私たちはグローバル市場で存在感を持つ物流企業になろうと努力を続けています。世界は人口が増えモノの動きも増大していますが、戦争や感染症といった複雑な状況にも対応できるよう、物流のレベルも高めていく必要があります。
とくに注力している地域はインドです。今や中国を抜いて人口は世界最大で、着実に経済成長しています。物流需要としては、生活関連物資のほか、自動車、半導体、ヘルスケア・医療といった産業の振興も当社の成長戦略にぴったり合います。東欧も欧州における産業の生産拠点として成長が見込まれます。1月にオーストリアのカーゴ・パートナー社を買収したのは、東欧の拠点が充実しているためです。
新型コロナウイルス禍は、物流がいかに不可欠かということが再認識される機会になったと思います。便が減った旅客機の代わりに、貨物専用のチャーター便を活用するなど、様々な代替手段をとりながら、物流を止めない工夫をしました。国内ではコロナワクチンを、低温で安定した品質で届けるという難しい仕事にも取り組みました。
国内外で人手不足の課題や、脱炭素という環境問題への対応を迫られています。新たな技術の活用が求められますが、併せて知恵を絞ることも大切です。トラックだけに頼らず他の輸送手段を組み合わせたり、複数の顧客企業の荷物を混載したりといった努力の余地も多くあります。
当社が重点産業と位置づける半導体産業では、地政学リスクが高まる中、生産の国内回帰の流れがあります。北海道や九州に物流拠点を整備し、顧客企業のサプライチェーン(供給網)の最適化に向けて長期で取り組んでいきます。消費者に近いところでは、ライフスタイル分野にも力を入れており、欧州のファッションブランド品の海外輸出や、日本の小売業の海外事業に伴う物流なども手がけています。
それぞれのお客様に応じたサービスを提供するため「お客様第一」の姿勢が定着していることが当社の強みです。お客様のかゆいところに手が届く対応をしないと信頼は得られません。供給網の端から端までのサービスを実現するため、当社の能力で足りないところがあれば、他の物流業者とも連携します。従業員の質の高さも誇れる点だと思います。グローバル市場を開拓していく際にこれらを生かします。
物流の仕事をしていて社員が喜びを感じるのは、チームで協力して困難を乗り越えた末に、お客様に感謝されたときでしょう。突き詰めれば、物流会社の使命は、世界をつなぐということだと思います。人と人、企業と企業、社会と社会を、どんなときも、しっかりとつなぐことができるかどうか。
築いたネットワークを通じて、私が世界に届けたいものは「安心」です。お店に行けば欲しいものがある。企業は安心して工場を動かして生産ができる――。単にモノを右から左に運ぶだけでなく、一緒に安心が運ばれていくのです。読者の皆さんにお願いがあります。皆さんが世界に届けたいものは何か、考えてみていただけますか。
NIPPON EXPRESS ホールディングス・堀切智社長の課題に対するアイデアを募集します。投稿はこちら(https://esf.nikkei.co.jp/future20241202/)から。編集委員から
傘下に日本通運などをもつNIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)は2022年、持ち株会社体制への移行に伴い誕生しました。
世界では生活の隅々までデジタル化が進んでいますが、モノを動かす物流はどこまでいってもリアルの仕事であり、現状では多くの人手が関わっています。日本ではトラック運転手の時間外労働が規制強化された「物流の2024年問題」が焦点ですが、労働力が希少資源になっているのは日本に限らない現象で、物流企業は対応を求められます。堀切智社長はデジタルトランスフォーメーション(DX)などで効率化を追求するだけでなく、新技術と人の力をうまく融合させたいと述べました。
海外でも強みとなるのは、使命感をもった働き手による良質な物流サービスです。M&A(合併・買収)によって海外事業を広げる方針を掲げており、買収先の人的資源を維持・育成できるかも問われます。(編集委員 鈴木哲也)
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今回の課題は「あなたが世界に届けたいものは何ですか?」です。420字程度にまとめた皆さんからの投稿を募集します。締め切りは10日(火)正午です。優れたアイデアをトップが選んで、23日(月)付の未来面や日経電子版の未来面サイト(https://www.nikkei.com/business/future/)で紹介します。投稿は日経電子版で受け付けます。電子版トップページ→ビジネス→未来面とたどり、今回の課題を選んでご応募ください。
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