ブラザー工業は9日、ローランドディージー(DG)に対するTOB(株式公開買い付け)価格を引き上げないことを決定したと発表した。ローランドDGが米投資ファンドと進めるMBO(経営陣が参加する買収)価格の方が高いことになり、ブラザーは買収を事実上断念する見通しになった。

ローランドDGは4月26日に米投資ファンド、タイヨウ・パシフィック・パートナーズと進めるMBOでの買い付け価格を1株5035円から5370円に引き上げており、ブラザーの提案額(5200円)を上回っていた。ブラザーがこれに対抗して買収額の引き上げに動くかが注目されていた。

ブラザーの佐々木一郎社長は同日の決算会見で、「買収提案はローランドDGのすべてのステークホルダーにとって有益なものであると今でも確信している」と強調。その上で「根拠を欠く批判を繰り返す経営陣とは信頼関係を築くことはできないと判断した。これがTOB価格を引き上げなかった理由だ」と説明した。

ブラザーは3月、ローランドDGの経営陣の同意を得ないままTOBを提案していた。ローランドDGは米タイヨウと組んでMBOによる株式の非公開化に向けて動いていた。当初はブラザーの買い付け価格がMBOの買い付け価格を上回っていた。

風向きが変わったのはローランドDGによるMBO価格の引き上げと、ブラザーに買収された場合のディスシナジー(マイナス効果)についての発表だった。ローランドDGは産業用プリンターの主要部品の供給元がブラザーと競合関係にあり、ブラザー傘下に入ると供給元との取引関係の悪化や、品質・競争力の低下が懸念されると主張した。

ローランドDGの試算では、2026年12月期に営業利益ベースで50億円の減益要因が生じる可能性があるという。

ブラザーの次なる成長の一手に注目が集まる。新たなM&A(合併・買収)を模索するのか、対策が問われる。

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