時間貸し駐車場を運営するパーク24は、カーシェアリング事業を新たな収益の柱に育てている。16日に発表した2024年10月期連結決算では純利益が過去最高だった。アプリで素早く予約できる手軽さでレジャー需要などを取り込み、足元の会員数は300万人と直近6年で3倍に増やした。若者の「車離れ」への柔軟な対応が業績拡大をけん引している。

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パーク24の24年10月期連結純利益は前の期比6%増の186億円と伸び、過去最高益を更新した。カーシェア事業が中心となるモビリティ事業が堅調で、営業利益は前の期比38%増の174億円で営業利益全体の4割超となる。

若者のカーシェア需要発掘

パーク24がカーシェア事業を展開したのは09年、マツダレンタカーの買収がきっかけだ。当初は50台ほどだった車両台数を順次拡充してきた。全国展開する駐車場を「ステーション」としてカーシェア車両を設置。車の所有にこだわらない層に向けたサービスを開発して共同利用の需要を発掘した。

21年にカーシェアを長時間利用する場合の料金をレンタカーの料金水準に値下げした。22年にはスマートフォンなどのアプリ経由で最短15分から利用できる「スグ乗り入会」を始めた。

都内在住の男性(23)は日帰りのレジャーや帰省で月に3回ほどカーシェアを利用する。ステーションは男性の自宅から徒歩5分圏内に4つあり、「少し離れたステーションを探せば大抵は借りられる」と話す。

値下げや利便性の向上によって20代以下の会員が増えた。24年4月末時点では20代以下の比率が会員数の32%を占め、最多となった。新型コロナウイルス禍で感染リスクの少ない車移動が選好された追い風も吹き、20年ごろから20代以下が他の年代の比率を超え始めた。

10月、会員数は300万人を突破した。ステーションは全国で約2万拠点、車両台数は5万台を超える。競合となる「三井のカーシェアーズ」の拠点数が23 年 12 月末時点で約 4250カ所。「オリックスカーシェア」が24年9月時点で約1610カ所であることを勘案すると、タイムズカーの強みが分かる。

パーク24子会社でカーシェアを手掛けるタイムズモビリティの大塩剛司取締役は一段の拡充を目指し、「数年後をめどに車両台数10万台を目指す」と強気だ。

矢野経済研究所(東京・中野)は30年のカーシェア市場の規模が22年比で2.5倍の1562億円に成長すると試算する。大塩氏は「若年層が車に触れる機会を増やせば駐車場の利用にもつながる」と期待する。

車両台数の増強は会員数の急増への対策でもある。需要増に応えるには車両不足の懸念を払拭する必要がある。パーク24は会員の属性や乗車時間、高速利用の有無などのデータを生かしてステーションごとの利用状況を分析。車両が足りないエリアを軸に車両やステーションの数を調整している。

加えて、法人の会員を増やして平日の稼働率を高める。社用車の維持コストを削減するためカーシェアを活用する企業が増えているという。出張先での利便性を高めるべく、新幹線の停車駅の8割超にステーションを配置するなど、法人利用を促進する。

駐車場を使ってもらうには「車が動いている状態」を生み出す必要がある。パーク24は祖業の駐車場事業とカーシェア事業の両輪で更なる成長を目指す。

(伊藤陽萌)

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