを作りたい,作ります」という大枠の部分は,しっかりと提示されている。
世界はもちろん,国内だけでも競技シューターシーンには巨大なライバルたちが待ち構えているが,ここに「PARAVOX」が食い込み,独自のポジションを確保することができるのか。これからの展開に注目したいところだ。
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