日用品業界で廃棄予定の容器を回収し新品の容器に再生する水平リサイクル「ボトルtoボトル」が本格化してきた。プラスチック容器製造のツバキスタイル(東京・中央)が主導する取り組みには約10社が参加する。同社は生産段階で発生する未使用の廃棄容器を水平リサイクルするプロジェクトも始め、数社が参加している。

ツバキスタイルは容器大手のグラセル(大阪府茨木市)との共同出資でBEAUTYCLE(ビューティクル、佐賀県神埼市)を2021年に設立。23年5月には40億円以上を投資し、神埼市にビューティクル佐賀工場を竣工。回収した容器のリサイクルから新しいボトルに再生するまでを1つの工場内でできるようにした。

現在はシャボン玉石けん(北九州市)や「ボタニスト」ブランドのシャンプーなどを展開するI-ne(アイエヌイー)など約10社がビューティクルの取り組む容器の循環型リサイクルシステムに参画する。参画企業は直営店舗などに使用済み容器の回収ボックスを設置し、ビューティクルは運送会社などを通じてそれらを回収。佐賀工場までトラックや飛行機で運んで再資源化し、再びプラスチック容器に再生している。

ビューティクル佐賀工場。フレークを再樹脂化するライン

病院やホテルなど、プラスチック容器の廃棄が多い施設との連携も進めている。北九州市立八幡病院とは使い終わったシャボン玉石けんのハンドソープボトルを回収しているほか、東京・新宿の「東急歌舞伎町タワー」内のホテル「BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel」からは使用後のバスアメニティボトルを回収してリサイクルしている。

一方で化粧品やトイレタリー用品は飲料に比べ容器がゴミとして出るまでに時間がかかるため、消費者から一度に回収できる量は多くない。空容器は全て資源として買い取っており、遠隔地からの集荷には輸送コストもかかる。日用品のプラ容器は容器の色や使うプラスチックの種類ごとにリサイクルする必要があり、工場の稼働率維持のためにもある程度の量を回収する必要がある。

そこで、24年5月からは生産段階で発生する廃棄ボトルを有償で引き取り、再資源化して容器に再成型する「生産ロスZEROプロジェクト」を開始した。ツバキスタイルやグラセルの工場や、相手先のブランド名で製品を製造するOEM工場で余分に発注して使用しなかったボトルや不良品などの中身が充塡される前の容器を回収する。

回収容器を洗浄してフレーク状に粉砕(写真左)し、高温で溶かしてペレット化(写真中央)する。右は成型した新しい容器

現在はアートネイチャーとI-neなど数社が参画している。I-neからは総量20トンの廃棄対象在庫を回収し、再資源化する。メーカーにとっては、これまで費用をかけて廃棄していた容器を有価で引き取ってもらえるうえ、それを新しいボトルに使うことで、石油由来のバージンプラスチックの使用量を減らし二酸化炭素(CO2)の削減にもつながる。

日用品業界では花王とライオンが23年から連携して詰め替えパックの水平リサイクルに取り組んでいる。

ツバキスタイルの杉山大祐社長(ビューティクル代表)は水平リサイクルの取り組みをきっかけに「このスキームがあるならとボトル製造を任せてもらえるケースが増えた。売り上げは23年度の約50億円から24年度は62億円ぐらいに伸びそうだ」と言う。

水平リサイクルの課題としては回収や再資源化のコストがかさみ、それのみの取り組みでは採算が取れないことが挙げられる。回収できる容器の量が少なく「工場のリサイクラーの稼働率は半分以下。ボトル製造のシェアを上げることで収益性を確保している状態」と杉山社長も認める。参画企業を増やすために営業活動をしており、現在検討段階にある企業は20社程度ある。(荒木玲)

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