縦9センチ、横11センチのラベルには写真のほかアルファベットで好きな文字を入力できる

サントリー食品インターナショナル(サントリーBF)は自分で撮った思い出の写真をその場で缶飲料のラベルにできるサービスを始めた。新型コロナウイルス禍が落ち着き、例年より人流が多くなると見込まれるなか、テーマパークやイベント会場などでの導入を目指す。

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「自分で撮った一番かわいい写真をグッズにできる!」。東京・秋葉原にある犬カフェRioを訪れた女性は興奮気味に話す。「お店のホームページでお気に入りのワンちゃんを見つけて来ました。ペキニーズのイケメンワンちゃんがかわいくて……」

サントリーBFが始めた「Snap Drink(スナップ・ドリンク)」は消費者が撮影した写真をその場で缶ラベルにできるサービスだ。専用サイトに好きな写真を登録し、アルファベットで文字を入力。ラベルは縦9センチメートル、横11センチで、1枚12秒程度で印刷される。施設側が缶に貼って提供する。

お気に入りの一枚をすぐに缶ラベルにできる(東京都千代田区の犬カフェRio秋葉原店)

ラベルははがしやすいようにシールが二重になっている。缶を飲み終わったらラベルをはがし、手帳などに貼って収集できる。ラベルを半分に折ると名刺サイズになり、文字や写真が隠れないように工夫したという。

導入する施設や店舗はサントリーBFからプリンターを借り、缶飲料を1本約140円で仕入れる。消費者には1缶500〜800円で販売する想定で、販売価格の20%をシステム使用料としてサントリーBFに支払う仕組みだ。飲料はレモンスカッシュとウーロン茶の2種類あり、1ケース(24本)から注文できる。賞味期限は1年だ。

これまでも新幹線限定などのラベル缶商品はあったが、それなりの販売数量が売れなければ作るのは難しかった。今回は消費者の写真で商品が完成するため、在庫を抱えるリスクも減る。イノベーション開発事業部の高橋大樹氏は「自分だけの思い出や瞬間が形にできるところに新しい可能性を感じた」と話す。

導入を決めた冒頭の犬カフェRio店長の地下貴子さんは「スタッフのオペレーションコストを最小限に、なおかつお客様は自分でカスタムできる体験の楽しさもある。お客様の半分以上はインバウンド(訪日外国人)。日本人よりも圧倒的に多く写真を撮るのでかなりささると思っている」という。

スナップ・ドリンクは2023年にサービスを始めたコンテンツに合わせて缶ラベルを自分好みにカスタマイズできる「TAG LIVE LABEL」(タグ・ライブ・ラベル)の第2弾。第1弾はプロバスケットボールチームの選手や映画のキャラクターといった知的財産(IP)を持つ事業者を対象にしたサービスで、23年末までに80社に導入した。

高橋氏は「何か見たり聞いたり行ったりした時に買う記念品は、クリアファイルなど似たような商品になりがちだった。飲料は飲むとなくなるので消え物のようなハードルの低さやトライアルのしやすさがあった」という。

第1弾と第2弾の合計で24年は新たに300施設への導入を目指す。導入先企業によっては海外での展開も見据える。缶飲料は薄利多売の象徴だったが、思い出の写真を貼るという体験価値で上書きすることで高収益モデルに生まれ変わろうとしている。

(八木悠介)

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