記者会見に臨む大林組の蓮輪賢治社長兼CEO㊧と次期社長の佐藤俊美副社長㊨(23日、東京都港区)

大林組は23日、佐藤俊美副社長(64)が2025年4月1日付で社長兼最高経営責任者(CEO)に昇格する人事を発表した。佐藤氏は経営企画や財務など事務系出身で、長らく技術畑からトップを輩出した同社では異例の抜てきだ。26年度を最終年度とする中期経営計画を新体制で更新し、中核の建設分野を守りながら非建設領域の成長を図る。

社長交代は18年3月以来、7年ぶり。蓮輪賢治社長兼CEO(71)は代表権のない副会長に就く。大林剛郎会長(70)は続投する。

蓮輪氏は23日の記者会見で、18年の就任後に直面した新型コロナウイルス禍やウクライナ紛争を振り返り「この2〜3年で適切な交代時期を見極めてきた」と説明した。24年には業績回復を実現したことや、資本政策の見直しによる株高を受けて「資本効率を意識した経営に社内外からの一定の評価を得た」と判断。交代に踏み切った。

新社長の佐藤氏は文系出身で事務畑を歩いてきた。創業家を除けば同社では技術畑以外の社長や文系社長は初めて。蓮輪氏は「当社は建設業を中核としているが、経営と技術的な見識は全く別だ」と語る。佐藤氏を「全体を俯瞰(ふかん)しながらマネジメントできる人間だ」と評価する。

佐藤氏は中核の国内建設事業について「リーディングカンパニーの一社として市場を堅持する」とコメント。労働力不足に対処しながら安全や品質を確保し、「大林組の技術力や総合力を生かして生産性を高める」との方針を示した。

加えて、国内建設以外の事業で同等以上の業績を生み出すことを目指した中計の方向性を実現すべく「事業領域を広げていく」と語った。建設業界では工事請負のビジネスモデルへの依存解消が課題となっている。受注量に業績が左右されるためだ。大林組もグループ営業利益の多くを建設工事が占める。

事務畑を歩んだ佐藤氏は北米でのM&A(合併・買収)や財務のほか、経営企画、新規事業などを経験してきた。大林組の各事業部門について「人材が配置されており、経営が一定程度成熟している」と評価。自らは経営基盤の強化や更なる成長を促す役割を自負する。

蓮輪氏は18年に社長に就任。脱炭素を追い風に市場拡大を見込む木造建築分野では22年度に製材大手のサイプレス・スナダヤ(愛媛県西条市)を連結子会社化。23年度には北米で水道プラント工事会社を買収するなど市場開拓に力を注いだ。

佐藤 俊美氏(さとう・としみ)1985年早大政経卒、大林組入社。2018年取締役、23年副社長、24年代表取締役。神奈川県出身。

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