記者会見した関根正裕社長(15日、東京都中央区)

商工組合中央金庫(商工中金)は15日、完全民営化に向けて政府が保有する全株式を上限に自己株式を取得する方針を発表した。最大で発行済み株式の46.69%を取得し、取得額は1580億円となる。

財務省が実施する予定の2次入札に参加するにあたって、すべての政府保有株を取得する意向があることを明らかにし、予定通りに完全民営化を実現する方針を示した。

2025年1月21日に開催する臨時株主総会で決議する予定だ。財務省は7月の入札で中小企業や関連団体を対象に政府保有株の一括売却を計画していたが、落札は13%にとどまった。財務省は、1回目の入札の売却手続きが完了し次第、売れ残った8億8044万株全てを対象に商工中金の参加を認めたうえで再度一般競争入札を受け付ける計画だ。

現状では1回目の入札の売却手続きが途上で残余株式数が未確定であることや、2次入札には株主資格のある中小企業などが参加する可能性もあることから、株数や総額は現時点で許容可能な最大値とした。関根正裕社長は15日の記者会見で、「実際の入札時には適当な価格や財務上支障のない範囲での取得を考慮して自己株を取得する」と説明した。

今回取得上限とした1580億円は、商工中金が蓄積した利益剰余金を活用する。一方で、「これを全部使うというわけではない。自己資本比率や他の株主への影響なども踏まえながら入札価格を決定していく。適正な株価で入札に参加する」と強調した。24年3月末時点で13.03%の連結自己資本比率は、仮に対象となる全株を取得した場合に一時的に落ち込むが3年程度での回復を見込む。

政府保有株の売却は改正商工中金法の公布から2年以内とされ、2025年6月15日が期限とされている。関根氏は今回の方針について「民営化の趣旨を踏まえて業務範囲の拡大や経営の自由度などを確保するためには入札に参加して残余株式のすべてを買い取ることが必要」と説明した。

自社株買い後については、「自己株を持ち続けて株主資格のある方に売却することも検討できる。消却することは考えていない」と述べた。自己株式を取得して完全民営化することについては「利益剰余金を活用して取得するため問題ない」とした。

15日発表した2024年4〜9月期の連結決算は、純利益が前年同期比67%増の140億円だった。円金利の上昇で資金利益が増加したほか、シンジケートローンやストラクチャードファイナンス(仕組み金融)に関連する収益が増加した。本業のもうけを示す単体の実質業務純益は286億円と8%増加した。

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