25年3月期は資源価格下落で15%減益を見込む(写真は三井物産が権益を持つオーストラリアの鉄鉱石鉱山)

三井物産が1日発表した2024年3月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前の期比6%減の1兆636億円だった。資源価格の下落に見舞われたものの、資産売却益などを積み上げ2年連続で1兆円を超えた。株主還元を拡充し増配と2000億円を上限とする自社株買いを決めた。7月1日を効力発生日として1株を2株に分割し投資家層を広げる。

24年3月期の純利益は会社計画(16%減の9500億円)や市場予想の平均(QUICKコンセンサス、14%減の9693億円)を超えた。

事業別の純利益をみると、製鉄に使う原料炭の価格が下がり金属資源事業は24%減の3351億円だった。エネルギー事業は原油やガスの価格下落の影響を受け9%減の2817億円だった。一方、為替変動が610億円の増益要因になったほか、エネルギー事業で資産除去債務に関連した一過性の利益が発生した。

25年3月期の純利益は前期比15%減の9000億円を見込む。事前の市場予想とほぼ同額だった。鉄鉱石や原油などの資源価格が前期より下がると想定した。為替は前期実績とほぼ同じ1ドル=145円、1豪ドル=95円の前提をおいた。同日発表したインドネシアの石炭火力「パイトン発電事業」の売却益(税引き後で約440億円)は予想に織り込み済みという。

2期連続の減益を見込むものの、利益水準そのものは高く、株主還元を拡充する。25年3月期の年間配当は7月の株式分割前のベースで1株200円(前期は170円)とする。あわせて2000億円を上限とする自社株取得枠を設定した。9月20日までに市場で買い付ける。取得した自社株は全株を消却する。

営業キャッシュフロー(CF)から運転資本の増減などを除いた「基礎営業CF」に対する総還元性向は約50%と前期の38%から高まる。26年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画では、3年累計の総還元性向の目標を37%程度としていたが、40%超になる見通しだ。

堀健一社長は1日の決算会見でキャッシュの配分方針について「成長投資の候補が相当にある。一方で大型の資産リサイクル(売却)があるかもしれない。手元にいろいろな選択肢を残しており、(投資と還元の)適切なバランスを達成していきたい」と語った。

正午の決算発表を受け、三井物産株は午後の取引開始直後に前日終値比3%高の7843円と上場来高値を付けた。その後は売りに押され、終値は1%安の7558円だった。野村証券の成田康浩氏は「増配や自社株買いが好感されいったんは買われたが、2月以降に株価上昇が進んでいたこともあり利益確定の売りが出たようだ」とみていた。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。