住友重機械工業は25日、藤田医科大学などと次世代の放射線治療技術を共同開発すると発表した。がん粒子線治療技術の一つ「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」に関する技術で、従来よりがん細胞を攻撃する能力が高い新規薬剤も同時に開発する。膵臓(すいぞう)がんなど、難治性がんの治療法開発につなげる。
BNCTはがん細胞がホウ素を取り込む性質を利用し、ホウ素と中性子の核反応でがん細胞を破壊する。陽子線や重粒子線といった従来の放射線治療と違い、1回の照射で治療が完了する。世界中で開発が進むが、装置の開発技術や臨床応用の実績で日本が世界をリードしている。国内ではすでに一部のがん治療で保険適用されている。
このほど住友重工や藤田医科大、アトランセンファーマ(大阪市)などで次世代BNCTの研究開発推進のための覚書を締結した。今後、愛知県にある藤田医科大学のキャンパスに中性子を発生させるためのサイクロトロンと呼ばれる加速器などが入った建屋を建設する。28年6月ごろの稼働を目指す。
住友重工は従来より出力の高い中性子線を生み出すサイクロトロンを開発する。アトランセンファーマはBNCTに欠かせないホウ素の効果を飛躍的に高める薬剤の開発に成功しており、藤田医科大と共同で次世代BNCTを使い臨床現場での有効性を確かめる。
藤田医科大の運営法人、藤田学園の星長清隆理事長は「BNCTは日本が世界に先行する素晴らしい技術だ。膵臓がんをはじめとした難治性がんを治療できる次世代BNCTを早期に実用化したい」と話した。
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