総務省が自治体向けに出した通知。会計年度任用職員の勤務時間の設定に注意を促している
◆1220団体で「時短パート」を確認
非正規は週の勤務時間が38時間45分(1日当たり7時間45分)以上だとフルタイムに区分され、未満だとパートタイムになる。フルタイムのみが、地方自治法などの規定に基づいて退職金が支給される。 総務省が「会計年度任用職員」と呼ばれる非正規の状況を昨年調べたところ、1日の勤務時間が約15分短いためにフルタイムにならない職員が、全体の8.8%の5万8154人いることが分かった。全国の自治体や一部事務組合2907団体のうち、42%の1220団体でこうした「時短パート」の存在を確認した。 会計年度任用職員制度が導入される前の2016年4月、非正規地方公務員のフルタイムの割合は31.5%だったが、導入後の23年4月には20%程度に減少。自治体が非正規の「パート化」を進めたことがうかがえる。 同省公務員課は取材に「フルタイム勤務とすべき標準的な業務の量がある職について、パートとして位置付けること自体を目的として、勤務時間をフルタイムよりわずかに短く設定することは適切ではない」とコメント。同じ内容の通知を自治体向けに出している。◆自治体の言い分は「事実と言えず」
1万円札(資料写真)
同省はこうしたパートがいる理由を自治体に選択形式で聞いており、「業務内容に応じて勤務時間を積み上げた結果」が63.2%を占めた。労働組合、自治労の林鉄兵総合労働局長は自治体の言い分について「保育所でも勤務時間を短くされているなどの現場からの報告もあり、事実とは言えない」との見方を示す。別の労組関係者は「財政難が理由だろう」と話した。 事務職員や保育士、給食調理員ら83人の時短パートがいる埼玉県内の自治体は取材に「勤務時間を積み上げた結果」と説明。171人いる東京都内の自治体は「施設の運営時間や窓口の開設時間などを考慮した」とした。退職金を払いたくない意図があるかを問うと、いずれも否定した。 しかし非正規公務員に詳しい立教大の上林陽治特任教授は「パート化が進んでいる状況をみると、退職金の支払いを逃れるために自治体が恣意的に勤務時間を短くしている可能性が高い。フルタイムにして国が退職金の予算措置をすべきだ」と強調。「非正規の正規化も併せて進めなければ、公共サービスは維持できなくなる」と指摘する。 ◇ ◇◆「仕事の内容は変わらないのに…」
会計年度任用職員はフルタイムとパートタイムで処遇に差を付ける制度設計に、2020年4月の導入前から懸念の声があった。「フルタイムを短時間に切り替えていく危険が生まれる可能性がある」。共産党の梅村早江子衆院議員(当時)は、制度導入を議論した17年の衆院総務委員会でそう指摘していた。 兵庫県内の自治体で事務補助を担う50代女性は、30年近く1日7時間45分のフルタイムで働いてきたが、20年4月から7時間に減らされ、退職金を受給できなくなった。「人事の説明は『職の整理をする』だけだった。それなのに仕事内容の調査もしていない。退職金を払いたくないのだと思った」と振り返る」と振り返る。 女性は「仕事の内容は全く変わらないのに勤務時間を減らされ、時間が足りない」と現場の実態を明かした上で「勤務時間がわずかに違うだけで退職金が出ないのは明らかな差別だと思う。制度をつくった国に対して怒りがある」と語気を強めた。(渥美龍太)会計年度任用職員制度 あいまいだった非正規地方公務員の採用根拠を明確にすることなどを目的に、2020年4月に導入された制度。対象者は23年4月時点で約66万人で、女性が多くを占める。任用の形はフルタイムとパートタイムに分けられ、任期は年度ごとに区切られる。パートにはボーナスが支払われ、フルタイムは退職金なども支払いの対象になる。
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