静岡県伊豆市内のホテル近くの大仁神社で「推し活」グッズをおはらいして清めるサービスも盛り込んだ

森トラストが運営する伊豆マリオットホテル修善寺(静岡県伊豆市)は、好きなアイドルら「推し」の結婚などによる喪失感を癒やす宿泊企画を打ち出す。推しグッズを清める神事などを盛り込み新たな客層をつかむ。同社は体験や学習を取り入れたホテルの新たな魅力づくりに知恵を絞る。推しロス旅もその試金石となる。

大好きだったアイドルの引退や声優の結婚――。時間もお金もささげた「推し」が突然いなくなる喪失感は本人以外には計り知れない。2021年にユーキャン新語・流行語大賞にファンの熱心な応援活動を指す「推し活」がノミネートされ、推し活や推しロスのための休暇を設ける企業も現れた。

伊豆マリオットホテル修善寺ではこんな動きを背景に、推しロスからの心身の癒やしをうたった「ヒーリング・ジャーニー」というプランを12月から2025年2月末まで提供する。客室は露天風呂を備え、1泊2日の夕・朝食付きで料金は1人利用が4万2987円から。2人1室が1人3万2097円から。1日3組限定とする。

コンサートやイベントに駆けつけるファン向けの推し活応援プランを用意するホテルは最近多いが、ほとんどが都心。そこで伊豆マリオットでは「夏の企画会議で自然と温泉を生かした推しロス旅に照準を定めた」と釜中徹マネージャーは話す。

調査会社を通じて推し活経験者400人にアンケートを取ると、そのうち4割が推しロス経験者で、さらにその6割が癒やしを求めた旅行の希望があると分かった。

新プランでは推しを巡る情報から離れるSNS(交流サイト)断ちのため、南京錠付きのスマートフォン入れを客室に備え、泣ける絵本なども並べる。若年層を中心に高まる「デジタル・デトックス」の要素を取り入れたという。

推しロスで困るのが集めたグッズの扱い。「そのまま捨てるのは忍びないという声が多く寄せられた」(森トラスト担当者)。そこでホテルで預かって近くの大仁神社でおはらいして清めてから処分する。「推しロスでの神事は初めてだが大切な物を手放すときにおはらいをしてほしいという需要はある」(神主の狩野博男氏)

森トラストは米マリオット・インターナショナルなどとも提携して全国でホテルを展開する。訪日外国人(インバウンド)の増加もあって宿泊客数は伸びているが、宿泊先での特別な体験を望む声もある。そこで24年から本部と各ホテルが付加価値のある宿泊プランを練り始め、推しロス旅のアイデアも生まれた。

マリオットホテル修善寺も宿泊客の3割を外国人が占める。国内客は首都圏からが多いが、近隣の熱海や箱根に客足は流れがちだ。同ホテルならではの過ごし方を訴えて新規客を呼び込み、リピーターとして「修善寺推し」に育てる。

(佐伯太朗)

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