半導体の国際展示会「セミコン・ジャパン」が11〜13日、東京ビッグサイト(東京・江東)で開かれました。先端半導体の量産を目指すラピダスやメモリー大手のキオクシアのトップなどがイベントに登壇し、日本の半導体産業の再興策について議論しました。人工知能(AI)を軸に高度化する半導体産業の技術革新に向け、国内外の製造装置や素材のメーカーが集結しました。
開幕前に半導体ニュース相次ぐ
11日の開幕前に半導体のニュースが相次ぎました。ラピダスと連携するAI半導体設計の米新興テンストレントは、国内で先端半導体の設計受託事業を始めることが分かりました。日本貿易振興機構(ジェトロ)は米ニューヨーク州で最先端の半導体研究施設を運営するニューヨーク・クリエイツとの提携を発表しました。
ラピダス
- ・ラピダス・IBM、2ナノ半導体を性能通りに動かす技術開発
- ・ジェフ・ベゾス氏出資のAI半導体、日本で設計受託事業
- ・米IBM、光でデータセンターのデータ通信 AI学習5倍速
- 日米連携
- ・ジェトロ、米半導体研究機関と提携 企業の共同研究促進
- ・TOPPAN、日米半導体連合に参画 次世代の基板開発
- 先端半導体
- ・大日本印刷、1ナノ台の半導体部材開発 AIの性能向上
- パワー半導体
- ・ローム、GaNパワー半導体をTSMCに生産委託 EV部品
- ・独インフィニオンCEO「汎用半導体、中国での生産拡大」
11日開幕 ラピダスやインテル、「ムーアの先」にらみ連携訴え
11日にセミコン・ジャパンが開幕しました。初日はラピダスや米インテルの幹部らが講演などに登壇し、複数の半導体チップを組み合わせる「後工程」が技術革新の鍵を握ると語った。回路線幅を微細化する技術の難度が高まるなか、「ムーアの法則」の先をにらんだ業種や地域を越えた企業間連携が進みそうです。
- ・半導体見本市「セミコン・ジャパン」開幕 1100社・団体参加
- ・半導体再興、鍵握る「ムーアの先」 素材・組み立てに脚光
甘利前議員「TSMC依存はリスク」
11日の開幕イベントにはNTTの澤田純会長やラピダスの東哲郎会長、デンソーの加藤良文最高技術責任者(CTO)らが登壇しました。甘利明・前衆院議員(半導体戦略推進議員連盟名誉会長)は「先端半導体の生産を台湾積体電路製造(TSMC)1社が担うことが世界最大のリスクだ」と語りました。
- ・半導体展示会が開幕 甘利前議員「TSMC依存はリスク」
- ・ラピダス東会長、2ナノ半導体試作「3月に装置そろう」
- ・先端半導体開発、デンソー幹部「メーカー横断組織で早く」
- ・武藤経産相、AIや半導体「複数年にわたり大規模支援」
アナリスト討論「半導体市場、中国が最大リスク」
12日はアナリストらによるパネルディスカッションが開かれました。参加した証券アナリスト4人全員が、中国向け需要の動向が最大のリスクになるとの見方を示しました。このほか、SEMIの幹部が2030年までに半導体業界で150万人の新規労働者が追加で必要になるとの見通しを示した。
- ・25年の半導体市場、中国が最大リスクに アナリスト予測
キオクシア社長「新型メモリー開発」ラピダス専務「AI搬送システム導入」
最終日となる13日は半導体大手の首脳が相次ぎ登壇しました。半導体メモリー大手のキオクシアホールディングス(旧東芝メモリ)の早坂伸夫社長が登壇し、「現行のNAND型フラッシュに加えて、新しいメモリーを開発したい思いがある」と語りました。NAND専業による市況変動リスクを抑えたい狙いがあります。
ラピダスの清水敦男専務は「北海道工場は人工知能(AI)を駆使し、(半導体部材を)縦横無尽に運ぶ全く新しい搬送システムを導入する」と話しました。東京エレクトロンの河合利樹社長は「社会のデジタル化や脱炭素化に向けて、半導体の果たす役割は大きい」と述べました。
- ・キオクシア早坂社長「NAND以外のメモリー開発」
- ・東エレク社長、技術革新で「デジタル化、脱炭素に貢献」
- ・ラピダス専務「北海道工場、AIで新たな搬送システム」
- ・米IBM幹部「ラピダスの半導体、消費電力75%少なく」
TSMC熊本工場「24年内に量産開始」
会期中には台湾積体電路製造(TSMC)の幹部が登壇し、多くの業界関係者が集まりました。熊本工場を運営する子会社、JASM(熊本県菊陽町)の堀田祐一社長は第1工場について「2024年中の量産を間近に控えている」と、従来の計画通りに進んでいると強調しました。
次世代技術の開発を担うTSMCジャパン3DIC研究開発センター(茨城県つくば市)の江本裕センター長は「AI半導体メーカーが爆速の開発を求めている」と話し、人工知能(AI)半導体向けの素材について「サプライヤーに発注してから量産までの期間を1年程度にする」と述べました。
- ・TSMCジャパン「AI半導体素材を1年で爆速開発」
- ・TSMCの熊本第1工場「24年内に量産開始」 子会社社長
ラピダス東会長「設備投資の半分を民間資金で」
セミコン・ジャパンの開催に合わせて、各社のトップが日本経済新聞の取材に応じました。ラピダスの東会長は量産に向けた資金調達について「銀行融資や民間株主から増資で、設備投資負担の半分程度を賄う必要がある」と述べました。早期の官依存からの脱却をめざす考えを示しました。
富士フイルムの岩崎哲也取締役は韓国に半導体製造に使う材料の工場新棟を建設する計画を明らかにしました。韓国ではSKハイニックスとサムスン電子が生成AI(人工知能)の駆動に使う「広帯域メモリー(HBM)」の開発を競っており、半導体材料の需要拡大を見込みます。
- ・ラピダス東会長「設備投資の半分、民間の投融資で」
- ・富士フイルム、韓国に半導体材料の新工場棟 AI需要開拓
- ・AI半導体新興「GPUより効率5倍」開発 通信インフラ向け
世界の半導体人材は150万人不足、育成もテーマに
セミコン・ジャパンでは人材育成もテーマになりました。半導体の国際団体SEMIのシャリ・リス・バイスプレジデントは2030年までに半導体業界で150万人の新規労働者が追加で必要になるとの見通しを示しました。業界の人材の高齢化が進むなか、女性を含めた若手の育成が急務になると強調しました。
- ・SEMI幹部「2030年、世界の半導体人材150万人不足」
- ・米マイクロンなどの半導体人材育成、参加者2000人突破
卓球ロボットが声かけ
出展各社は最新技術や製品を披露しました。オムロンは卓球ロボットの最新モデルを公開しました。生成AI(人工知能)を搭載し、自動的にプレーヤーの動きに合わせた声かけをし、打球の速度も調節します。
半導体製造装置大手、米ラムリサーチは半導体工場の保守・点検向けに人間と一緒に働く「協働ロボット」を販売すると発表しました。ティム・アーチャー最高経営責任者(CEO)は「協働ロボットで半導体製造の自動化に貢献できる」と語りました。
- ・オムロン、選手と対話する卓球ロボット セミコンで展示
- ・ラムリサーチCEO「協働ロボで半導体製造を自動化」
- ・アルプスアルパイン、モーターの回転数測る半導体
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